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2010年の仮想化

2010年の仮想化を予測してみると、各仮想化ソフトウェアがしのぎを削る、ちょっとした乱世になるのではないでしょうか。

2009年を振り返ってみると、「無償化」の進展が著しい年だったといえます。主だったところだけでも、VMware ESXiにCitrix XenServer、Hyper-Vも実質無料で使用できますし、Linux KVMもCentOSの普及が相当進んだため無償で始めることができます。そんな状況の中、どのように仮想化の世界が動くか予想してみましょう。

サーバ仮想化の分野

仮想化といえば、まずはサーバ仮想化という感があります。この分野では、業務系システムではVMware ESX Server(パッケージという意味ではvSphere 4。以後VMware)が優勢で、そこにHyper-Vが食い込んでくる構図になるでしょう。

Hyper-V 2.0

Hyper-VはWindows Server 2008 R2のリリースに伴い、2.0にバージョンアップしました。ライブマイグレーションやクラスタ共有型ファイルシステムのサポートなど、これまで機能的に見劣りしていた点も補強され、企業の導入にあたっての評価対象に挙げられるようになってきています。特にWindowsの利用の多いユーザの場合、Hyper-Vならば仮想化部分のライセンス料が実質的に無料である点が魅力的に映るようです。それほど高機能が必要ない小規模システムであれば、管理面でもWindowsのユーザインターフェースで管理できることが好材料となっています。

vSphere 4

規模の大きいシステムの場合、VMwareがまず検討対象に挙がる状況はしばらく続きそうです。しかし一方で、先行的に導入しているユーザからは、ライセンスや保守のコストが高いことに対する不満が聞こえてきます。VMwareはライセンス課金がプロセッサ単位のため、先行導入したシステムはCPUのマルチコア数が少なかったりメモリ搭載量が少なかったりするため、それほど多くの仮想マシンは搭載できません。これが仮想マシンあたりのコストを押し上げてしまっています。新たしいハードウェアであればマルチコア化、多コア化が進み、相対的にライセンスコストも安く感じられるようになってきていますが、そのあたりのことがあまり知られていない実情があるように思います。

ハイパーバイザーの選択方法

XenやLinux KVM、Hyper-Vなど仮想化環境を構築するためのソフトウェアが一通り揃い、技術的にも「できること」に大きな差がつきにくくなって来ている現在、導入時のライセンスや保守にかかるコストは選択を大きく左右する要因になるでしょう。

2010年は、サーバ仮想化のコモディティ化(一般化と低価格化)が一気に進むのではないでしょうか。

ここで少し、ハードウェアについてのトレンドに触れておきましょう。

仮想化のためのハードウェア

2009年はAMDからコードネームIstanbul、IntelのコードネームNehalemと、仮想化に適した新CPUがリリースされました。Istanbulはプロセッサあたり6コアを搭載し、NehalemはメモリがDDR3の3チャネルになったのが大きな特長です。

マルチコア化が加速するCPU

まず、CPUがマルチコア化することで、仮想化に適したCPUになったといえます。仮想マシンに割り当てた仮想CPUは、物理CPUコアに割り振られて処理が行われますが、CPUコア数が多ければ多いほどCPU競合が発生しにくくなるため、スループットが向上します。現状、仮想化統合の対象となるシステムはそれほどCPUパワーを要求しないものが多いので、CPUコアあたりの絶対性能、つまり高クロック数よりはコア数の多さが重要となります。

メモリ帯域も重視

メモリチャネルが増えると、それだけCPUとメモリの間で一度にやり取りできるデータの量が多くなります。最近ではデータベースのようなアプリケーションを仮想マシン上で実行することが増えてきたので、メモリアクセス速度が速いことは性能的に有利な要因となります。AMDの次期CPUはメモリチャネルを4チャネル備えることになっています。

メモリの省電力も重要

メモリがDDR3規格になったのは、消費電力を押さえる点で有効です。エコ的な観点や、供給電力量の関係から低消費電力化の要請が高まっており、2010年はCPUやメモリが低消費電力のものが好まれるようになるでしょう。

仮想化のためのストレージ

仮想化の流れはストレージにも及んできています。従来のストレージは、ローカルに位置が固定され、容量もハードディスク容量の上限による制限を受け、柔軟性に欠けていたところがあります。それに対して仮想化されたストレージは、SANのように位置の制限を受けず、容量も必要な分だけ割り当てることができるものになります。

共有型ストレージが当たり前に

SAN(Strage Area Network)は、これまでは必要性もクラスタ構成などに限られるため、あまり一般的ではありませんでしたが、サーバなどが仮想化されたことで必要性が大幅にアップしました。SANといえばFibreChannel(ファイバーチャネル:FC)を使用した高速、高価なものが中心ですが、一般化するに従ってEthernetを使用したiSCSIも注目されています。さらにFCとの互換性を重視したFCoE(FC over Ethernet)なども提唱されており、今後IPベースのSANが動向の中心となりそうです。仮想化用のデータストレージとしてはNFSのようなNASも活用できるので、2010年は必要に応じて適切なものを選択する、共有型ストレージの利用が一般的になっていくでしょう。

シンプロビジョニングの活用に注目

さらに注目を浴びるのが、必要な分だけ容量を割り当てる「シンプロビジョニング」です。特にデータベースなどはデータ容量の増加傾向が予測しにくいため、必要以上にディスクを搭載してしまったり、ディスク容量の制限にひっかかってしまうようなことが多くありました。シンプロビジョニングを活用すれば、このような煩わしい問題から解放されます。共有型のストレージであれば、初期容量としてある程度の容量をあらかじめ用意して割り当てることはコスト的にも許容されますし、ストレージ装置は無停止での容量追加などをサポートしていますから、物理的な容量が不足してきても対応が可能です。

SSDの利用が一般化

仮想化が広まるにつれ、ストレージの速度もより高速なものが求められるようになってきています。そんな状況の中、注目したいのがSSDです。SSDはハードディスクのように回転せず、メモリと同じようにデータにダイレクトにアクセスできますから、ランダムアクセスに強いストレージです。データベースのようなランダムアクセスが頻繁に発生するような用途に適したストレージと言えます。

最近ではデータベースも仮想マシン上で動かしたい、という要望が増えてきていますが、必ずパフォーマンスが課題として挙げられます。そのような課題には、ストレージの速度を根本から変えるようなアプローチが必要になるでしょう。SSDは価格や実績の点でまだまだと見られているところもありますが、ノートPCなどコンシューマー向けの分野ではかなり幅広く使用されるようになってきていますし、エンタープライズ向けのストレージでも製品が出回り始めています。2010年はSSDによる高速ストレージも普及するのではないでしょうか。

デスクトップ仮想化が普及期に

これまではコストや安定性などの観点から導入が進まなかったデスクトップ仮想化も、2010年になって一気に普及が進む可能性があります。

Windows 7がデスクトップ仮想化の転換点になる?

現在の主にビジネス向けのデスクトップ環境を見ると、圧倒的にWindows XPが多く、Windows Vistaの導入は見送った企業が多いのではないでしょうか。しかしXPもそろそろ耐用年数的に厳しい状況になってきており、Windows 7が比較的軽量化されたことで、次のデスクトップ環境のリプレースではWindows 7を検討するケースが相当増えるのではないかと予想しています。

この際に、デスクトップ仮想化が一気に進む可能性があります。アプローチとしては2つです。

セキュアなデスクトップ環境の実現

まず情報セキュリティの観点から、個々のユーザにデータを持たせるのをやめて、デスクトップ仮想化による集中化でデータ持ち出しを困難にする方法です。今のところ、デスクトップ仮想化を行いたい最大の理由は情報セキュリティの強化でしょう。この領域においては、環境のリプレースが待ったなしの状況になりつつありますし、Windows 7の評価が終わったあたりで一気に進むと予想します。

残したいレガシー環境をデスクトップ仮想化で

もう1つのアプローチが、コストを下げるために全体を仮想化はしないが、これまで使用していたレガシーアプリケーションを残すために一部XP環境をデスクトップ仮想化で残す方法です。この流れはサーバの仮想化移行とほぼ同じ考え方であり、多くの企業が採用するのではないかと予想しています。

どちらのアプローチを取るかはユーザのポリシー次第ですが、2010年は大きな節目を迎える時期に来ていることは間違いないのではないでしょうか。

2010年は仮想化が当然のものになる年

仮想化技術がコモディティ化する中で、如何に活用するかという点ではまだまだノウハウの蓄積が進んでおらず、2010年も試行錯誤が続くのではないでしょうか。そんな状況でも、確実に仮想化に触れる技術者、仮想化を積極的に活用するシステムは増えており、そういう意味では2010年は仮想化を使うのが当たり前の年になるのではないかと思います。

もし、まだ仮想化について触れたことがないという方がいれば、この流れに乗り遅れないよう、今すぐ仮想化を始めてみてください。

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