Ubuntu Weekly Topics

2011年12月9日号 各種フレーバーへの支援・省電力モード・ALPMの活用・UWN#244・FCM#55

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Preciseの開発

各種「フレーバー」への支援

Ubunutuにはさまざまな「フレーバー」が存在します。KDEを主体にしたKubuntu,XfceベースのXubuntu,LXDEベースのLubutuなどがそれです。こうした「Ubuntuの派生フレーバー」を支援するための条件の 整理行われています。これにより,Lubuntu以外にもフレーバーが追加されていく可能性が出てきました注1)⁠

注1
LubuntuはOneiricフェーズで公式の派生ディストリビューションとして認定されました。

ALPM crowd-sourcing testing

Preciseフェーズで行われる作業の一つに,⁠ノートPCのバッテリ稼働時間強化」⁠≒Windowsが入っている場合と同等もしくはそれ以上の稼働時間の確保)があります。近代的なラップトップPCでは,バッテリ駆動モードとAC電源駆動モードでは各デバイスへの電源供給方針を変更し,バッテリ駆動中はパフォーマンスを多少落としてでも消費電力の少ないモードへ切り替える,といった仕組みで稼働時間を確保しています。これまでのUbuntuでは,ACPI経由でバッテリ駆動・AC電源駆動といった動作ステートを取得し,/usr/lib/pm-utils以下に配置された電力ステートに応じたスクリプトを実行する,という形でこの機能を実現しています。

ところがこのスクリプト群は遠い過去に書かれたものも含まれており,⁠おまじない」レベルのステート遷移も含められているため,実際にベンチマークを取り,Preciseに向けて適切な設定を投入しよう,という作業が行われています。

これにより,省電力に貢献していないどころかむしろ逆ざやになっている(上に,syncタイミングを遅らせることで危険をまねく)readahead・journal-commitの2つのフックスクリプトが判明し,Preciseから削除される予定です

また,この評価において,もう一つ注目されているのがSATAのALPM(Aggressive Link Power Management)機能です。これは,SATAチャネルに「データが流れていない」状態がわずかでも続いた場合,速やかに該当チャネルを省電力モードに落とす,というものです。

この機能は『運が悪い』場合に,データ転送タイミングになっても省電力モードから回復せず,I/Oに失敗してしまう可能性があるため,これまでUbuntuでは有効にされてきていませんでした。そこで,そもそもSATA(AHCI)でALPMを有効にしていいものかどうか,そして,無事にALPMを有効にできるチップセットは何なのか,消費電力面でメリットがあるのはどのような環境なのか,といった命題をつきつめるべく,クラウド注2ベースのテスト要請が行われています。

この試験は最悪のケースではI/O失敗(≒データロスト)が発生するため,完全に「人柱募集」のレベルです。それでも試してみたい,あるいは危険なものであれば危険なものほどよい,という方は,kernel/PowerManagementALPMで手順を確認してみてください。

ALPMは本来は「あくまでも省電力モード」なので,I/O要求がもたらされた時点でSATAリンクを回復させ,正常にデータをやりとりできる状態に復帰させることが期待されています。……しかし,チップセットやストレージデバイスの特性やエラッタ・タイミング問題(≒相性)やカーネルのバグなどの要因で,想定通りに動作しない可能性があります。単に回復までの時間が長いだけであれば性能面での劣化で済みますが,⁠100msのあいだデータが流れなかった→省電力モードに入る→復帰命令を受け取る→転送可能な状態になるまでの再ネゴシエーション他が120msかかる→100msのあいだデータが流れなかったとみなされ省電力モードにまた落ちる→⁠以下この流れでループ)⁠一度省電力モードに入ると二度と帰ってこない」⁠回復はしたつもりになるがデータが化ける」⁠回復後は転送性能が出なくなる」等,いろいろな形で問題が起きる可能性があります。

特にデータ化けを起こすケースでは,ファイルシステムに負の影響を与える可能性があります。問題が起きるのがファイルの「中身」のI/O中であればそれほど被害は大きくありませんが ⁠それでもファイルが無言で破壊されてしまいます)⁠場合によってはファイルシステムメタデータの更新中等,致命的なタイミングでのI/O失敗が生じる可能性があります。

よって,このテストに参加する場合,テスト環境に含まれるデータが「まるごと」なくなっても大丈夫な環境でテストするべきです注3)⁠また,一部のSSDにはALPMを有効にすると確実に問題が起きる環境もあるため,テストは相応に危険です。

首尾よくテストが成功し,そして「ALPMが省電力上意味があり,かつ,有効にしても問題のない環境」のプロファイリングが完了すると,適合する環境では0.5~1.5wの電力削減が可能になるはずです注4)⁠

注2
Cloud(雲)ではなくCrowd(群集)⁠すなわち人海戦術による大規模テストを意味します。
注3
データ化けに備えて,Ubuntu OneやDropboxの同期も解除しておきましょう。最悪の場合,化けたデータでオンラインストレージ上のデータも上書きされてしまう可能性があります。
注4
小さい数字に見えますが,一般的なノートPCのアイドル時消費電力はワーストでも30~40w,低いものでは10w程度のため,3~10%近い削減になります。

Unity関連のモックアップ

Mark Shuttleworthのこの発言やUDS-Pでの,⁠Ubuntuはスマートフォンやタブレット・テレビに進出する』という方向性を踏まえて注5)⁠⁠Unityをスマートフォンやテレビに適用するとこうなる」というモックアップが作成されています。

注5
さりげなくubuntu-phone team MLも作られています。

Full Circle Magazine #55

Ubuntuを中心にした月刊Webマガジン,Full Circle Magazineの#55がリリースされています。主な内容は次の通りです。

  • コマンド操作入門:vimのマクロや検索・置換機能について
  • Pythonによるプログラミング入門:DBを利用したプログラミング
  • HowTo:LibreOffice Calcでの関数の使い方
  • HowTo:バックアップ戦術の立て方/その3
  • HowTo:Audacityによる波形編集入門
  • HowTo:廉価なNAS/Bittorrent/Printer Serverになる「WLX-652」の紹介
  • ご家庭でのVoIP入門
  • コントロールパネル各種の比較
  • などなど

UWN#244

Ubuntu Weekly Newsletter #244がリリースされました。

その他のニュース

  • 一部のマシンで「ケーブルをつないだが外部モニタが出ない」問題を引き起こしていた問題へのパッチがOneiricの次のカーネルに含まれそうです。
  • ソフトウェアセンターのTop 10アプリケーション
  • カラーリング表示機能を持ったcat,その名もdogについて。
  • インターネットに接続していないマシンでも利用できる簡易版ソフトウェアセンター,Portable Software Center(PSC)利用する方法。公式なソフトウェアセンターから派生したものではありませんが,ネットワーク接続できないマシンで「お気に入り」のソフトウェアを利用したい場合に便利でしょう。
  • ファイルシステムとして構成される一風変わったIRCクライアント⁠ii⁠と,⁠ii⁠とセットで利用するポップアップソフトウェア,⁠pcw⁠(popup chat windows)ついて
  • Windows 7とUbuntu 11.10をデュアルブートにする方法。
  • remastersysでカスタムDVDを作成する方法。
  • Ubuntu 11.10で使うsshfs
  • 各種サーバーの設定ファイルをユニットテストするアイデア。

今週のセキュリティアップデート

usn-1286-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
usn-1287-1:Linux (OMAP4) のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-December/001506.html
  • Ubuntu 11.10/OMAP4用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4081を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
usn-1288-1:vsftpdのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-December/001507.html
  • Ubuntu 11.10・11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-2189への対策です。
  • CVE-2011-2189は,Linuxカーネルがネットワーク名前空間を分割(新規生成)する際,名前空間の生成速度に比べて削除の速度が遅いため,生成を繰り返すことでメモリの過大消費を発生させることができる問題です。vsftpdはこの機能を用いて各セッションを隔離しており,継続的にFTPセッションを作成することでこの問題を悪用される可能性があります。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:CVE-2011-2189は本質的にはカーネル側の問題ですが,vsftp側でCVE-2011-2189に未対処のおそれがあるカーネルを検知し,問題が起こりうる場合は名前空間の分割を利用しないように挙動を変更することで対策を行います。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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