不定点観測所

第2回COP15 閉幕~同床異夢の環境対策に出口はあるか

まとまらなかったCOP15

2009年12月18日(現地時間⁠⁠、COP15(国連気候変動枠組み条約 第15回締約国会議※注は法的拘束力を持つ宣言を採択できないまま閉会した。⁠コペンハーゲン(デンマーク)での合意を留意する⁠ことは決まって、会議自体の崩壊こそ避けられたものの前途は多難だ。

※注)
COPはConference Of Parties の略で、⁠締約国会議」を意味します。

各国の事情が交錯

京都議定書が採択された1997年と大きく環境が異なるのは中国はじめとした新興国の台頭だ。中国は今や米国を抜いてもっとも多くのCO2を排出している。これで京都議定書のときのような「先進国 vs. 開発途上国」という構図が成り立たなくなった。

先進国が大量の二酸化炭素を排出してきたことが温暖化の原因なのに、なぜこれから発展しようとする国々の行く手を阻むのかと主張する中国と、このままでは温暖化で国が沈んでしまうと訴えるツバル共和国やモルジブとの隔たりは大きい。

京都議定書に参加している日欧の二酸化炭素排出量は全体の3割近くに過ぎず、4割以上を排出する米中、とくに排出量の伸びている中国が排出量削減を約束しないかぎり全体での排出量は増え続ける。いまさら二酸化炭素排出量を削減しても、地球温暖化阻止には間に合わないとの悲観論もある。

盛り上がる環境ビジネス

京都議定書に代わる国際枠組みへ向けた合意が暗礁に乗り上げる一方で、環境ビジネスは盛り上がりをみせる。代替エネルギー、スマートグリッドといったバズワードが新聞紙面に踊り、IT関連でもエコデータセンターへの関心が高まる。日本も新政権が二酸化炭素を1990年比25%減をと勇ましい。とはいえ実利を追う米国と理念先行の日本では大きな温度差がある。

ITを活用しようとする米国

米国では電力自由化の弊害で送電網への設備投資が進まず、停電が頻繁に起こるなど社会問題となっている。構築に10年単位の時間のかかる系統電力ではなくITを活用した最適化を図ろうというのがオバマ大統領の方針だ。データセンターの省電力化も二酸化炭素排出量の削減よりは運用管理の効率された米国の大規模データセンターで電力費用が大きな割合を占めることに対する打開策だ。

具体的な方向性が見えない日本

日本では戦時中から電力事業を規制し、地域独占の9電力体制で系統電力へは継続的に投資されてきた。景気浮揚や温暖化対策の一環で太陽電池や風力発電といった再生可能エネルギーの電力会社に対する買い取り義務が強化される中で、周波数や電圧などの制御が難しくなる「逆調」への対策費用を誰がどう負担すべきか、ITを使ってリアルタイムに検針するスマートメーターが実用化されれば発電量の調整を実現でき、家庭向け電力小売り事業の自由化が実現できるのではないかといった議論もある。

また、90年比25%削減を宣言したものの実現の目処は立たず、外国から排出権を購入することがもっとも廉価ではあるが経済対策には繋がらない。


一口に環境対策と言っても各々のプレーヤーがさまざまな思惑で動いており、背景には複雑な利害関係がある。

達成の難しい目標に奮起して画期的な技術革新が生まれるのか、無理難題を押し付けあう水面下で政治的駆け引きが続くのか、今後の動向が注目される。

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