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第26回メーラーの変更 : Evolutionの設定, Gmail on Prism, Thunderbird, Sylpheed

現在のPCの利用形態では、メーラー(MUA; Mail User Agent)を使わない人は少ないでしょう。Ubuntuの標準ではEvolutionが導入されていますが、幾つかの理由によって、日本国内で利用するには使い勝手が悪い部分があります。メーラーを変更するレシピをお届けします。

Evolutionの問題点

Evolutionは欧米ではメジャーな実装のひとつで、できるだけMicrosoft Outlookに近い操作性を持つ、優れた統合アプリケーションです。メールのやりとりだけでなく、予定表やタスクの管理といった、PIM(Personal Information Manager)としての機能も搭載されており、さらにMicrosoft Exchangeに対応したクライアントでもあるため、PCをビジネスで利用する人にとっては非常に便利なはずです。

ですが、日本国内では次のような問題点があり、メインのメーラーとして利用するには厳しいものがあります。

特に、送信するメールの文字コードがUTF-8になっているのは、相手がUTF-8を読めない環境の場合、致命的です(現代的なメーラーはほとんどがUTF-8を認識できるはずですが、EmacsベースのMUAを古めのEmacsで使っている場合や、古いメーラーを使っている相手には「ただの文字化けメール」になってしまいます)注1⁠。

Evolutionの設定変更

問題2・3についてはEvolutionのコーディング上の問題であり、もしEvolutionを使うのであれば諦めるしかありません(パッチは存在するので適宜それを当てる、というのも一つの手ではあります⁠⁠。ただし、問題1については、次のように設定することで回避することができます。

設定すべき箇所は2つあります。

まず、Evolutionのメニューから[編集⁠⁠→⁠設定]を選択し、左側ペインにある「メールの設定」を開きます。この設定項目にある、⁠デフォルトの文字エンコード」として、日本語(ISO-2022-JP)を選択します図1⁠。

図1 メールの設定
図1 メールの設定

同様に、左側ペインの「コンポーザの設定」にある、⁠文字集合」にも日本語(ISO-2022-JP)を選択し、OKを押します。この状態であれば新規に作成されるメールの文字コードは暗黙でISO-2022-JPが利用されるようになり、日本国内での一部のメールのやりとりに支障が出ることが減るはずです。

図2 コンポーザの設定
図2 コンポーザの設定

なお、この設定を行っても、メール本文にUTF-8でしか表現できない文字が入力されると、自動的に文字コードがUTF-8に変更されます。なんらかの理由でUTF-8が利用できない(利用すべきでない)場合には注意してください。

WebメールをPrismで使う

さて、ここからはEvolution以外のメーラーに関するレシピです。

複数の環境で同じメーラーを使おうとする場合、選択肢の一つとして、Webメールを利用する手があります。ブラウザさえあればほぼ同じ環境が利用できますし、GmailなどのAJAXをサポートしたサービスであればローカルアプリケーションとそれほど遜色もありません。

こうしたWebメールはブラウザからアクセスしますから、Ubuntu環境であればFirefoxから利用することがほとんどでしょう。もしデスクトップにアイコンとして登録したい場合は、⁠ランチャの生成]から「種類」として『場所』を選び、https://mail.google.com/ などを登録する形になります図3⁠。こうして作成したアイコンをダブルクリックすればFirefoxが起動し、Gmailが開きます(あるいは、すでにFirefoxが起動されていれば、そのままGmailのページが開かれます⁠⁠。

図3 ランチャにGmailを登録
図2 ランチャにGmailを登録

ですが、これではあくまでFirefoxの中で開かれるだけですから、独立したウインドウはありませんし、また、ウィジェットとして利用したい場合には、少々不便です。このような場合はOperaなどの別のブラウザを導入するのも一つの手ですが、Prismというアプリケーションを使うのも一つの手です[2]⁠。

PrismはMozilla Foundationで開発されている、⁠Webアプリケーションをローカルアプリケーションのように起動する」ための仕組みです。内部ではFirefoxと同じGeckoを利用しているため、ブラウザとしての動作そのものはFirefoxと同等です。

次のようにインストールするか、Synapticからprismパッケージを導入してください。

$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install prism

Prismをインストールすると、⁠アプリケーション⁠⁠→⁠インターネット⁠⁠→⁠Prism]から起動することができます。Prismを起動すると、図4のようなダイアログが表示されます。⁠URL」に利用したいサービスのアドレスを、⁠Name」に保存したい名前を入力し、⁠Create Shortcuts」のDesktopを選択して利用します。

図4 Prismの登録画面
図4 Prismの登録画面

例として、Gmailを登録した状態が図5です。ここでは「Show status messages and progress(ステータスメッセージと進捗状態を表示する⁠⁠」を有効にしています。

他の設定、⁠Show location bar(ロケーションバーを表示する⁠⁠Enable navigation keys(ナビゲーションキーを有効にする⁠⁠」は、必要だと思った場合に追加するのが良いでしょう。

図5 Gmailを登録
図5 Gmailを登録

このように設定すると、デスクトップに「Gmail」というアイコンが表示されるはずです。このアイコンをクリックするとPrismが起動し、Gmailのログインページ図6が表示されるはずです。このようにすることでGmailを単体アプリケーションのように利用することができます。

図6 Prismで使うGmail
図6 Prismで使うGmail

Thunderbird

Evolutionを使わず、またWebメールを選択しない場合、最初に上げられる選択肢はThunderbirdとなるでしょう。ThunderbirdはWindows・Mac OS Xを始めとする様々な環境で動作しますし、ユーザーも多いため使いこなしのテクニックが色々なところに掲載されています。

UbuntuでもThunderbirdを利用することができますので、利用を検討してみてはいかがでしょうか。次の手順でインストールできます。Synapticからインストールする場合は、thunderbirdとthunderbird-gnome-supportパッケージを導入してください。

$ sudo apt-get install thunderbird thunderbird-gnome-support

もし日本語表示が行われない場合は、thunderbird-locale-jaパッケージをインストールしてください(通常はこのパッケージは既にインストールされているはずです⁠⁠。

また、Gnome Doを利用している場合は次のパッケージも導入しておくと良いでしょう。このプラグインを追加することにより、Thunderbirdのアドレス帳をGnome Doから検索することができるようになります(Evolutionのアドレス帳も検索できます⁠⁠。

$ sudo apt-get install gnome-do-plugins

Evolutionで予定を管理していた場合は、Sunbirdが代替になります。同名のパッケージを導入してください。

$ sudo apt-get install sunbird

さらに、SunbirdはThunderbird内に組み込んだ状態で動作させることもできます。lightning-extensionパッケージを導入してください。この拡張パッケージを導入すると、Thunderbirdのペインの一部に、Sunbird由来のスケジューラが表示されるようになります図7⁠。予定とToDoをここから管理することができるようになりますので、OutlookやEvolutionのような、PIM的な機能を求める場合はこの方法を用いてください。

$ sudo apt-get install lightning-extension
図7 Lightning Extension
図7 Lightning Extension

また、PGPによる暗号化機能を利用したい場合、Enigmailパッケージを導入することで実現できます。次のコマンドを使うかSynapticからインストールしてください。

$ sudo apt-get install enigmail enigmail-locale-ja

Thunderbirdは[アプリケーション⁠⁠→⁠インターネット⁠⁠→⁠Thunderbird]から起動することができます。初回起動時に図8のようなダイアログが表示されますから、そのまま[OK]を押し、デスクトップ環境の標準メーラーとして登録しておきましょう。この操作により、Firefox上などでメールアドレスをクリックすると、Evolutionの代わりにThunderbirdが起動するようになります。

図8 Thunderbirdを標準メーラーにする
図8 Thunderbirdを標準メーラーにする

Sylpheedの利用

Thunderbird以外の選択肢としては、国産のメーラーであるSylpheedが挙げられるでしょう。以下のコマンドを用いるか、Synapticからインストールしてください。

$ sudo apt-get install sylpheed

Thunderbirdでは起動時に自動的に標準メーラーに登録することができましたが、Sylpheedではそうした動作は行われませんので、手動で[システム⁠⁠→⁠設定⁠⁠→⁠お気に入りのアプリ]から設定を変更する必要があります図9⁠。操作は、当該のダイアログを開いて、メールクライアントとしてSylpheedを選択するだけです。

図9 Sylpheedを標準メーラーにする
図9 Sylpheedを標準メーラーにする

なお、日本国内ではあまり利用されていませんが、Sylpheedには派生ソフトウェアとして、Claws Mailというものも存在します。開発の中心が欧米圏なので英語インターフェースとなりますが、英文メールを主に作成する場合、スペルチェックが内蔵されたこちらを利用するのが便利でしょう。以下のコマンドで導入できます。


$ sudo apt-get install claws-mail 

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