Ubuntu Weekly Recipe

第159回オーディオインターフェイスを使う ― USB/PCIバス/PCI-Expressバス編

日に日に陽が長くなってきて、春もすぐそこですね。著者は日本の割と北の方に住んでいるので、寒さが緩んできて嬉しい限りです。

さて、春になると新しいサウンドデバイスが欲しくなりませんか。というわけで、今回から3回に渡り、オーディオインターフェイスをUbuntuで使う方法をお届けします。Ubuntuで自宅録音をしたい方はもちろんのこと、オーディオインターフェースを再生専用に利用されている方、いわゆる聞き専の方にも参考になるはずです。

オーディオインターフェイスとは

オーディオインターフェイスとは、簡単に言うと外付けのサウンドデバイスのことです。外付けにする利点として、筐体内のノイズの影響を受けずにサウンドデータを扱うことができることや、複数の入出力を接続できるだけのスペースをデバイスに与えることができるといったことが挙げられます。お馴染みUSB接続のものや、Firewire(IEEE1394)接続の高品質なものが現在一般的ですが、PCI/PCI-Expressバス接続のカードどブレークアウトボックスをケーブルで接続したものもあります。マザーボードに標準的に備わっているようなサウンドデバイスとは、入出力数やジャックの形状、対応するサンプリング周波数、サンプルのフォーマット、MIDI入出力ポート、ハードウェア・ミキシング機能、ダイレクトモニタリング機能、コンデンサマイクへのファンタム電源供給、マイクプリアンプ搭載といった点で異なり、音響機材との親和性が高くなるように作られています。

オーディオインターフェイス自体はスピーカーやマイクを備えていないため、別途機材を購入する必要があります。例えば再生に使うのであれば、メインアンプとスピーカーを必要としますし、録音に使うのであればマイクとプリアンプが必要です。

USB/PCIバス/PCI-Expressバス接続のオーディオインターフェイスとALSA

オーディオインターフェイスとは言ってもサウンドデバイスであることには変わりないため、外付けのサウンドデバイスをUSBやPCI/PCI-Expressバスで接続するものであれば、ALSAがドライバとなります。どのような種類のものが使えるかは、ALSAの公式ウェブサイトのALSA SoundCard Matrixで調べることができます。ALSAが対応してさえいれば、ただ接続するだけで利用可能となります[1]⁠。

GNOMEのサウンドの設定アプレットによる設定

サウンドデバイスを接続して電源を入れると、ウィンドウ「サウンドの設定」⁠gnome-volume-control)「ハードウェア」タブに表示されるようになります。

図1 GNOME Volume Controlの「ハードウェア」タブ
図1 GNOME Volume Controlのタブ「ハードウェア」

これは筆者の環境における表示なのですが、マザーボード搭載のサウンドデバイスとCreative社のEMU 0404 USBHercules社のUSBウェブカメラDualpix Exchangeに搭載されているマイクが認識されています。ここでそれぞれのサウンドデバイスに対して「プロファイル」を適切に指定します。この「プロファイル」は、PulseAudioサウンドサーバが持つ、それぞれのデバイスに固有の設定です。

例えば、サウンドデバイスがデジタル出力とアナログ出力のどちらにも対応していて、アナログ出力を利用したい場合、この「プロファイル」「Analog Stereo Output」を選びます。もしここで「Digital Stereo (IEC958) Output」を選択してしまうと、コンピュータからの音声がデジタル出力に回ってしまうこととなり、アナログ出力が得られなくなります。これは出力だけではなく入力も同じで、アナログ入力を選択したい場合は「Analog Stereo Input」を使います。筆者の場合は常にアナログ入出力を利用しているため、プロファイルはアナログの入力/出力である「Analog Stereo Duplex」を指定しています。

「入力」タブや「出力」タブでは、標準の入力/出力に使うサウンドデバイスを指定します。入力と出力に別々のサウンドデバイスを指定しても構いません。例えば筆者所有のUSBウェブカメラにはマイクが搭載されていて、入力はウェブカメラから、出力はUSB接続のオーディオインターフェイスへ、という指定をすることもできますが、スピーカーにモニター出力している場合、スピーカー音声をマイクが拾うことによってハウリングが起こる可能性もあります。

図2 GNOME Volume Controlの「入力」タブ
図2 GNOME Volume Controlの「入力」タブ
図3 GNOME Volume Controlの「出力」タブ
図3 GNOME Volume Controlの「出力」タブ

PulseAudio Volume Controlによる設定

本連載の第137回で紹介したソフト「PulseAudio Volume Control」⁠pavucontrol)と組み合わせることで、標準の入力/出力デバイス設定を無視して、あるアプリケーションの音声はサウンドデバイスAに、別なアプリケーションの音声はサウンドデバイスBに流せます。

このように、PulseAudioは複数のサウンドとデバイスの交通整理を実現しています。こういった機能を「マルチプレクサ」と言います。このALSAとPulseAudioの組み合わせであれば、サウンドデバイスが複数あっても、とっかえひっかえして活用できます。

ALSAツールの利用

特定の高性能サウンドデバイスに向けて、ALSAプロジェクトでは、画面で操作できるツールやコマンドラインで操作できるツールを提供しています。パッケージ「alsa-tools」「alsa-toolg-gui」です。

例えば、RME社のDigi32Digi96向けの「rmedigicontrol⁠⁠、同じくRME社のHammerfall DSPシリーズ向けの「hdspconf」⁠hdspmixer⁠⁠、Creative社のenvy24(ice1712)を使った製品向けの「envy24control⁠⁠、Echo社のGina 3GLayla 3Gなどのサウンドデバイス向けの「echomixer」が提供されています。

RME社のDigi 96/8 Padのrmedigicontrolは以下の図のように表示されます[2]⁠。

図4 rmedigicontrolのウィンドウ
図4 rmedigicontrolのウィンドウ

このツールでは、デジタル入力のコネクタを切り替えたり、クロックソースを内蔵のものからワードクロックに変更したり、モニタリングするトラックを変更したり、アナログ出力のボリューム調整・アッテネーション(減衰)量を調整したりすることができます。これらはいずれも、Ubuntu標準のミキサーにはついていない機能です。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧