つながるコンピュータ -Testing the edge-

第0回じめに

Webの世界の冒険者たち

コンピュータとネットワークに支えられた情報社会を享受しつつも、私たちは、これまで経験したことがない大きな変化の潮流の中で溺れそうになりながら生活しているような気がしてなりません。

Life Hacksという概念がエンジニアの支持を集めています。生活スタイルを改善して無駄な空き時間を排除し、かつ自己研鑽のための情報検索・整理術を駆使しながら仕事場や開発者コミュニティで活躍している有能なエンジニアを見かける機会も増えています。

彼ら、彼女らはまるで、冒険物語の主人公のように見えます。

  • 膨大な情報の海の中に放り出されて、⁠例:インターネット)
  • 新しい島のように次々に誕生してくる新技術の情報収集を行い、⁠例:マザーボード、OS、プログラム言語、RDBMS、Googleなどの公開API)
  • 一度探検した島であっても、火山が噴火して環境が変わるたびに探検に出向き、⁠例:ソフトウェアのバージョンアップ、セキュリティ対応)

…何てタフなんでしょう!

新たなるステージに足を踏み入れて

こうしたエンジニアたちの最新の冒険物語の多くは、Webプラットフォームを舞台に繰り広げられています。1991年にWebが登場[1]してから今年で16年。人間だと高校生の年齢です。世界の技術者たちの手によってすくすくと成長したWebは、人間が成長の過程でコミュニケーション能力を高めるのと同じように、組織と人間、あるいは人間同士の媒介の役割[2]を、階段を上がるように強固なものにしてきました。

昨今では「Web 2.0」という用語も定着してきています。

WikipediaのWeb 2.0の項では[3]⁠、現時点でのWeb 2.0サービスの特性について詳しく述べられています。主に使われている技術については、以下のようなトピックが上げられています。

  • リッチ・インターネット・アプリケーション (RIA)
  • CSS
  • 意味のあるXHTMLマークアップとMicroformatの利用
  • RSS/Atomによるデータの連携と集積
  • フォークソノミー(利用者によるタグ付けなど)の活用
  • オープンソースソフトウェアの利用
  • Wikiやブログを利用した情報発信
  • マッシュアップ
  • RESTやXMLのWeb API

Web 2.0という言葉そのものは「マーケティング用語」⁠バズワード」として扱われることも多いですが、それは、情報の送り手と受け手の間のコミュニケーションがWeb 2.0の技術によって飛躍的に変化したことから、新しいビジネスチャンス獲得につながるものとして、各方面から注目を浴びているからです。国境を越えた平等な市場としてのWebプラットフォームに、Web 2.0の概念を取り入れたサービスが次々に提供され、利用者もその体験を楽しんでいます。

以前に比べてサーバ機器の価格も安くなり、ネットワーク回線の敷設も気軽に行えるようになってきたので、個人が自宅から自由なアイデアでサービスを発信できる良い時代だと思います。これから何かスモールビジネスを始めてみようかと考えている方も多いのではないでしょうか。

Web 2.0という海を航海するためには?

しかしながら先に述べたように、海上の冒険に出かける術を新たに習得するのは、非常に骨が折れる仕事です。

加えて、Web 2.0というバーチャルな画面の向こうの現実の世界とのつながりは断ち切ることはできません。冒険を楽しむには、それなりの基礎知識(技能や法規など)を身に付け、きちんと判断ができる船長になることも重要です。

本連載の目的

本連載ではWebサービスを舞台(基盤技術)として、自分の目的地へたどり着くための冒険を始めたいエンジニア志向の人たちへの航海術を解説します。他者から与えられた目的地ではなく、自分が行きたい場所へ行くための手引きとして、お付き合いいただければうれしいです。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧