10.10の開発
今回も10.10で「開発される予定の」新機能を見ていきましょう。なお,現在はまだ仕様のフリーズすら行われていない開発段階初期のため,将来的に撤回される可能性もあります。
10.10関連の次の動きは,6月17日のFeature Definition Freeze(仕様定義の〆切)・6月24日に行われるDebian Import Freeze(“universe”リポジトリへのDebian sidからの自動取り込み終了)です。スケジュールを確認したい場合,wiki.ubuntu.com上のスケジュール表を確認してください。
アーキテクチャの取捨選択
10.10においては,これまで提供されてきたSPARCとIA64のサポートが終了する見込みです。主な理由は作業者の不足です。新たに作業を行う人が手を挙げない場合,残念ながらSPARCとIA64については,「趣味レベル」で細々と,あるいは完全に終了となる予定です。
もっとも,SPARCについてはオフィシャルな対応は6.06~8.04まで(8.04はServerのみ),IA64についてはもともとオフィシャルな対応はなく,一部の開発者が「趣味として」(注1)開発していたものであるため,予期されていた事態と言えるでしょう。
また,既存のアーキテクチャのうち,x86でも「i686以前のプロセッサへのサポート終了」という判断が行われそうです。
これにより,x86のUbuntuを利用するには最低でもi686対応のCPUが必須となります。ただし,微妙にblueprintの記述が放置気味かつ,Sepcもまだ未完の状態のため,撤回される可能性もあります。すでに一部のパッケージはi686前提でビルドされているものの,もう決まった,といった発言もあるため,現時点では判断が困難です。
ただ,i686以降のプロセッサのみのサポートとなっても,影響を受けるのは,現状ではAMD Geodeプロセッサ(旧Cyrixの流れを汲むGeode GX, Geode LXシリーズ)やSiS550プロセッサなど,組込み向けのニッチなプロセッサのみと考えられます。影響を受けるのは,ごく一部のノートPC・組込みデバイス(例:PC-Engines ALIX)などに限られるでしょう。こうした環境では,Ubuntu 10.04を使い続けることになります。
なおARMについては10.04の時点ですでにARMv7ベースのプロセッサが必須となっているため,10.10では変更はありません(9.04ではARMv5以上,9.10ではARMv6以上に変更されており,もうこれ以上対応アーキテクチャを変更する必要がないため,とも言います(注2))。
- 注1
- 個人宅にIA64マシンを複数台持っているとある開発者が,超人的な努力でメンテナンスしていただけとも言います。
- 注2
- 対応アーキテクチャを更新しようにも,ARMv8はまだ実装されたチップが世に出てきていません。
セキュリティアップデートの通知の改善
Ubuntuを含め,あらゆるOSでは日常的なアップデータの適用が必要です。現在のUbuntuでは,「新しいアップデータが存在する場合,アップデート・マネージャがアップデートしてほしそうに表示される」というモデルとなっています。これは,通知領域でアイコンを用いて通知するモデルに比べると確実にアップデートが適用されるのですが,現時点では「すべてのユーザーが,確実にアップデータを適用する」というレベルには達してしません(注3)。
そこで10.10の開発では,より確実にセキュリティアップデートを適用してもらうための方法が検討されています(注4)。
あわせて,セキュリティアップデートにともなうアドバイザリの充実も検討されています。具体的には,脆弱性のより踏み込んだ評価と,他の機関の発行するアドバイザリとのクロスリファレンス・USNのHTMLの見直しなどです。
- 注3
- 「インストールしたものの,日常的なアップデートは行わず,ある日突然まとめて大量のアップデートをかける」といったユーザーが相当数存在することはがミラーサーバーの統計から見て取れるため(企業などで「検証してから適用」というものを考慮に入れてもなお多い),ミラーサーバーの管理者の一人である筆者は大変心を痛めています。
- 注4
- 検討の具体例。「アップデートマネージャがポップアップ表示されるだけでは不十分なので,何かしらもっと目立つようにする必要はないか?」「セキュリティアップデートは特別扱いして,より目立つ形にできないか?」「そもそも,unattended-upgrades(通知なしで自動的にセキュリティアップデートを適用するためのパッケージ)をデフォルトでインストールするべきでは?」「セキュリティアップデートを適用する場合に限って,sudoのためのパスワード入力を省略するべきでは?」「次の再起動時に自動的にセキュリティアップデートを適用,というオプションを準備するべきでは?」などなど。
Software Centerの強化
Software Centerは,10.10で大幅に強化される予定です。Blueprintには大量のアクションアイテムが登録されており,すでにデザインフェーズには突入しています。
特にユーザーにとって大きな影響があるのは,ヒストリ表示が可能になることでしょう。この表示は,「昨日インストールしたソフトウェア」「○○月△△日にインストールしたソフトウェア」といった形で,インストールした日付に基づいてソフトウェアを整理するものです。これそのものは「どのソフトウェアをいつインストールしたか」といったレベルの情報を提供するものに過ぎませんが,なんらかの不具合が発生している場合,不具合の発生タイミングと照らし合わせることで,「システムを不安定にしたソフトウェア」を追求していく等,トラブルシュートに役立つものになるはずです(注5)。
- 注5
- ただし,おそらく10.10の時点では単に「どのソフトウェアをいつインストールしたか」レベルのものに留まるでしょう。
Ubuntu Weekly Newsletter #196
Ubuntu Weekly Newsletter #196がリリースされています。
その他のニュース
- UDS(Ubuntu Developer Summit)11.04・11.10・12.04の開催日程のドラフト(注意:場所はこれから決まります)。
- Wineを用いてOffice 2007をUbuntu上で動作させる方法。
- Mac4Linテーマのカスタム版を用いて,10.04環境でAqua風デスクトップを実現する方法。
- Netbook Editionをカスタマイズし,より快適なネットブック向け環境を実現する方法。
- Launchpad上で行う翻訳作業時,ショートカットキーが利用できるようになります。現在,ショートカットキーのバインディングに現実的な問題がないか,衝突が起きる場合にはどのような対処を行えばいいのか,といったワークアラウンド手順の構築が行われています。

