Ubuntu Weekly Topics

2013年9月6日号 vUDS 13.08(2)・14.04 LTSのリリーススケジュール・13.10のBeta1・CuBox-i・UWN#332

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vUDS 13.08(2)

Ubuntuの開発会議,vUDS 13.08が8月末に行われました。vUDSで話し合われた話題のうち,ClientFoundationに関連する項目のうち,筆者の興味を引いた項目を見ていきましょう。

なお,UDSで議題にあがる項目は,⁠こういうことを実現しようと思う」というレベルのものから「こんなアイデアがあるんだけどどうかな?」⁠とりあえずこれ作っておいた,アイデア求む」といったものまで様々なレベルのものが混じっており,議題になった項目がそのまま将来のUbuntuで実現されるとは限りません。野心的な項目については「実際に調査してみたらまるで実用にはならなそうだ」といった結論になることもあるため,現状ではあくまで「開発プラン」といったものだと認識しておくべきです。

  • client-s-32v64-bit:Ubuntu Serverはすでに64bitが推奨になっているが,クライアント版のUbuntu(Ubuntu Desktop)の推奨バージョンを64bitに切り替えるタイミングと,今後の32bit版のスケジュールを検討しよう。ARMの64bit化はまだ先の話なので,x86/x64/x32の検討をしておこう。ひとまずの現状として,Multiarchが健全に機能しているためx64への移行に致命的な障害はない。メモリフットプリントを肥大させずに64bit空間を扱えるようにする方法としてx32があるが,まだ実績がないのでx86・x64から選択することになる。状況的には,そろそろwww.ubuntu.comでデフォルトダウンロードとして選択できるようにしても良さそうだ。x86版のフェードアウト時期はいろいろと難しい問題で,⁠13.10で推奨をx64へ切り替え,14.04を最後のx86サポートとして14.10はx86版なし」というものから,⁠2038年問題で否応なく切り替えざるを得ないタイミング,つまり32.04 LTS(=2037年4月まで)までサポートし続ける」というプランまでいろいろとありえるため,これは今後検討していこう。
  • client-1308-mir-roadmap:Mirのロードマップを検討しよう。Ubuntuを採用するOEM・ODMからのフィードバックや,Mir/XMirの完成度も含めて,十分な検討を行おう。
  • client-1308-push-notifications:Ubuntuにプッシュ配信機能を受け取る機能を持たせよう。プロトタイプAPIは2013年12月頃までに,そして本格的なものを状況を見て実現していこう。
  • client-1308-rolling-libreoffice:LibreOfficeのリリースとUbuntuのリリースの間で,どのように整合性を取っていくか検討しよう。古いUbuntuのリリースではPPAを使わないと新しいLibreOfficeが使えないというのはあまり良い状態ではない。しかしLibreOfficeを更新すると失われる機能もあり,Ubuntuのアップデートポリシーとしては気楽にバージョンアップを繰り返すモデルにすることもまた難しいものがある。特にこれは企業ユースで顕著だ。Firefoxのように頻繁なバージョンアップに追従できるようにすることも含めて,対応を検討しよう。
  • foundations-1308-os-updates:Ubuntu Touch環境で,リリース後にどうやってシステムをアップデートしていくか,方法を含めて考えよう。リカバリイメージそのものを更新する,あるいは通常通りupdate-manager経由で更新する,別のシステムからphablet-toolsを経由してアップデートする,起動時に自分自身を更新するなど,さまざまなアプローチを可能にしておかなくてはならない。
  • foundations-1308-revocable-memory:スマートフォンのようなメモリが少なめの環境において,⁠適切な方法でメモリを回収する」方策を検討しよう。OOM Killerのような野蛮なやりかたでは必要なプロセスまで殺してしまうおそれがあるし,スマートフォンの使われ方にもまったくそぐわない。Androidで使われているような,⁠リボーカブルな」形でメモリを確保しておき,システムの空きメモリが少なくなったときにその分を回収できるようなモデルに持ち込むべきだ。とりあえずプロトタイプを実装してみよう。
  • foundations-s-touch-download-service:Ubuntu Touchで用いるOSイメージやアプリケーションについて,一種の「ダウンロードセンター」を準備しよう。
  • foundations-1308-power-measurement:システムが消費する電力を計測できるようにして,可能そうであればDaily buildを自動テストできる状態に持ち込もう。
  • foundations-irst-supportIntel Rapid Start Technology(スリープとハイバネーションの組み合わせ技術で,スリープ並の復帰時間とハイバネーション並の消費電力を両立させるもの。Linuxでは3.11カーネルからサポート)をUbuntu上でも利用できるようにしよう。単にRST(Rapid Start Technology)が動作できるようにするだけでなく,インストール時にRST用のパーティションを確保したり,あるいは暗号化と共存して動作できるようにしなければならない。もちろんGUIも必要になる。

14.04 LTSのスケジュール

13.10のリリースまで一ヶ月強を残していますが,14.04 LTSのリリーススケジュールがUDSで議論された末にwiki.ubuntu.com上に掲載されています(一瞬だけ,⁠リリースまでの時間が短すぎるからギリギリまで延ばそう」というアイデアが上がり,5月の頭にリリースされる=14.05 LTSになりかけたりもしましたが,無事に4月中のリリースにしようという結論に落ち着いています)⁠

特に重要なマイルストーンは次の通りです。予定通りに作業が進めば,2014年4月17日に14.04 LTSがリリースされることになります。

  • 11月21日:Feature Definition Freeze
  • 12月19日:Alpha 1
  • 1月23日:Alpha 2
  • 2月6日:Debian Import Freeze
  • 2月20日:Feature Freeze
  • 2月27日:Beta 1
  • 3月13日:User Interface Freeze
  • 4月3日:Kernel Freeze
  • 4月10日:RC
  • 4月17日:Release

ただし,14.04 LTSはまだコードネームも確定しておらず,⁠S+1」と呼ばれる状態です。WikiのURL上は慣習に基づき,⁠TSeries」とされていますが,⁠T」で始まるコードネームになるかどうか,という部分も現状では確定ではありません。ここ最近のUbuntuでは(黎明期と同じく)スケジュールが柔軟に変更される傾向が強いので,13.10リリースすらまだの現状で立てられたスケジュールは変動する可能性があります。リリース日までが前後する可能性は高くないものの,作業上のマイルストーン,特にFeature Definition Freeze/Feature Freeze/Debian Import Freeze注1あたりは変動する可能性があります。

注1
Feature Definition Freezeは「仕様アイデアの締切日」⁠この日までに仕様案を提案し,正式に受け入れられていないアイデアは次リリース送りになる)⁠Feature Freezeは「仕様通りに実装した機能の締切日」⁠この日以降は新機能の投入が禁止され,ブラッシュアップに専念することが求められる)⁠Debian Import FreezeはDebian sidからUbuntuのuniverseへ自動的にコピー(sync)される処理の締切日を指します。いずれも,Ubuntuの開発作業にかかわらなければあまり知る必要はありません。

各種Flavourの13.10 Beta1

13.10のリリースに向けて,Ubuntu GNOME・Kubuntu・XubuntuLubuntuUbuntu StudioなどのFlavourのBeta 1がリリースされ,テストが推奨されるフェーズに入っています。これらを利用している方は今のうちにテストに協力しておくと良いでしょう。たいていのソフトウェアと同じく,⁠開発中は大きな変更を加えることができるが,一度リリースされてしまうとそう簡単には直せない」というのはUbuntuも同様です。

なお,Ubuntu本体(Unityをデスクトップ環境とするUbuntu Desktopと,Ubuntu Server)はAlphaやBetaをリリースせず,daily buildを用いてリリースエンジニアリングを行うため,Beta 1としてのリリースは行われません。

CuBox-i

小型のARM Box,CuBoxの後継モデルとして,CuBox-iシリーズがリリースされました。これまでとはARM SoCを変更し,Freescale i.MX6シリーズ(WandboardやUtiliteなどと同じもの)を搭載したモデルとなります。

CuBoxは,ARM PCの中でも,特に小型(かつケース付)であることが売りのシリーズです。

i.MX6シリーズは,チップレベルではLinaroベースのカーネルやイメージと組み合わせることでUbuntuを簡単に動作させることができるため,CuBox-iでもUbuntuが動作することが期待されます。CuBox-iのWebサイトに表示されるロゴの中にはUbuntu・Xubuntuのロゴが混じっているので,まず動作すると思って良いでしょう。

ただし,現状では今のところu-bootとカーネル,Androidだけ(あとBuildrootとYocto)⁠と言っているため,まだ動作するイメージは準備されていないと見るべきでしょう。とはいえカーネルさえ動いてしまえばユーザーランドを載せるのは難しくないので,⁠買ったはいいがUbuntuが動かなくて途方にくれる」といった展開はなさそうです(もっとも,この手のARM箱には一定のクセがあるため,少なくともコマンドラインからある程度システムを操作できること程度の条件は満たしていないと厳しいでしょう)⁠

先行するWandboardやUtiliteなどと同じく,CuBox-iシリーズも搭載SoCによってバリエーションを持たせています。価格展開はリリース時特化で$45?$120と,ARM PCの中でも安価な部類に属します。最下位モデルはRasberry PiやBeagleBone Blackの対抗,上位モデルはUtiliteやWandBoardの対抗,といった様相です。

  • 最小限の構成のCuBox-i1(約$45,シングルコア,メモリ512MB,10/100 Ethernet,eSATA・RS-232Cなし)
  • やや上位のSoCを採用し,メモリを1GB,2コアにしたCuBox-i2
  • 上位のSoCを採用し,i2にeSATA・1GbE・RS-232C・Wifi・Bluetoothを追加したCuBox-i2Ultra
  • さらに上位のSocを採用し,4コア・2GBメモリを備えたi4Pro

比較的リーズナブルな送料(EMSを頼んでも$38)と本体価格,⁠遊びがい」のあるモデル構成から,手を出してみるのも楽しそうです。

UWN#332

Ubuntu Weekly Newsletter #332がリリースされています。

その他のニュース

  • ARMへの移植が困難なx86/x64バイナリを,一種のトランスレータを経由して動かすソリューション。
  • Juju Championshipの応募カテゴリが追加になりました。追加された分野は継続展開(Continuous deployment)⁠メディア関連(Media)⁠電話(Telecommunications)の3つです。
  • Mir/XMir環境における各種ベンチマーク。条件によってはXOrgよりもMirの方が良い成績を残しているものもあり,機能や安定性はともかく,期待できる内容となっています。
  • Kubuntuの有償サポートEmergeOpen社によって提供されるようになりました。英語のみではありますが,Kubuntuを本格的に導入したい場合には有効な選択肢になりそうです。
  • Ubuntu TouchのFile ManagerとMusicの現状。WeatherとCalendarのスクリーンショットもあります。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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