LinuxCon Japan/ Tokyo 2010の歩き方

第8回 「LinuxCon Japan/ Tokyo 2010」レポート(その2)

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Linuxはコミュニティがポイント。初期から参加しオープンにやり取りする

IBM Open Systems Development Vice-President Daniel Frye氏

IBM Open Systems Development Vice-President Daniel Frye氏

Jim Zemlin氏に「LinuxConに限らず最も人気のあるスピーカ」と紹介されたIBMのDaniel Frye博士は,Open Systems DevelopmentのVice-Presidentであると同時に,Linux Foundationの理事も務めている。Daniel氏は,⁠10+ Years of Linux at IBM」という講演を行った。10年間,IBMがLinuxに取り組んだ上で学んだことを紹介するもので,何百,何千というエコシステムに参加しているIBMほどLinuxで成功したものはないと言われるが,そこで得た教訓を述べた。

1990年代中頃,インターネットが登場し,多くの企業がたとえ非効率であっても導入した。その後,個人レベルでもネットワークを利用するようになり,コミュニティの概念が変わった。以前は独立していたデベロッパがお互いにコミュニケーションを取り協力するようになり,特に日本,インド,米国,ハンガリーにおいて発達していった。この相互接続性がオープンソースのソフトウェアの劇的な増大が始まりであり,テコの支点のように機能した。

開発ツールやライセンスでもコミュニティが中心へと劇的に変化し,真の意味でのイノベーションが起きた。オープンソースコミュニティでは,特定の見方ではなく中立性が大事であるとして,ビジネスを変える原動力,革新する力になるとIBMは確信したという。

1998年9月,IBMは将来の大規模なコンピューティングのプラットフォームになるという位置づけでLinuxを社内で提案し,議論を開始した。企業内にチームを作り,コミュニティには参加しないもののLinuxの勉強を開始した。IBM内でもLinuxを聞いたことがないという人が多かった。何なのか,誰が作って誰が使うのか,誰がコントロールしているのか,正式に討論された。そしてIBM自体が大きく変わった。Linuxは先にお客様が使い始め,IBMも検討しながらついていく感じになった。

1999年3月,何も準備せずにLinux Worldに参加した。しかも,まったく知らないマーケティングの人間が参加したという。しかしそれでいろいろと学ぶことができた。1999年後半には,さらに業界に参入,Linuxコミュニティで開発やパッチなど行うようになり,自社でやっていくことに決定した。

そして,IBMはLinuxテクノロジーセンターを設立した。これはLinuxをより良くしていくことを使命としたもの。いろいろなコミュニティに参加しなければならず,中立の立場は異質だったという。それでも成功しようとしたとDaniel氏は言う。その結果,オープンソースコミュニティはひとつではなく,コミュニティによって様子がだいぶ違うことを学んだ。参加の仕方も異なっていた。さらに,教育面でのオープンソースの素晴らしさを理解した。そしてミスもあったが,RedHatやMozillaの人たちにも受け入れられた。

1999年9月にはストラテジを変更し,より真剣に取り組むことになった。Linuxのマーケットを検討し,ハードウェア,ソフトウェア,サービスにおいてマーケットがあると結論,投資も必要であると認識した。そしてIBMも徐々に信頼を得てきた時期であった。

2000年8月にはお客様も増え,テクノロジーセンターでKernelにも貢献できるようになった。そこでコミュニティに参加し,⁠遅い」と言われながらもコミュニティの複数の部分で貢献できるようになった。そしてIBM全体として競争を促進するいいものであると認識したという。クライアントにとっても有効なものであり,価値をLinuxから得るとして,さらに本格化,加速をした。コントロールはしないが10億ドルの投資を行い,成熟の加速に貢献しようとした。

徐々に組織,ミッションが大きくなり,LinuxはIBMの中でも主要な開発ツールになった。プロダクション,アプライアンス,サーバ,IBM.comに至るまで,クライアントへアウトソースする際にもグローバルの一環としてLinuxに取り組んでいる。

続いてDaniel氏は,この十余年の活動を通して得た教訓を挙げた。まずは「初期から参入すること」⁠そして「コミュニティに参加すること」⁠しかも,グループではなく個人でコミュニティに入っていくことが重要であるとした。その際には,自分のことを充実させることも大事だ。コミュニティのルールを理解した上で,早めに目標を設定し迅速にパッチを投げていく。フィードバックを良く聞くことも忘れてはならないとした。

一番学んだのは「コミュニケーションは必ず外を経由させる」ことだったとDaniel氏は言う。スケーラビリティを高めるためにプロダクトを立ち上げ,メールでやり取りしようとしたが,コミュニティは動かなかった。実際にコミュニティの人と話す機会があったので相談すると,メールもミーティングもコミュニティのやり方に則していないと言われたという。そこでコミュニティ経由でやり取りするようにしたら徐々にスケールアップしていった。

また,コミュニティは「熟成させる」文化である。完成した後でコミュニティに伝えるのではなく,コードに手を加えた時点でコミュニティに持ち込み,反復によりコードを熟成させていく。さらに,コミュニケーションはオープンにする。必要なものすべてに参加する。助けてくれるところはあるので,それを受け入れてより良くしていく。批判から学ぶことも重要であるとした。

今,Linuxはビジネスの鍵となっている。Linuxは数10億ドルの収益をもたらすものであり,世界中のあらゆるところで使われている。IBMでは引き続き投資することでLinuxをグリーンなOSにしようと考えている。まだ使いづらい部分があることも事実だが,より洗練されたデスクトップなど,もっと成熟することで大きく成長できると思う,とLinuxの可能性触れてDaniel氏は講演を締めくくった。

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