Ubuntu Weekly Topics

2011年9月16日号 リリースプロセスの変更案・EnsembleからJujuへ・Ubuntu Fontの等幅版・Ubuntu User Days

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New Release Process 案

Scott James Remnant(Upstartの作者 / 元Canonical社員 / 現Google社員 / Ubuntu Technical Boardの一員)が,⁠Ubuntuのリリース形態を変更し,短いスパンで定期的にリリースする(タイムベースリリースにする)べきではないか」という提案を行っています。タイムベースリリースは現在のFirefoxやChromeなどで採用されているリリースパターンです。

いわく,⁠現在のUbuntuの開発パターンでは,半年のうち13~14週間ほどしか開発に専念できない。これならば短期間にリリースを繰り替える方針に切り替えた方が良いかもしれない」⁠⁠Ubuntu上で動作するソフトウェアのための基盤としては,単純に短期間でリリースを繰り返すことはできないが,工夫すれば解決できるはずだ」などなど。

短いスパンのタイムベースリリースにも現行のリリース方針にもメリットはあり,かつ,Remnantの提供した様々なTipsを適用することで,タイムベースリリースの弱点はかなりの部分が緩和されるため,議論の行方はまだ見えていません。

Ubuntu 11.10の開発

Juju(Ensemble)

Ubuntu 11.10の「Server」部分の目玉,「Ensemble」の名前が「Juju」に変更になりました。Juju⁠西アフリカの魔術⁠を意味する単語で,サイトマスコットのデザインからも黒魔術感が漂ってくるものになっています注1)⁠また,Ensembleを構成する「formula」⁠構成式)「charm」⁠おまじない)という名前に変更されてリリースされる予定です。

また,リリースが近づいたこともあり,Ensembleを用いて簡単にサーバーをセットアップするデモシナリオが準備されています。サンプルでは,CloudFoundryとEmsembleを使って,10分でDrawBridge(ブラウザから利用できるお絵かきアプリケーション)サーバーを仕上げる光景を動画で確認できます。

注1
中身も,⁠コマンドをひとつ叩くだけでサーバーをセットアップする」という黒魔術的なものです。

Ubuntu Font Monospace

Ubuntu 10.04で導入された「Ubuntu」フォントの等幅(Ubuntu Font Monospace)バージョンのベータテストが開始されています。ターミナル向けのフォントを探している方,あるいはUbuntu Fontが好みに合う方にとっては,等幅も含めた統一感のあるフォント環境を構築できるようになるはずです。

ただし,現時点ではあくまでベータテストなので,最終的に調整がかかる可能性もあることに注意してください。

11.10環境でGNOME2/GNOME3

Ubuntu 11.10ではGNOMEに代わってUnityが全面的に利用されるようになりますが,UIの操作性を変えたくない,あるいはGNOME Shellに惚れ込んでいる,といった場合には,GNOME2/GNOME3を使いたい,ということもありえます。11.10のリリース前ですが,11.10環境でGNOME2/GNOME3を使うためのノウハウが構築されつつあります。特に,GNOME2(Ubuntu Classic Desktop)を使うための方法を押さえておくと,⁠以前と同じ操作に戻したい」といった場合に簡単に対応できます。

ログイン時に必要に応じて切り替えて利用することができますので,GNOME Shellのテストがしたい,といった意図でも手軽に利用することができます。

ちなみに,GNOME Shellを試す場合は事前にシャットダウン方法だけは確認しておいた方が安全です。

FTBFSとの戦い

Ubuntuの開発終盤でおなじみの光景注2)⁠FTBFS(Fails To Build From Source; ソースからのビルド失敗)への対処を行うため,Colin Watsonがこれから平日は1日5個ずつ直していくという宣言を行っています。FTBFSの修正はパッケージングやソフトウェアのビルドについての知識を身につけるために最適の教材なので,可能であればいくつか手をつけてみてはいかがでしょうか。また,Colinの対処方法を実際に確認することで,このあたりのスキルを身につけることができるはずです。

注2
FTBFS対応は,過去には「今ビルドできないパッケージは700個,そして開発者は約80人。ひとりが10個直せば勝てる!」⁠意訳)というような力技の対処要請が流れたり,Ubuntuの開発の中でもっとも人海戦術度の高い作業です。

Ubuntu User Days

9/24・9/25の2日間,Ubuntu User Daysというイベントが行われます。

Ubuntu User Daysは,⁠Ubuntuを使い始めた人」向けのオンラインセッションです。Ubuntuのインストール方法・定番ソフトウェアの利用・問題解決の方法など,つまずきやすいところを中心にしたセミナーが行われます注3)⁠まだ自信のない方,あるいは身近に「使い始めた人」がいる方は,参加してみてはいかがでしょうか。なお,過去に行われた同様のUser Daysのログも閲覧できますし,イベント後には今回分のログも公開されますので,時間を合わせることができない方はログを眺めてみるとよいでしょう。

注3
IRC上で行われるため,少なくとも「IRCの利用方法」だけは知らないと参加できないので,参加方法のページを読んでおいてください。IRCにはブラウザ経由で参加できるため,IRCクライアントの操作が分からなくても,Webチャットと同じ操作で参加できます。

UWN#232

Ubuntu Weekly Newsletter #232がリリースされています。

その他のニュース

  • Ubuntu Certificationでテストされる項目のリスト。テスト環境の写真もあります。
  • LightDM + Unity Greeter環境で,背景を変更する方法。
  • UbuntuのSecurity Team担当者(AppArmor担当者でもある)Kees Cookが,Remnantに続いてGoogleに転職し,ChromeOSに関わることになりました。RemnantのUpstart・Kees CookのAppArmor注4と,Ubuntuの特徴的な機能がChrome OSに取り込まれることになるかもしれません。
  • Transmageddonを用いて,動画をさまざまなエンコードで保存する方法。
  • dpkgが「どのように処理されているのか」の図と,メンテナスクリプトの不具合でインストール/アンインストール不能になったときの典型的な対処
  • 以前紹介した,mutt+irssiによる「ターミナルベースの」環境を更にカスタマイズする方法。
  • Ubuntu ServerにMongoDBをインストールする方法
  • PyGIを用いて,Gstreamerアプリケーションを作る方法
  • Lubuntu 11.10で利用される壁紙
  • Unity環境にプラグインとして追加できる,⁠再起動時にブートするOSを変更する」ユーティリティ
  • Windows 7用の,見た目をUnityそっくりにする方法
注4
もっとも,もともとAppArmorはSUSE起源ではあるので,SUSEからUbuntu,さらにそこからChrome OS,という流れです。ただしSUSE本体ではAppArmorは「なかったこと」になりそうな情勢で,かつてのAppArmor担当者は多くがCanonicalに居るので今後どうなるかはとても不透明です。もちろん,現時点ではChrome OSにはAppArmorは搭載されていません。

今週のセキュリティアップデート

usn-1197-4:NSSのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001408.html
  • Ubuntu 11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。DigiNotarから発行された不正な証明書を破棄するためのアップデートです。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,NSSを利用するアプリケーション(ThunderbirdやEvolution)を再起動してください。
usn-1197-5:CA証明書(ca-certificates)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001409.html
  • Ubuntu 11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。DigiNotarから発行された不正な証明書を破棄するためのアップデートです。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,証明書をキャッシュするアプリケーションを再起動してください。特定は困難なため,システムの再起動が確実です。
usn-1200-1:Quasselのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001410.html
  • Ubuntu 11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。LP#845707で報告された問題を修正します。
  • QuasselがIRCクライアントとして振る舞う際,悪意ある細工を施されたCTCPリクエストを受信するとクラッシュする問題がありました。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1201-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001411.html
  • Ubuntu 10.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-1020, CVE-2011-1493, CVE-2011-1770, CVE-2011-2484, CVE-2011-2492を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
usn-1202-1:Linux kernel (OMAP4) のセキュリティアップデート
usn-1203-1:Linux kernel (Marvel DOVE) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001413.html
  • Ubuntu 10.04 LTS用のMarvel DOVE用カーネルのアップデータです。CVE-2010-4076, CVE-2010-4077, CVE-2010-4251, CVE-2010-4805, CVE-2011-1020, CVE-2011-1493, CVE-2011-1577, CVE-2011-2213, CVE-2011-2484, CVE-2011-2492, CVE-2011-2700, CVE-2011-2723, CVE-2011-2918を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準では linux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1204-1:Linux kernel (i.MX51) のセキュリティアップデート
usn-1205-1:Linux kernel (Maverick backport) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001415.html
  • Ubuntu 10.04 LTS用2.6.35(Maverick相当)カーネルのアップデータです。CVE-2011-1020, CVE-2011-1493, CVE-2011-1770, CVE-2011-2484, CVE-2011-2492を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
usn-1206-1:librsvgのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001416.html
  • Ubuntu 11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-3146を修正します。
  • 悪意ある加工の施されたSVGイメージを読み込んだ際,任意のコードの実行が可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,セッションを再スタート(一度ログアウトして再ログイン)してください。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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