Ubuntu Weekly Topics

2012年11月2日号 Raringの開発開始・13.04 for Nexus 7・Ubuntu 11.04のEOL・FCM#66・UWN#289

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Raringの開発開始

Ubuntuの新バージョン,⁠Raring Ringtail⁠(13.04)の開発がスタートしました。現在はまだディスカッションや先行機能の投入のフェーズで,12.10に比べて大きな変化はありません。

ちょうどこの数日がR世代のUDS(Ubuntu Developer Summit)にあたり,Ubuntuの開発者がコペンハーゲンで議論を繰り広げています。現段階でBlueprintsをながめると,⁠Ubuntu as a gaming platform: ○○」Ubuntu SDK for app developersなどといった文字列が散見され,Steamなどのゲーム方面のサポートが活発化していることが伺えます。

また,UDSの決定事項には「R世代ではアルファリリースは行わず,daily buildで代替する」という大きな変更が含まれています。また,R世代からパッケージのアップロード時のデフォルト動作が変更になり,強制的に-proposedから始まる仕様になりました。-proposedでテストを行ったのちに本体のアーカイブに含められるようになるため,⁠あきらかに起動した瞬間にクラッシュする状態にもかかわらず,なぜかアーカイブに含まれているどころかそのままリリースされてしまった」といった悲しい問題を避けることができるようにはるはずです。

Ubuntuの開発は,おおむね次のようなプロセスで行われます。

  • Mark Shuttleworthが,新バージョンのコードネームとおおまかな方針をアナウンスする。
  • おおまかな方針に基づき,開発者がUDSに向けて,達成したい機能をBlueprintsにまとめる。
  • Blueprintsをもとに開発者がUDSで議論を行い,実際に行うべき作業を決定する。
  • UDSの決定事項をもとに開発を行い,アルファやベータをリリースしながら品質を高めていく(4ヶ月ぐらい)⁠
  • 開発がおおむね終了したあたりに,Canonicalがひそかに開発していた機能が投入されて物議を醸す。
  • 開発した機能のQAとリリースエンジニアリングを行なってリリース(1ヶ月ぐらい)⁠

前述の通り,現在はまだ「行うべき作業の決定」の段階です。

動作プラットフォームとしてのNexus 7

Ubuntu関連の『hack』の一種として,ARMタブレットにUbuntuを導入して動かすことがしばしばあります。最近のARMデバイスはメモリも1~2GB程度と非常に大きく,Ubuntuを「それなり」に動作させることができ,単なるお遊びではなく,実用的なデバイスとして扱うこともできます。

こうした「タブレット上でUbuntuを動かす」アプローチの,Nexus 7版が登場しました。

ただし,今回のものはいつもの「有志による」対応とは少々毛色が異なり,Jono Bacon(Ubuntu/CanonicalのCommunity Manager)「A core goal for Ubuntu 13.04 is to get Ubuntu running on a Nexus 7 tablet.」と発言しており,Canonicalのバックアップがありそうなことです。移植するのはあくまで「Ubuntuのデスクトップ」であって,タブレットデバイス用のUbuntuを開発するわけではない,という前提はあるものの,Nexus 7とBluetoothキーボードを軽量なUbuntuノートとして持ち歩く,といった未来もありえそうです。

なお,速攻でWikiページも作成されています。ちなみに筆者が9月25日に注文したNexus 7はまだ届いていませんので,試すことはできていません。

Ubuntu 11.04のEOL

Ubuntuの新バージョンリリース前後のお約束である,⁠旧バージョンのEOL」の時期がやってきました。Ubuntu 11.04 “Natty Narwhal⁠が10月28日にEOLを迎えています。

今後,11.04にはセキュリティアップデートを含めた一切の修正は適用されず,また,近い将来にアーカイブサーバーからold-releases.ubuntu.comへ移動され,設定を変更しなければパッケージを利用できなくなります。現在も11.04を利用されている方は,11.10へのアップグレードか,12.04・12.10などの導入を行なってください。

Full Circle Magazine #66

Ubuntu専門のWebマガジン,Full Circle Magazineの66号がリリースされています。

UWN#289

Ubuntu Weekly Newsletter #289がリリースされています。

その他のニュース

  • 「130Wのサーバークラスタ」と題された,Calxeda EnergyCoreを利用した2Uサーバー。24システムを2Uに集約し,最大で96GBメモリが搭載可能なシステムです。各所のデザインが製品一歩手前の状態になりつつあるので,おそらく近い時期にリリースされると見られます。なお,130Wはアイドル時で,負荷をかけると200W程度は消費するようです。
  • 先日紹介した$69のi.MX61ボード,Wandbordの実機の写真が出てきています。見た目でわかるレベルのジャンパは飛んでいないので,⁠これが稼働品だと仮定するなら」リリースも近そうです注1)⁠
  • Cadanceの⁠Virtual System Platform⁠Ubuntu 12.10が動作したというプレスリリース。Virtual System Platformは『仮想的な』ARMハードウェアや周辺環境を構成するソフトウェアです。いわゆるふつうの「仮想化」とは異なり,ハードウェアのプロトタイピングと並行してソフトウェアを開発するためのプラットフォームです。
  • アーカイブやPPAにアップロードを行うときに利用するツール,dputの次世代版(dput-ng)を開発している話。⁠アップロードしたらTwitterに流す」などという機能をプラグインで搭載することもでき,多くのユーザーには関係ありませんが,PPAを利用している方にとっては非常に興味深いツールになりそうです。
注1
初回生産品は「とりあえず形だけ」というレベルで,通電してもマトモに動かないのが普通です。初回ロットにさまざまな物理的パッチ(ジャンパやら抵抗やらチップのすげかえやら)を施して,⁠かろうじて動く品」を作っていき,量産手法に反映していきます。もっとも,そもそもの配線にミスがあると量産品であってもジャンパを飛ばすことになり,CPU/SoC周辺に線がのたくっている,というのは良くある話です。

今週のセキュリティアップデート

usn-1616-1:Python 3.1のセキュリティアップデート
usn-1617-1:WebKitのセキュリティアップデート
usn-1618-1:Eximのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-October/001879.html
  • Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-5671を修正します。
  • EximのDKIMの処理にヒープバッファオーバーフローが発生する可能性があり,悪用により任意のコードの実行が可能です。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1619-1:OpenJDKのセキュリティアップデート
usn-1620-1:Firefoxのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-October/001881.html
  • Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-4194, CVE-2012-4195, CVE-2012-4196を修正します。
  • Firefox 16.0.2に相当するアップデータです。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,Firefoxを再起動してください。
usn-1620-2:Thunderbirdのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-October/001883.html
  • Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-4194, CVE-2012-4195, CVE-2012-4196を修正します。
  • Thunderbird 16.0.2に相当するアップデータです。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,Thunderbirdを再起動してください。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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