IPv6対応への道しるべ

第12回 IPv4とIPv6におけるルーティングの違い

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OSPFによるv6運用 3つの形態

─⁠─で,JANOG 29.5と30への発表となったわけですね。その発表の概要を教えてください。

JANOG 30での発表で私が行った運用形態の分類が,次の3種類です。

最初は,デュアルプロセス・シングルトポロジです。これは,OSPF v2とOSPF v3を共存させて同じようなネットワークトポロジで運用するというものです。なお,この「プロセス」というのは,各ルータ内でのルーティングプロセスのことです。

次はシングルプロセス・シングルトポロジです。これは,OSIのIS-ISで作るというようなものです。MPLSで組むのも,この方式になります。MPLSでやる場合には,まずOPSF v2を利用しルーティングテーブルを作成します。その後LDPやRSVPによりラベルアロケーションを行い,IPv4やIPv6を別々のアプリケーションとして扱います。IPv6をMPLSバックボーンに統合する手法としてはIPv6 over MPLSである6PEという技術でつなげることが可能です(参考4)⁠

参考4
RFC4798 Connecting IPv6 Islands over IPv4 MPLS Using IPv6 Provider Edge Routers (6PE)

3つめが,デュアルプロセス・デュアルトポロジです。OSPF v2とOSPF v3で別々のトポロジにすることも可能なので,L3スイッチなどをコアに入れたりしているので,OSPF v3だけ中抜きしてしまってセントライズドトポロジにしてしまうことも可能です。

─⁠─3つのパターンをそれぞれ詳しく教えてください。

まずはデュアルプロセス・シングルトポロジですが,たとえば弊社機器であればIPv4とIPv6両方ともに利用可能なので,IPv4のシングルプロセス・シングルトポロジな環境をデュアルプロセス・シングルトポロジの環境に変更する機器コストはかかりません。問題は,それを実現するための工数です。

私が知る中では,日本ではIIJさんの,デュアルプロセス・シングルトポロジでの運用が凄いです。JANOG 30では,IIJの津辻さんにそこら辺の話を発表していただきました。

図1 デュアルプロセス・シングルトポロジ

図1 デュアルプロセス・シングルトポロジ氏

次にシングルプロセス・シングルトポロジですが,コアはIPv4のままでエッジのみIPv6というものです。たとえば,DMVPN(Dynamic Multipoint VPN)を利用してIPv4 VPNでIPv6を運ぶという手法があります。6rdと組み合わせるというのもあります。

図2 シングルプロセス・シングルトポロジ

図2 シングルプロセス・シングルトポロジ

コアを変更するという方法は,コアをMPLSやIS-ISに変更してしまうというものです。MPLSは6PEを利用すればいいですし,IS-ISはOSIのマルチプロトコル対応ルーティングプロトコルなのでOSPF v2とOSPF v3のように別々のプロセスで運用する必要がありません。

非常に先進的でカッコイイと個人的に思うのが,コアをIPv6のみにしてしまうという方法です。現時点では,エンタープライズでは,ほとんど出会ったことがない手法ですが,コアでOSPF v3のアドレスファミリを規定したRFC5838を行います。

ここで紹介しているデュアルスタック・シングルトポロジの手法は,コアがIPv4,コアがMPLSかIS-IS,コアがIPv6という違いがあります。とはいっても,IPv6だけのネットワークという意味では日本国内でのNGNもありますし,中国のCERNETもあります。そういったところでは,現在IETFで標準化が行われているMAPというのも近い将来の選択肢としてあり得るかも知れないと思います。

JANOG 30では,デュアルスタック・シングルトポロジということで,ソフトバンクテレコムの工藤さんにトンネル活用事例をご紹介いただきました。

─⁠─多少話がズレるのですが,MAPは御社でサポートされますか?

現時点ではありませんが,近いうちに出ます。

─⁠─MAP-E(Encapsulation)ですか?

いいえ。違います。まずは,MAP-T(Translation)です)⁠

─⁠─エンキャプスレーションの方が仕組み的には素直だと思いますが,トランスレーションが先なんですか?

実はそうなんです。日本のベンダだと4rd(Unifiedではない旧4rd)を作成しているのでMAP-Eの方が簡単だと思われますが,弊社はすでにNAT64を実装していたので,MAP-Tの方が簡単です。MAP-Eも当然,今後にはなりますがサポートして行きます。

─⁠─中断してしまってすみません,3つ目のパターンを教えてください。

最後は,デュアルプロセス・デュアルトポロジですが,コアがL3スイッチであることを活かしてIPv4とIPv6で異なるトポロジで構築してしまうというものです。

こういった事例は結構あります。

図3 デュアルプロセス・デュアルトポロジ

図3 デュアルプロセス・デュアルトポロジ

障害の範囲を最小限に抑えるには,こういった形でアドレスファミリ毎にトポロジの形を変えてしまうというのは有効な手段だと思います。アドレスのアサインメント,すなわちアドレス設計を考えると,IPv4ホスト数とIPv6ホスト数が全く違うことが多いので,こういったトポロジを取りたくなりがちです。

─⁠─IPv4しか扱えないような機器が残っているような「歴史的経緯」によって,デュアルプロセス・デュアルトポロジが選択されるというのもありますか?

IPv6もMPLSも扱えないようなノードが残っているという状況は,結構ありそうですね。そういった環境において,早くIPv6化するということを考えると,デュアルプロセス・デュアルトポロジが選択されるかも知れません。

今のところは,できる範囲でやってしまって,将来的に一気にという考え方もあります。たとえば,今できる範囲でIPv6化をやってしまって,最終的には最近流行のバーチャルスイッチなどによる一元管理に移行してしまうという方法もありますね。

※)
2012年12月14日にIOS-XR 4.3.0がリリースされ,MAP-Tがサポートされました。

著者プロフィール

あきみち

「Geekなぺーじ」を運営するブロガー。

慶應義塾大学SFC研究所上席所員。全日本剣道連盟 情報小委員会委員。通信技術,プログラミング,ネットコミュニティ,熱帯魚などに興味を持っている。

近著「インターネットのカタチ - もろさが織り成す粘り強い世界」

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