Ubuntu Weekly Topics

2017年1月6日号 『ドライバレス』でのプリンタ対応・UWN#492・493

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『ドライバレス』でのプリンタ対応

Linuxを日常的なPC環境として利用する場合,「Linuxに対応したプリンタはそれほど多くはない」という問題に遭遇することは珍しくありません。近年ではファブレットやタブレットPCを利用することでペーパーレス環境を実現することも可能なものの,どうしても紙にハードコピーを取りたい,あるいはなんらかの郵送物を印刷したい,という需要は一定確率で存在します。

しかしながら各種プリンタのLinuxドライバ対応状況は芳しくなく,プリンタを買い換えるたびに「このプリンタはUbuntuから使えるだろうか」といった悩みに向き合う必要があります注1)。こうした状況が,もう少しで変化するかもしれません。

注1
この問題を回避する方法は大きく分けて2つあり,1) HP製のインクジェットプリンタを購入する(基本的にLinux向けドライバが完備されている) / 2) Postscriptに対応したプリンタを購入する,となっています。かつては「Postscript対応=高級機しか無い≒10万円コース」といった状況でしたが,最近では数万円の複合機であってもPostscriptに対応したモデルも存在するため,ある程度現実的な選択肢です。

Zestyでは,各種モバイル環境で利用される印刷プロトコルを転用した,「ドライバレス」のデスクトップ印刷環境が搭載される予定で,そのテストが始まっています。

近年のコンピューティング環境ではモバイル環境からの印刷も必要となります。iOSやAndroidでは,デスクトップPCでよくある「プリンタドライバのインストール&プリンタの登録」といった面倒な処理をバイパスし,「必要なときに手近のプリンタから印刷する」ためのAirPrintやIPP Everywhereといった規格が存在します注2注3)。

注2
AirPrintはIPP Everywhereのサブセット実装に相当します。
注3
規格や互換性の観点から「AirPrint対応デバイスからIPP Everywhere対応プリンタに出力する」ことは基本的に可能である一方,「IPP Everywhereを前提にしたデバイスからAirPrint対応プリンタに出力する」場合は仕様上だけでなく,「そもそもそのプリンタはiOSから印刷できればいいのでAirPrintには正しく準拠していない」といった展開もありえるため,現実的には問題が発生する可能性があります。

Zestyに搭載される実装はCUPS 2.1で追加されたIPP Everywhere対応をベースとしたもので,非常に単純に説明すると「iOSやAndroidデバイスと同じようにプリンタとやりとりすることで,プリンタドライバのインストールその他の処理を行わずに済ませる」というものです注4)。

注4
同様の発想としては「Google Cloud Print対応プリンタにCloud Printで送り付ける」という解法もあります。AirPrintやIPP Everywhereを使うと「目の前のプリンタに印刷するために一度クラウドを経由する」というムダを避けることができます。

これは単にドライバのインストールが不要になる,というだけの話ではありません。悲しいことに,Linux対応プリンタよりもAirPrintやIPP Everywhereに対応しているプリンタのほうがよほど多いのが現実なので,この対応により,Ubuntuから印刷できるプリンタを大幅に増やすことができます。

IPP Everywhereに対応するプリンタは現時点ではあまり多くないものの注5),AirPrint対応プリンタは「新しい複合機ならたいていサポートしている」と言える程度には普及しているため,互換性問題が生じなければこの機能により,(現時点ではあくまでテストの呼びかけでしかありませんが)「たいていの複合機を利用できる」状態が作り出せるでしょう。

注5
現時点ではHPの最新世代のインクジェット複合機がIPP Everywhereに対応しています。

UWN#492・493

Ubuntu Weekly Newsletter #492#493がリリースされています。

その他のニュース

  • IncscapeのSnapパッケージについて。
  • Linux Kernel(2.4->2.6の間に存在した2.5系)・Ruby 1.9・Python 3に見られるリリースマネジメントのアンチパターンについて。いわく,「最新の開発ブランチはユーザーが試さない。結果として安定するまでに時間がかかる」「そして開発ブランチが安定するまでの間,ユーザーの多くは安定版から出てこない。結果として開発リソースは,開発ブランチに投入した新機能を安定版にバックポートすることに使われてしまう。本来使うべき開発版の安定化ではなく!」。
  • PPCの32bit版終了の予告
  • Ubuntu Phone付属のワードプロセッサー,uWriterで書いたドキュメントを印刷する方法「PCから見えるようにしてブラウザから開いておもむろに印刷」という完全な力業ですが,アイデアの勝利と言えるでしょう。
  • $99のARM搭載ノートPC,Pinebookについて。

今週のセキュリティアップデート

usn-3154-1:OpenJDK 6のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003667.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-5542, CVE-2016-5554, CVE-2016-5573, CVE-2016-5582, CVE-2016-5597を修正します。
  • CPUOct2016のOpenJDKへの適用版です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,Javaアプリケーションを再起動してください。
usn-3153-1:Oxideのセキュリティアップデート
usn-3156-1/usn-3156-2:APTのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003669.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003672.html
  • Ubuntu 16.10・16.04 LTS・14.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-1252を修正します。
  • MiTM攻撃を行ってInReleaseファイルを差し替えることで,本来と異なるパッケージを導入させることが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:usn-3156-1にunattended-upgradesの機能不全を引き起こすバグがあったため,usn-3156-2がリリースされています。
usn-3155-1:Firefoxのセキュリティアップデート
usn-3157-1:Apportのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003671.html
  • Ubuntu 16.10・16.04 LTS・14.04 LTS・12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-9949, CVE-2016-9950, CVE-2016-9951を修正します。
  • クラッシュファイルに悪意ある加工が行われた場合,任意のコードの実行が可能な問題がありました。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-3158-1:Sambaのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003673.html
  • Ubuntu 16.10・16.04 LTS・14.04 LTS・12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
  • 認証済みのユーザーが特権を奪取できる問題がありました。CVE-2016-2123, CVE-2016-2125, CVE-2016-2126を修正します。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-3159-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003674.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-7916を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3159-2:Linux kernel (OMAP4)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003675.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-7916を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3160-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003676.html
  • Ubuntu 14.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-6213, CVE-2016-7916を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3160-2:Linux kernel (Trusty HWE)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003677.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-6213, CVE-2016-7916を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3161-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003678.html
  • Ubuntu 16.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2015-8964, CVE-2016-4568, CVE-2016-6213, CVE-2016-8630, CVE-2016-8633, CVE-2016-8645, CVE-2016-9555を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3161-2:Linux kernel (Xenial HWE)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003679.html
  • Ubuntu 14.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2015-8964, CVE-2016-4568, CVE-2016-6213, CVE-2016-8630, CVE-2016-8633, CVE-2016-8645, CVE-2016-9555を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3161-3:Linux kernel (Raspberry Pi 2)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003680.html
  • Ubuntu 16.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2015-8964, CVE-2016-4568, CVE-2016-6213, CVE-2016-7042, CVE-2016-7097, CVE-2016-7425, CVE-2016-8630, CVE-2016-8633, CVE-2016-8645, CVE-2016-8658, CVE-2016-9178, CVE-2016-9555を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3161-4:Linux kernel (Qualcomm Snapdragon)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003681.html
  • Ubuntu 16.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2015-8964, CVE-2016-4568, CVE-2016-6213, CVE-2016-7097, CVE-2016-7425, CVE-2016-8630, CVE-2016-8633, CVE-2016-8645, CVE-2016-8658, CVE-2016-9555, CVE-2016-9644を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3162-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003682.html
  • Ubuntu 16.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-6213, CVE-2016-8630, CVE-2016-8633, CVE-2016-8645, CVE-2016-9313, CVE-2016-9555を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
usn-3162-2:Linux kernel (Raspberry Pi 2)のセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2016-December/003683.html
  • Ubuntu 16.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-6213, CVE-2016-7097, CVE-2016-7425, CVE-2016-8630, CVE-2016-8633, CVE-2016-8645, CVE-2016-9313, CVE-2016-9555を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので,カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため,通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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