Ubuntu Weekly Topics

2012年6月22日号 12.04用3.5カーネル・pkgme・ARMサーバーのベンチマーク・うぶんちゅ! 単行本化・UWN#270

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Quantalの開発

12.10(Quantal)の開発には大きな変化はなく,今週は非常におとなしい一週間でした。

Quantal kernel for Precise

おとなしい一週間ではありましたが,カーネル周りの開発は順調に進んでおり,Quantalのカーネルは3.5rc3ベースに更新されています。これとともに,Precise用のQuantalカーネル注1のリリース準備が行われており,LTS Backportの評価が可能になっています。

注1
UbuntuのLTSリリースでは,⁠次のLTSがリリースされるまでの間にリリースされた,より新しいリリース」のカーネルをバックポートし,LTSのユーザランドを新しいカーネルで利用できるようにする,⁠LTS Backport」が行われています。たとえば12.04 LTSであれば,12.10(Q)⁠13.04(R)⁠13.10(S)のカーネルが利用できる予定です。

pkgme

多くのソフトウェアがあることは,デスクトップ環境にとって大きな魅力です。Ubuntuではソフトウェア開発者向けのガイドページを用意したり,ソフトウェアセンター経由での配布をサポートしたりと,いろいろな形で支援を行なっています。

また,実際のソフトウェア開発を簡単に行えるように,Quicklyのような開発のためのツールキットも準備されています。

こうした開発者のためのツールに,pkgmeと呼ばれるツールが追加されました(2011年には開発されていたものの,これまで色々な事情でそのまま放置されていました)⁠

これは名前の通り,⁠ソフトウェアを簡単にパッケージにする」ことに特価したユーティリティです。pkgmeを使うことで,Debianパッケージに関する知識がなくても自分の作成したソフトウェアを簡単にパッケージングできます。テンプレートに必要な情報を記入するだけで,あとはpkgmeが自動的にパッケージを作成します。いかにも魔法のように見えますが,種は単純で,要するに「熟練したパッケージャが定型的にやっていること」をソフトウェア構成に応じて実行するための枠組みをpkgmeが提供し,定型的に作業する,というものです。

なお,Ubuntuで動作するソフトウェアを書いた場合,Ubuntu App Showdown Contestに応募してみてもいいかもしれません。

ARMサーバーの性能

CalxedaのARM SoC(EnergyCore)上で走らせたUbuntuを用いて,Apacheの性能ベンチマークを取った結果が公表されています

EnergyCoreベースのシステムが毎秒5,500リクエスト程度を処理し,Xeon E3-1240と大差ない(2~3割は劣る)性能を発揮していることが分かります。これまでの典型的なARM SoCではI/O性能が不足していたところですが,サーバー向けにI/Oを拡張したEnergyCoreの本領発揮です。

一般的なWebサーバーは各種I/O帯域への要求が主で,プロセッサの処理性能に依存しにくく,ARMやAtom,あるいはAMDのZacate/Ontarioなどといった高効率プロセッサにとって非常に有利な戦場だと言われてきていましたが,それを実証した形です。

注目すべきは電力効率で,Xeon E3システムの消費電力が100W超えに至る一方,EnergyCore側は5W強で3割減程度の性能と,消費電力はほぼ1/20で性能は0.7掛と,ワットパフォーマンスで大きな差をつけています。高密度収容が基本となるデータセンターなどでは,非常に大きなメリットと言えるでしょう。

ただ,これは少々不公平な比較です。そもそもEnergyCore側はメモリ4GB,Xeon側はメモリ16GBと,スペック部分が揃っていません。また,Xeon側はXeon E3-1220Lなどの低TDPモデルを利用することでシステム消費電力を40W前後まで抑えこむことができますし,そうなると差は大きく縮まります。そもそもIntelのラインナップにはARM対抗となる5W級TDPのサーバー向けAtom(“Centerton⁠等)があるので,比較すべきはそちら,という話でもあります。

……とはいえ,ARM搭載サーバーの「既存のIAサーバーでは比較にならないワットパフォーマンスと,十分に実用的な絶対性能」という切り口の有効性は十分に示されています。今後の展開が楽しみなところです。

うぶんちゅ! 単行本化

Ubuntuをテーマにした史上初の(そして史上最後かもしれない)コミック企画,⁠うぶんちゅ!』が単行本になりました。内容についてはUbuntu Magazine Japanや作者の瀬尾先生のWebサイトで公開済みの内容に加え,いろいろな描きおろしを含んだものとなっています。

うぶんちゅ! 単行本は,電撃コミックスEXから2012年6月27日発売です。

UWN#270

Ubuntu Weekly Newsletter #270がリリースされています。

その他のニュース

  • アシストの社内PCをUbuntuに移行した事例。
  • インドのDellのリテールストアにおいて,Ubuntu搭載PCが大々的に売られている事例。
  • UbuntuでQRコードを生成できるQreatorの紹介。
  • UnityのLensを使っていろいろな機能を実現する例。
  • LaunchpadのSecurity属性の若干の変更について
  • UDS-Qの動画が公開されています。
  • Xubuntuのデフォルトテーマが変更になります。Aquaライクの良くあるデザインにも見えつつ,Xfceの配色で多用されるグレーと水色をうまくあしらった,非常に現代的なテーマとなっています。Qの開発フェーズでブラッシュアップされ,リリース時点ではさらに美しいものになりそうです。
  • MK802の各種Ubuntuイメージ
  • すでにインストール済みのUbuntu環境において,/homeを分離する手順。
  • (あまり望ましくはないものの)Apportによるバグレポートウインドウの表示を抑制する方法。
  • 12.04環境で,Ubuntuを簡易無線LANルーターとして使う方法。
  • Unityが気に入らない人のための,いろいろなデスクトップを並べた記事。
  • Ubuntu環境にIntel製SSD(SSD 520)を投入したことで得られた性能向上をまとめたblog記事。全体としてどれぐらい快適になるのか,また,IOスケジューラごとにどれぐらいの性能差があるのか,そして,どうやってベンチマークを取るのがいいのか,といったことが分かります。SSDを導入しようとしている方は目を通してみると良さそうです。
  • UbuntuをActive Directory環境に組み込む際に役に立つ,PowerBroker Identify Services Enterprise(PBIS Enterprise)の東陽テクニカによるセミナーが7月20日に東京日本橋(三越前)で開催されます。企業でのUbuntu導入を検討されている方は参加を検討してはいかがでしょうか。

今週のセキュリティアップデート

usn-1473-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001719.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2121, CVE-2012-2133, CVE-2012-2313, CVE-2012-2319, CVE-2012-2383, CVE-2012-2384を修正します。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1474-1:Linux kernel(OMAP4)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001720.html
  • Ubuntu 12.04 LTSのOMAP4用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2121, CVE-2012-2133, CVE-2012-2313, CVE-2012-2319, CVE-2012-2383, CVE-2012-2384を修正します。* Ubuntu 12.04 LTSのOMAP4用のアップデータがリリースされています。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1475-1:APTのアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001721.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。LP#1013128を修正します。
  • aptがGPG KeyをIDベースで処理する際,subkeyの重複を適切に判定していませんでした。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1463-2:Unity 2Dのアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001722.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04用のアップデータがリリースされています。Firefox 13系への更新に伴い,Unity 2DからFirefoxを起動した際に発生する問題を修正します。
  • Unity2D環境でFirefoxを起動した際,ポップアップメニューが正常に機能していませんでした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,Unity2Dセッションを再スタートして(一度ログアウトしてログインしなおして)ください。
usn-1476-1:Linux kernel(OMAP4)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001723.html
  • Ubuntu 11.10のOMAP4用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4131, CVE-2012-2121, CVE-2012-2133, CVE-2012-2313, CVE-2012-2319, CVE-2012-2383, CVE-2012-2384を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-1477-1:APTのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001724.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-0954を修正します。
  • usn-1475-1による修正が不完全で,不正な改ざんを加えたパッケージがインストールされる余地がありました。適切な改善方法を検討する時間を稼ぐため,一時的にnet-updateを無効にしています。更新されたパッケージがあらためて配布される予定です。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1478-1:Libavのセキュリティアップデート
usn-1479-1:FFmpegのセキュリティアップデート
usn-1480-1:Raptorのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-June/001727.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-0037を修正します。
  • RDFを含むXMLファイルを開いた際,ローカルにあるファイルの書き換えや任意のコードの実行が可能な問題がありました。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,Raptorを利用しているプログラム(LibreOfficeやOpenOffice.org)を再起動してください。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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