新春特別企画

2011年のインターネットで起こりそうなこと

この記事を読むのに必要な時間:およそ 1.5 分

あけましておめでとうございます。

gihyo.jp恒例の新年企画「今年の○○はどうなる?」で記事を書く機会をいただきました。何人かの方々がさまざまな視点で2011年を語られるようですが,私はインターネットインフラ関連の話題を書いてみようと思います。

IPv4アドレス枯渇とIPv6

2011年のインターネットインフラで最も注目されるのは,恐らくIPv4アドレス枯渇とIPv6への移行だろうと思います。

IPv4アドレス枯渇は,かなり前から言われていますが,懐疑的な人もいまだに多く「IPv4アドレスが枯渇する」という記事を書くと,ほぼ確実に「なくなる詐欺」という反応をいただきます(笑)⁠

しかし,残念ながら3月までにはIPv4アドレスのIANAプールが枯渇します。2月中になくなるようにも思えます。そして,2011年末ごろには日本国内で新しいIPv4アドレスの割り振りを受けられなくなりそうです。

IPv4アドレスの新規割り振りができなくなっても,それまでのIPv4アドレスはそのまま利用可能なので,急にインターネットが止まってしまうわけではありません。しかし,IPv4アドレス枯渇対策やIPv6への移行を行う過程で,インターネットインフラの運用コストが上昇するでしょうし,障害も発生しそうです。IPv6に関する規格で定まりきらない部分も多く残されています。

2011年は,IPv4インターネットとIPv6インターネットの両方で大きな変化が起きそうです。

児童ポルノブロッキング

2011年4月には,日本国内の一部のISPで児童ポルノに対するブロッキングが開始されるものと思われます。

これまでフィルタリングはありましたが,ブロッキングはありませんでした。フィルタリングはユーザの同意を得て遮断しますが,ブロッキングはユーザの同意を得ずに遮断するものです。

日本国内ISPによるブロッキングが開始されるまでの大まかな流れとしては,2005年にさかのぼります。2005年から2007年までの間に携帯電話に対するフィルタリングサービスに関しての議論が盛んに行われ,今ではフィルタリングサービスが広く一般的に利用されるようになりました。

2008年に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が国会で成立し,18歳未満の青少年に対する携帯電話フィルタリングの義務づけとともに,ISPが利用者の求めに応じてフィルタリングソフトやサービスを提供することを義務づけられました。

その後,2008年から2010年にかけてインターネットでの有害情報に関して議論が続きましたが,2009年からISPによる児童ポルノのブロッキングに関しての議論が多く行われるようになりました。

2010年に安心ネットづくり促進協議会児童ポルノ対策部会法的問題検討サブワーキンググループが「児童ポルノ対策作業部会 中間発表 法的問題検討の報告」を公表しましたが,そのなかで,ISPによるブロッキングは緊急避難阻却事由により通信の秘密の保護を規定した電気通信事業法に抵触しないという検討結果がまとめられました。

2010年9月から2011年3月までブロッキングを行うことを検討しているISPが試験運用を行い,2011年4月には一部のISPが児童ポルノのブロッキングを開始するだろうと言われています。

児童ポルノを取り締まるということそのものは正しいだと思いますし,通信の秘密とブロッキングに関して今まで非常に時間をかけて検討がなされてきたこともわかります。しかし,技術的な視点で言えば,今まで存在していなかったブロッキングの仕組みがISPに入ることになり,日本のインターネットに大きな変化が発生すると言えます。

その他もろもろ

この他にも,以下のようなことがありそうです。

インターネットへの監視,検閲,傍受が世界中で強化

各国政府が自国内のインターネットを制御することに対する要求が高まり,ネットを制御する技術が徐々に熟練していくことで,監視,検閲,傍受の体制が世界中で整えられて行くものと思われます。これは網だけの話ではなく,SkypeやBlackberryなどを含めて,非常に多くの試みが話題になりそうです。

郊外型データセンターの竣工

さくらインターネットの石狩データセンター,IIJの松江データセンターパークが2011年中に竣工予定です。外気冷却を利用した郊外型データセンターの動向は,日本におけるデータセンターのありかたの鍵になるかも知れません。

動画トラフィックの「重み」

動画がますます流行るだろうと思われます。動画は非常に大きなトラフィックを発生させますが,その「重み」がインターネットインフラ各所に軋みを生みそうです。その軋みは技術面だけではなく,インターネット上の組織間での勢力争いにも影響を与えそうです。

ネット中立性議論が議論から行動へ

これは主にアメリカでの話になると思いますが,Comcastなどによって,ネット中立性議論に関連しそうな動き(事件)がありそうです。今までのネット中立性は議論が中心だった印象がありますが,徐々に実力行使が増えて行き,インターネットにおける新しい力関係が構築されていくのかも知れません。

キャリアによる100GbEサービスの開始

5年かかった100GbEの規格化もようやく終了し,100GbE製品が登場するようになったことで,キャリアも100GbE伝送サービスを開始するものと思われます。価格が高めになると思われるため,当初はあまり勢いが出ず,100GbEインターフェースや100GbEサービスが多く売れるには年単位の時間がかかると推測されますが,2011年は100GbEまわりでいろいろと開始される年になりそうです。

とはいえ,なってみなければわからない

個人的な予想はこんな感じです。ただ,実際になってみないとわからないというのが正直なところです。

Webプログラミングやソーシャルメディアが話題の中心になることが多い今日この頃ですが,ぜひインターネットインフラまわりの話題にも興味を持っていただければ思います。

今年もどうぞ宜しくお願いいたします。

著者プロフィール

あきみち

「Geekなぺーじ」を運営するブロガー。

慶應義塾大学SFC研究所上席所員。全日本剣道連盟 情報小委員会委員。通信技術,プログラミング,ネットコミュニティ,熱帯魚などに興味を持っている。

近著「インターネットのカタチ - もろさが織り成す粘り強い世界」

Twitter IDgeekpage

インターネットってなんだろう?(てくらぼ)

バックナンバー

新春特別企画

バックナンバー一覧

コメント

コメントの記入