達人が語る,インフラエンジニアの心得

第4回 エンジニア不足を解消しよう

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今回は,⁠心得」とはちょっと違うような気もしますが,インフラエンジニアを取りまく環境について,ちょっと書いてみたいと思います。

インフラエンジニア不足の原理

筆者が思うに,インフラエンジニアというのは,常に絶対的な不足に悩まされています。それにはさまざまな理由がありそうです。減点法による評価が多い,教育する機会がない,教育するつもりがない,イメージが良くない…などです。

ネットワークにしてもサーバにしても,何かヘマした瞬間にトラブルが起こることがあります。init 6と叩くつもりがinit 0と叩いたり,ルーティングを間違えたりフィルタを間違えたりした瞬間にリモートから何もできない状態に陥ってダッシュする状況は,インフラエンジニアなら誰しも経験しているのではないでしょうか。

運用というのは,うまく動いていてあたりまえ,障害が起こると「何やってんだー!」と言われる世界なので,どうしても経験が少ない人には仕事が任せられないのが普通です。経験を積む機会と言えば,他に誰もいなくて自分がやるしかない状況や,やさしい先輩がそばについて見守っていてくれる中で作業をするときくらいです。つまり,自分から「やりたい。やろう」と思っても,やれないというのが実情です。これはプログラマやデザイナーなどの開発系との大きな違いです。

ただ正直に言えば,昔に比べれば今は恵まれた状況になってきてはいると思います。そこらのPCにLinuxを入れるのもかなり簡単になってきているし,安いVPSサービスも増えてきています。それに,ノウハウやコツもGoogle先生にかなり教えてもらうことができます。とはいえ,そういうところから,実際のサービスで運用するエンジニアになるまでには大きなギャップがあるのも事実です。

状況に任せるのは運次第

筆者のケースでは,この連載で以前にも書きましたが,某アスキーという会社の某サービスで,なぜかサーバエンジニアが自分一人だった※1ので,好むと好まざるとを関わらず,やる環境にありました。もちろんそれは好む状況だったのは言うまでもありません。ただ情報収集は今よりかなり大変ではありました。

GoogleもなかったAltaVistaはあったけど)ですし,blogのように個人が気軽に情報発信することもなかったので,情報源といえばmanとソース,あとは書籍とNetNewsくらいでした。当時はわからないことを質問すると「man ○○」と言われ,⁠manってなんですか?」って聞くと「man man」と言われる,というジョークがありました。最近はRTFM(Read The Fucking Manual)とかほとんど聞かないですね。

…昔話をするのは年寄りの証拠です。

某アスキーの次も,某So-netにおいて,サーバエンジニアのリーダーだった人(この人はすごく詳しくていろいろ勉強になった)がほとんど会社に来なかったので,実質サーバ関連については自分がリーダーとして活動することができたので,いろいろ学んでさまざまな経験を積むことができましたし,そのあとの某オンザエッヂのデータセンターにおいては,立ち上げ直後にマネージャとして加わったので,⁠やりたいけどやれない」という事態になったことは,エンジニア人生でまずないという,かなり恵まれたものではありました。もちろんスキルをつけながらだったので,冷や汗をかいたり,キツい思いをすることもたくさんありましたが。

…昔話をするのは年寄の証拠です。

さてさて,そういう「否応なく追いこまれる状況」に巡り逢えるのは,自分の意思だけでどうなるものでもありません。もし自分が飛び込んだ職場が,すごく仕事ができて責任感があって,でも教育に興味がない人がいたら,もうそこであまりやることはない気がします。

とはいえ,だいたい一般的には,仕事ができる人には任せようかと思うものですし,また,仕事ができると思う人は教育してみたくなる,ということも十分ありえるので,せめて任せられた仕事をこなしているうちに少しずつ任せられていく,というケースが多いのが実情なのではないでしょうか。

前回の「トラブルを利用しろ」でも書いたように,人間少しハードルの高い仕事に取り組んでいるときが一番成長するものです。ただ,トラブルのときはやむをえない(背に腹は変えられない)ことでも,通常運用時には「確実にできるだろうと思われる仕事」しか任されないものです。

サーバエンジニアの面接をすると,10年といったオーダーで同じことしかやってきていない人をよく見かけます。こういう状況は,本人にとっても会社にとっても,⁠オーバーではなく)国にとっても良くないことです。いまやネットというのは社会のインフラになろうとしている※2状況においては,そのインフラを安定して運用できる人材というのは宝のようなものです。

※1)
実際には自分の上にもう一人いたけど,その人は部長のご機嫌取り以外の仕事をする余裕がなかった。
※2)
でもまだ社会のインフラにはなっていないと筆者は思っています。

自分一人で解決できること

ちょっと五月雨になってしまったので,ここまでの内容をまとめてみます。

  • ① ネットはインフラになりつつある
  • ② 必要十分なインフラエンジニアがいない
  • ③ インフラエンジニアは「正常にいっていて(つまり成果を出してて)あたりまえ」の世界だ
  • ④ できるかどうかわからない人には,できれば任せたくない
  • ⑤ かといって,自分で経験を積むのはなかなか難しい

①~③はただの状況説明なので,問題は④と⑤ということになります。

それに加えて,なんとなくですが(間違っていたらすみません)⁠インフラエンジニアは自分が運用する環境を他人に任せたくない性質があるような気がします。

まず,簡単な(?)⑤について考えてみましょう。

自分で経験を積むには,自宅のPCにUbuntuでも入れてガリガリさわってみるとか,VPSを借りてガリガリさわってみるとかなどが考えられます。でも,それでできるのは,基礎の習得までです。数学で言えば,代数を身につけるようなものです。

サーバ構築なんて(本来は)できてあたりまえ,コストを抑えてSPOFのない冗長構成を組んだり,コストを抑えて爆裂なパフォーマンスがでるようにしたり,数百数千のサーバを効率よく管理したり,障害を光の速さで解決したりとか,所謂「できる」インフラエンジニアというのはそういうものです。

(あ,サーバの話ばっかりになっている…)

自分でそういった経験を積むには,自分で大ヒットするサービスでも作るしかありませんが,なかなかそうもいかないでしょう。もちろん不可能ではないので,チャレンジする価値はあります。

ところで余談ですが,上記の中で「コストを抑えて」というのは,あっさり書いていますがとても重要です。そりゃあ,高い金はらえば,冗長構成組んだり爆裂パフォーマンスが出るような環境を作るのは容易です。それをコストをかけずにやるのが重要です。

スケールアップかスケールアウトかという話でいえば,スケールアウトのほうが望ましいわけですが,スケールアウトで行っても,同じ100台で倍の速度を出すというのは「腕」になるわけです。大反対したのに数億のサーバを買って,1年くらいで使えなくなったようなケースもありました※3)⁠

また,もう10年以上前になりますが,プロバイダ満足度ランキングというのがあって,一位にはある超有名プロバイダが輝いていました。国内でNTTに対抗する会社になるという高い目標を掲げ,なぜかいまNTTの傘下にいる会社ですが,その当時その会社は超大赤字を毎年叩き出していました。冗談混じりで「あんだけ赤字出していいならそりゃ満足度あげられるわー!!」とちょっと負け惜しみを言ったこともあります。もちろん,お金を使えば誰でも満足度をあげられるというわけでもないので,一位になるのは素晴しいことです。

…ずいぶん余談に熱が入ってしまいました。

※3)
こういう話も面白そうなので,気が向けばそのうち書いてみます。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータセンターである「データホテル」を構築,運営。2003年にベイエリアにおいてVoIPベンチャーであるRedSIP Inc.を創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 ZETA株式会社)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZETA CX」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

blog:http://blog.zaki.jp/
社長コラム:https://zetacx.com/column

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