Ubuntu Weekly Topics

2010年5月21日号 10.10のリリース日・“Windicator”のモックアップ・2.6.35カーネル・FCM#36・UWN# 193

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10.10の開発見通し

「次」のバージョンのUbuntu,⁠Maverick Meerkat⁠のリリースに向けて,これまでのリリースよりもさらに急ピッチで開発作業が立ち上げられています。

主な理由は,リリース日が2010年10月10日(日曜日, ただしEU/US時間)になったためです(⁠10.10.10」なので二進数で42になります,という小ネタの正体がこれです)⁠通常,Ubuntuのリリースは月末最後の木曜日でしたから,いつものリリースタイミングからすると約2週間半早いタイミングでのリリースとなる予定です。

“Windicator”のモックアップ

10.10の目玉機能となる予定の⁠Windicator⁠注1モックアップが登場しています。⁠Windicator⁠は,10.04でウインドウの左上に移動させられた「閉じる・最小化・最大化」ボタンに代わって右上を占めることになる,⁠新しい通知・操作のためのアイコン」です。いわゆる『タスクバーの通知領域』に表示されるアイコンと役割は似ていますが,アプリケーションのウインドウごとに異なったアイコンが表示され,アプリケーションごとに特化した操作が可能になる,という特徴を持った,新しいアイコン表示です(ウインドウごとに表示されるインジケータなので⁠Windicator⁠です)⁠

モックアップとして示された例は,次のようなものです。

  • Rhythmboxには「楽曲の共有」「ボリューム」アイコン
  • Software Centerには「インターネット接続」「バスケットに入っているアイテムの数」
  • geditでは「ファイルが保存されているかどうか」

現在のところ,まだきちんとした議論やブラッシュアップを経ていないため,やや疑問な部分も残っていますが,10.10のリリースまでにはある程度の形になり,11.04・11.10などで洗練され,UbuntuのGUIの構成要素として欠かせないものになるはずです。

なお,このモックアップを見たMark Shuttleworthのコメントには,⁠could you do the mockups of windows without menu's? It would be great to see how they look in that case, since we expect to have the global menu in place for UNE 10.10⁠(ウインドウにメニュー表示がないバージョンのモックアップ作ってくれない? これはすごく良い仕事だと思うけど,Ubuntu Netbook Edition 10.10ではグローバルメニューを使おうとしているんだ)などという謎なものも含まれており,新しいNetbook EditionのGUIデザインも,なにかこれまでとは違うものになりそうです注2)⁠

注1)
“Window⁠⁠Indicator⁠の合成語です。そこまではいいのですが,⁠“Windicator⁠って,どう日本語に訳せばいいので……」という小さな問題が発生しています。⁠ウィンジケータ」とするか,NotifyOSDと同じように「そのまま」使うことになるのか,半年後の10.10のリリースをお楽しみに。
注2)
先週紹介した「Unity」テーマはUbuntu Light用ですので,Netbook Edition用にはまた別の(Desktopで使われるものとも,Ubuntu Lightで使われるものとも別の)デザインが適用されるはずです。問題の「global menu」については,同名で呼ばれるこのようなプロジェクトが存在しています。

Kernel 2.6.35とLucid向けBackport

Maverickでは,ターゲットとなるカーネルが2.6.35になることが確定し,コンフィグのレビューが開始されています。最大の目玉は,実験的とはいえBtrfsのサポートが追加されることでしょう注3)⁠きわめて楽観的に進めばデフォルトファイルシステムとして利用される可能性もありますが,現実的には10.10時点ではかなり厳しいと思われます(現状:GRUB2がbtrfsを読めないのでブートできない&デスクトップで多くのユーザーが使ったことがない)⁠

もっとも,ファイルシステムは「誰か」が実験状態で利用を進めないと安定しないものではあるので,これによりLinux業界が長らく待望している,⁠16TBを越えられ,負荷に強く,NFSやmdやLVMと併用できるファイルシステム」注4が世に出てくる可能性があります。この採用テストが行われる関係から,Btrfsのテストが行われている時点のMaverickのAlphaテストは,いつもよりさらに強烈な展開が予測されます。

また,Maverickの2.6.35採用と同じく,Lucidに2.6.35をバックポートする計画もほぼ受け入れられています。これにより,10.04にも「linux-maverick-*」といった名前で2.6.35が用意され,必要に応じてMaverick同等のカーネルが利用できるようになる予定です(既存のLucid環境を,そのまま2.6.32で使い続けることもできます)⁠これにより,Lucid環境のドライバサポートが大きく改善する可能性があります。

注3)
BtrFSはSun(現Oracle)が開発したZFSに近い使い勝手(not内部構造)を持つ,ext4よりさらに新しい次世代ファイルシステムです。詳細はbtrfs Wikiを参照してください。
注4)
LinuxのファイルシステムはHDD容量の増大に対して崖っぷちに追い詰められつつあり,ext3は拡張オプションを利用しても16TBを越えることができず,ext4は負荷に弱く,XFSはNFSやmd・LVMと併用できない上に複雑すぎる,という,それぞれが課題を抱えたまま壁にぶち当たっている状態です。ReiserFSとJFS,という単語が脳裏をよぎることもありますが,よぎっただけですぐに消えていきます。

Software Design 2010年6月号

Ubuntu Japanese Teamでは,Software Design 2010年6月号に,⁠使い始めるなら今! Ubuntu 10.04 LTS徹底攻略』と題した特集を執筆しました。主な内容はUbuntu 10.04の新機能と使いこなし・Upstart・UEC・ARM向けビルド方法です。書店でお見かけの際は是非手に取って(ついでにレジまで持って行って)いただければ幸いです。

Full Circle Magazine #36

Full Circle Magazineの36号がリリースされました。主な内容は次の通りです(なお,Topics上では掲載の都合上,2週間遅れの紹介になっています。公開そのものは4月末です)⁠

  • ターミナル操作のすすめ。端末をカラフルに染め上げる方法を学びます。
  • Pythonを用いたプログラミング入門,第11回。XMLの使い方を学びます。
  • GIMP入門,第三回。フォトレタッチの基本を学びます。今回のFull Circle Magazineの表紙の作り方の概要も掲載されています。
  • Googleの使いこなし方。いわゆる「ググり方」のHow Toです(site:を使って検索対象を縛ったりするtipsが中心です)⁠
  • などなど。

Ubuntu Weekly Newsletter #193

Ubuntu Weekly Newsletter #193がリリースされています。

今週のセキュリティアップデート

usn-938-1:KDENetworkのセキュリティアップデート
  • Ubuntu 9.04・9.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2010-1000を修正します。
  • CVE-2010-1000は,KGetが入力された値を正しく検証しないため,不正なパラメータを付与したURLが含まれるメタリンクファイルを開いた際,ディレクトリトラバーサルにより,上位ディレクトリにある任意のファイルの上書きが可能な問題です。結果として,任意のコードの実行につながる可能性があります。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,セッションを再スタート(一般的にはログアウトして再ログイン)してください。
usn-939-1:X.orgのセキュリティアップデート
  • Ubuntu 8.04 LTS・9.04・9.10用のアップデータがリリースされています(10.04はリリース時点で修正済み)⁠CVE-2009-1573, CVE-2010-1166を修正します。
  • CVE-2009-1573は,xvfb-runがマジッククッキーを適切に取り扱わず,本来与えるべきでないユーザーに,任意のローカルセッションへの接続権を与えてしまう問題です。特にマルチユーザーが併用する環境において,他人のデスクトップへの不当な接続が可能となります。
  • CVE-2010-1166は,XAAエクステンションを有効にした環境の場合,すでにXに接続可能なユーザーによってroot特権奪取が可能な問題です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,セッションを再スタート(一般的にはログアウトして再ログイン)してください。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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