新春特別企画

2013年のインターネットを予想する─⁠─ネット規制はインターネットをどう変える

2012年にインターネット上で発生した話題から、2013年を予想してみます。最近の私の個人的な興味は、インターネットに対する検閲や規制などに向いていることもあり、この記事は、そこら辺が中心です。

日本の著作権法─違法ダウンロード罰則の行方

2012年11月1日に改正著作権法が施行され、それまで罰則規定がなかった違法ダウンロードに罰則規定が追加されました。

日本版フェアユースを目指しつつも「写り込み」などに関する個別規定4個が追加されただけという内閣提出法案に対する国会議員による修正という形で、罰則規定が追加されました。⁠写り込み」等の改正に対して、本来は全く関係がない違法ダウンロード罰則規定追加が「修正」という形で行われたことが2012年後半に話題となりました。

この改正著作権法施行によって、日本国内のインターネットトラフィックが激減するという萎縮効果がありましたが、改正著作権法を利用して本当に違法ダウンロードを取り締まれるのかという意見がコンテンツ権利者側から出ているようです。

権利者側からの批判のポイントは「有償著作物」のみが、違法ダウンロードでの刑事罰対象となっている点です。たとえば、劇場公開中の映画は有償著作物となり違法ダウンロードでの刑事罰対象となりますが、劇場公開が終了してDVDが販売されるまでの間は有償著作物とみなされない、という解釈が文化庁によって示されています。このあたりの改正を目指す動きが2013年以降発生するかも知れないと私は予想しています。

ITUとインターネット─国連がネット規制に乗り出す?

2012年12月に、ドバイでITU(国際電気通信連合)による世界国際電気通信会議 WCIT-12が開催され、ITR(国際電気通信規則)の改正が審議されました。インターネットの利用を規制する提案が多く提出されていたことから注目を集めました。

できあがった結果を見ると、当初リークされていた危ない提案の多くは防がれたため、最終的なITRはそこまで過激な内容ではなくなっているという意見もあるものの、実際は危ない解釈ができてしまう可能性も捨てきれないなどの理由により、日米欧などの国々は署名を拒否しました。その他の多くの国々はできあがったITRに署名しています。署名した国が89ヵ国、署名しなかった国が55ヵ国です。

多くの報道で、⁠署名した国は規制賛成である」と受け取られたこともあり、⁠インターネットが分裂してしまった」という感想もありました。とはいえ、WCIT-12そのものが大きな変化を起こすものではないというのが私の感想です。WCIT-12によって策定されたITRは、その上位にあるITU憲章の枠内でしか行えないものですが、今回の改訂はITU憲章ですでに記載されているような内容が大半であると思えるためです。

ただ、2012年12月に開催されたWCIT-12が、⁠多数決で決めると規制賛成派が勝つ見込みが強い」ということを示したという点では、非常に大きな意味を持っているのだろうと思います。

どちらかというと、本当に危ないのは、2014年のITUの全権委員会議(PP-14)かも知れません。おそらくWCIT-12は、2014年に向けた前哨戦のようなものです。PP-14では、ITU憲章を変更することも可能であり、ITU憲章に「インターネット」の文言が含まれるようになることで、国連が直接インターネットに対する取り決めを行うことも可能となりそうだからです。

2013年5月に行われるWTPF-13(第5回世界通信/ICT政策フォーラム)も、2014年のPP-14の行方を見守るという意味では重要です。WTPF-13および2014年のPP-14の準備途中の提案リークなどが、2013年に一部界隈で話題になると予想されます。

無視できない「2ちゃんねる」の動き

2011年末時点では、⁠2ちゃんねるに激震が走るかも」程度の情報だったのですが、2012年に入ってから2ちゃんねるに関連するさまざまな動きがありました。

2012年前半に、2ちゃんねる管理会社が麻薬特例法違反の幇助の疑いで警察による捜索を受けました。2012年12月には、麻薬特例法違反の幇助容疑で2ちゃんねる元管理人ひろゆき氏が書類送検されたと報道されました。

2ちゃんねるまとめサイトに関する事件もいろいろと発生し、2ちゃんねるからの「要請」が2ちゃんねるまとめサイトに大きな影響を与えることが示された2012年でもありました。

2ちゃんねるそのものの読者は減っていると言われていますが、2ちゃんねるまとめサイトを通じた読者を含めて考えると、日本のネットにおける2ちゃんねるの影響力は数年前よりむしろ増しているようにも思えます。

2ちゃんねるの動向は、日本のネットの今後の動向に大きな影響を与えそうだと私は予想しています。

「なりすまし」から「ステマ」まで─注目の事件その後

その他、いろいろです。

なりすまし事件とISPのアクセスログ

2012年後半に、不正プログラムを実行してしまった人物が誤認逮捕されるという、なりすまし事件が大きく報道されました。この文章を執筆している段階では、真犯人は逮捕されていません。この事件に関連して、ISPに対してアクセスログの充実が要請されているという噂も聞いていますが、どこまでアクセスログを取得すべきなのかに関する議論にも、この事件は影響を与えそうです。

Megaupload事件

著作権侵害行為の温床として当局にマークされ、アメリカで起訴されてニュージーランド当局が逮捕したという「国境を越えた逮捕」となったMegaupload事件ですが、その後、ニュージーランドの裁判では令状に不備があったという判断がされています。逮捕されたMegaupload運営者キムドットコム氏をアメリカに引き渡すかどうかの判断は2013年の前半に下されると思われますが、その判断が注目されるところです。

いわゆる「ステマ」について

日本のネット界隈における2012年は、視点によっては「ステマ」に始まり「ステマ」に終わったようにも見えます。もともとは、2ちゃんねるまとめサイトに関連して連呼されていた「ステマ」という単語が、2012年前半に、いつの間にか「食べログ」に話題が移り、各種メディアで報道されました。

2012後半には、宣伝であると明示せずにブログでペニーオークションの宣伝を行っていた芸能人が話題となりました。宣伝であると明示しない宣伝に対する規制等の話題は、ネットに限ったものではないと思うのですが、そこら辺の議論が2013年に過熱するかどうかという話もありそうです。

ジワジワといろいろ進む2013年

2012年同様、2013年も何かがいきなり発生するような感じにはならないと思われます。どちらかというと、ジワジワと何かが進んで行く感じです。

新年早々、全く明るくない話ばかりの記事でアレですが、私の2013年予想はこのような感じです。

はぁ…。

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