アキラの海外“デッドストックニュース”掘り起こし

第15回 Appleの“お買い物”から見え隠れする「次の一手」

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だいぶ間が空いてしまいましたが,この連載,ちょっと方向性を変えることにしました。これからしばらくは,Apple関連のこぼれ話を集中的に追いかけてみたいと思う。

断っておくが,筆者はMacユーザでもないし,Steve Jobsをカリスマのように慕う信者でもない。もっとはっきり言えば,Appleはあんまり好きな会社じゃない。ただ,一企業として見たとき,MicrosoftやIBMといった巨大企業,GoogleやYahoo!のような新興勢力,そういったほかのITベンダとは明らかに違う,何ともいえない独特の立ち位置を保っている不思議な存在だ。その何ともいえない部分を,Appleをめぐる動きを眺めながら,少しずつ解き明かせていければ,と思う。

目をつけたのは「マイクロプロセッサ」

現在,IT業界は買収や提携,分社化などの動きが激しい。有名なところではYahoo!をめぐるMicrosoftとGoogleの攻防や,OSS界隈ではビッグニュースになったSun MicrosystemsのMySQL買収,とにかくエンタープライズソリューションなら何でも買っちゃえ!という勢いのOracle,ハゲタカ株主にさんざん脅され,とうとう携帯事業を切り離さざるを得なくなったMotorola…まったくお盛んなことです。

一方,こういったにぎやかなM&Aの動きにほとんど,というか,まったく名前が出てこないのがAppleである。10年以上前,資金繰りが相当ヤバくなってMicrosoftに援助してもらったことはあったが,もちろん買収されるなんて事態にはならなかった。経営が好調な今,どこかに身売りするようなことは間違ってもないだろうが,不思議なのは,買うほうにも名前が上がってこないのだ。すでに相当な体力を蓄えているだろうに。

ところが,である。Forbes.comのニュースによれば,どうもつい最近,Appleはちょっとしたお買い物をしたらしい。その会社はP.A. Semi知る人ぞ知るファブレス半導体企業である。同社を率いるのはDan Dobberpuhl今は亡きDECにてAlphaStrongARMの設計のリードデザイナーを務めていたチップ業界の伝説的人物だ。

「伝説のアーキテクト」が率いるP.A. Semiとは?

おそらく少数精鋭という言葉がこれほどぴったりの企業もそうはないだろう。従業員は150人ほどだが,開発チームにはOpteron(AMD),Itanium(Intel),UltraSPARC(Sun)などに関わっていた連中がごろごろしているという。会社設立は2003年,2005年あたりから製品発表を始め,以来,省電力とコストパフォーマンスにすぐれたチップを世に送り出してきた。現在の主力製品であるデュアルコア64ビットプロセッサPA6T-1682M PWRficientはわずか14Wの消費電力で2GHz動作という驚異的なパフォーマンスを実現しており,最近ではNECのストレージアレイにも採用された実績を持つ。

Forbesの報道によれば,AppleはJobs CEOが自らP.A. Semiの買収を指揮していたようで,自宅を交渉の場にしたこともあったとか。3年前からひそかに目を付けていたとあって,相当入念に準備したことが伺える。

気になるのは,P.A. Semiの技術がどういった形でApple製品に使われるかだ。さすがにあれこれ注文したIntel Core 2をMacから追いやることはしないだろう(たぶん)。新しいiPodやiPhone,それとも今後リリースする予定の製品に組み込まれる,と考えるのが妥当な線だ。いずれにしろ省電力というブランドイメージをもつポートフォリオを手に入れられたことはAppleにとって大きいはずだ。何しろApple製品,とくにノートブックのイメージといったら…(以下自粛。以前に比べてかなり改善されているのはもちろん知っています)

4月23日現在,まだどちらからも公式には発表されていないが,24日のApple決算発表で,何らかのアナウンスがあるかもしれない。Forbesによれば買収金額は2億7,800万ドル,最近の買収合戦で飛び交う数字に比べたら,かなりおとなしめである。今後,どう展開するかはわからないが,精鋭の開発部隊も含めてまるごと手にできるとしたら,けっこういい買い物のような気はする。

著者プロフィール

階戸明(かいとあきら)

起きてからまず海外ニュースサイトのハシゴをしないと1日を始められない海外ニュースウォッチャー。英語は英検準一級の資格を持ち,日本人と話すより英語圏の人のほうがウマが合う。

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