アキラの海外“デッドストックニュース”掘り起こし
第13回 ついに逮捕された「スパムキング」-Alan Ralsky半生記
Gmailを使っていると,あまりスパムを気にしないで済むのだが,まれにスパムじゃないメールまで振り分けられてしまうことがあるので,ときどき「迷惑メール」をのぞくことにしている。最近は怪しげな漢字が飛び交うスパムが半分くらいを占めていて,あまりにおバカなサブジェクト/送信者リストを眺めていると,不快を通り越してつい笑ってしてしまう。なんだよ,「強力淫蕩粉」って!!
激情持久 強力淫蕩粉
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筆者のところには平均すると1時間に1,2本の頻度でスパムが送りつけられているが,これよりもっと多い人もたくさんいるだろう。今やインターネット上を流れるメールの8割がスパムと言われており,ネットの信頼性を大きく揺るがす社会問題となりつつある。セキュリティベンダや通信キャリアはもちろん,IT企業すべて,いや,国家規模での対策が必要なのは疑いない。
アイ アム "Commercial E-mailer"
最近は中国,ロシア,東欧がネット犯罪の拠点として悪名高いが,米国内にも「スパムの巣窟 the cessppol of Spam」と呼ばれている州がある。"The King of Spam"の称号(?)をもつ男・Alan Ralskyの本拠地,デトロイトのあるミシガンだ。Ralskyが1日に発信するスパムは1億通とも言われており,複数のドメインを駆使して世界中に送りつけている。内容といえば,格安バイアグラやダイエット商品,懸賞,不動産の案内,それに「自宅でカンタンに稼げます!」といった類の仕事紹介など。ミシガンに着せられた汚名はRalskyによるところが大なのだ。
スパムのブラックリストサイト「Spamhaus」にも写真入りで紹介されているAlan Ralsky
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このRalskyが新年早々の1月3日,10人の仲間と共にFBIに逮捕された。彼らは2005年夏,スパムを使って中国市場の株価操作を行い,300万ドルもの利益を不正に得たという。実に3年がかりの捜査がようやく実を結んだ形だが,Ralskyがスパムビジネスに手を染めたのは1990年台後半といわれている。なぜ彼は10年以上も"Spam King"のままでいることができたのだろうか。
Ralskyは非常にめずらしいタイプのspammerだといわれる。彼はこれまで実名&顔出しで何度もメディアの取材も受けてきており,自らをspammerではなく"commercial e-mailer"と名乗っている。スパム業者の集会なども進んで主催し,公の場に出ることを厭わない。2002年,"The Detroit News"のインタビューでその不遜な態度,そしてスパムビジネスで得た瀟洒な邸宅(7万5,000ドル相当)が明らかになったとき,我慢できなくなったSlashdotの住人たちが,Ralskyの名前で一斉に大量のDM/カタログ請求を行い,彼の自宅を紙と本の束で埋め尽くすという事件があった。このときRalskyは「あいつら,頭がおかしいんだよ。私へのひどい嫌がらせだ These people are out of their minds. They're harassing me」とコメントしている。なるほど,これくらい自分のことを棚にあげられる神経なら,実名報道でも平気なのだろう。
もともとはイリノイ州の保険業者だったRalskyは,1992年,無記名証券を販売した容疑で50日間拘留された。その後,破産を宣告され,書類偽造で有罪(執行猶予3年)となっている。保険業者としてはトップセールスマンだったが,逮捕される前にも違法まがいのことはかなりやっていたらしい。3年後には,保険業者としてのライセンスを剥奪されている。
保険屋時代の足だった中古車1台を除いてすべてを失ったRalskyは,その車を売り払い,PCを2台購入した。ここでRalskyはspammerとして新たな人生を始めることになる。保険の世界で培ったビジネスのカンが活きたのか,彼はあっという間にこの世界で名の知れた存在になった。娘の夫も仲間に引き入れ,ますます"ビジネス"に没頭するRalsky。2001年,通信キャリア大手のVerizonがRalskyを訴えたが,このとき彼が送りつけたスパムの総量は56Gバイトにも達しおり,同社のネットワークを麻痺させたという(両者は翌年に和解。和解金額は公表されていない)。
21世紀になり,スパムに対する司法の取り締まりが厳しくなってきたころ,Ralskyはビジネスパートナーを中国に求めた。米国の法律が及ばない中国のサーバを経由してスパムを送りつける作戦にシフトし始めたのだ。2003年,米国でスパムを取り締まるCAN-SPAM法が制定されたが,この法律は議論すべき点が多く,また海外のスパム業者を裁くことができるかどうかも定かではない。Ralskyは同法が成立した日に「すばらしい法律だ」と賞賛を贈っている。
Ralsky vs. FBI
2005年,ついにFBIはデトロイトの「スパム御殿」,Ralskyの自宅に強制捜査をかけた。PC,ディスク,財務記録,その他あらゆるデータを押収し,一時的な休業状態に追い込むものの,逮捕までには至らなかった。スパム犯罪の立件はそれほど難しいのだ。
CAN-SPAM法の下でRalskyを逮捕できなかったFBIだが,諦めたわけではなかった。関係各機関の協力を取り付け,慎重な捜査の結果,ようやく3年後に娘婿を含むRalsky一派を逮捕に追い込んだ。名もない中国企業の株価をスパムで操作し,高値で売り抜ける - 日本で言うところの「風説の流布」というやつだろうか。ほかにも,CAN-SPAM法違反,詐欺,マネーロンダリング…彼らの前に並べられた容疑の数は41にのぼる。スパム配信時にはボットを使用していた形跡もあるという。
逮捕後,Ralskyは弁護士を通じて「私は闘う」と"The Detroit News"にコメントしている。
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