Ubuntu Weekly Recipe

第215回 Ubuntuのベータ版をテストする

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3月もなかばを過ぎ,そろそろUbuntu 12.04の最終的な形も見え始めてきたところです。今月末にはベータ2のリリースも控えているので,今回はUbuntuのベータ版を使う上でのポイントを紹介します。

ベータ版を使う前に

ベータ版を使うメリット

Ubuntuはリリースされた後の修正・変更に対して,セキュリティ関連を除いて慎重になる傾向があります。実際のところリリースから1ヶ月程度であれば,リリース後に見つかった不具合の対応も活発に行われることになりますが,対応によって新たな不具合が発生することを防ぐために手続きが厳格になること,まずは開発版での修正を確認できない限りはリリース版には反映されないこと,メインの開発者が次期リリースの開発に軸足を移していくことなどから,開発時の修正に比べるとハードルがあがります。

そこで,開発版の段階で一通り確認して問題点を報告しておいたほうが修正されやすいのです。

Ubuntuのリリーススケジュール

Ubuntuは半年の開発期間を1サイクルとしてスケジュールを立てています。例えば12.04の開発スケジュールを確認すると,4月26日のリリース日に向けて,今週の木曜にはベータ2に向けたフリーズ,来週の木曜の29日にはベータ2のリリースが行われることがわかります。その後は,後述する各種フリーズが行われつつ,最終的なリリースに向けた品質の向上が行われるのです。

図1 4月になると品質向上フェーズに入る

図1 4月になると品質向上フェーズに入る

なお,Ubuntu Japanese Teamが配布している日本語Remixは,本家のリリース後にそのアーカイブデータを元に生成・テストを行うため,リリースまでにさらに日数を要します。

ここ数回の開発サイクルの傾向として,アルファ期間中は各チームの基本的な開発が進み,ベータ1リリース後にその成果物がどんどん取り込まれ,ベータ2あたりである程度完成形としてまとまった上で,リリースに向けてブラッシュアップを行うという形になっています注1)⁠

アルファやベータ1は,毎日のように3桁近くの大量アップデートがあり,予期せぬトラブルに遭遇して頭抱えながら復旧するというサプライズイベントも用意されているため,Ubuntuそのものの開発に携わっている人にとっては,触っているといろんな変化が目に見えて現れて楽しい状態です。

ただそれだけにころころ環境が変わることに対する適応力と広い心が求められます。これがベータ2ぐらいになると,ある程度落ち着いてくるので,じっくりと状況を確認することができます注2)⁠

注1
このあたりの感触については,Ubuntu Weekly Topicsを読むのが良いでしょう。
注2
本当に落ち着いてくるかどうかについても,Ubuntu Weekly Topicsで確認してみてください。

フリーズとは

「フリーズ」は一つの開発サイクルにおいて,各自が勝手に機能追加や削除,修正を行うことで,成果物がしっちゃかめっちゃになってしまわないようにするための,開発者間の決めごとです。例えば以下のようなフリーズが存在します注3。なお,各フリーズの名称の後にある括弧内の日付は12.04の場合です)⁠

Feature Freeze(2月16日)

新機能やAPIの導入に対するフリーズで,2月16日に行われました。この日以降,例えばパッケージのバージョンをあげるときのように新機能の導入が発生するケースにおいては,Feature Freeze Exception(FFe)という手続きを経る必要があります。実際のところこのフリーズ以降も大なり小なり新機能の導入は行われますので,あくまで目安的な位置づけです。

User Interface Freeze(2月23日)

これ以降,標準でインストールされるソフトウェアのユーザーインターフェースは,変更されないことが期待されます。また,変更する場合はドキュメントチームや翻訳チームへの報告が必要です(UIFe)⁠これは,インターフェースの変更にあわせて,ヘルプドキュメントの作成や翻訳も追随する必要があるためです。

Documentation String Freeze(3月22日)

このフリーズによって,ヘルプドキュメントの原文が確定します。これにより翻訳チームは大きな変更の心配をする必要なくヘルプの翻訳に注力できます。

Kernel Freeze(4月5日)

各種ビルドプロセスに使われるカーネルは,他よりも少し早いタイミングで最終的なフリーズが行われます。

Final Freeze(4月12日)

リリースの2週間前になると,CDイメージの品質向上に努めるため,よほど致命的な不具合でない限りはリリース日まで各ソフトウェアのアップデートが停止されます。ただし,翻訳自体は引き続き行えます。

先述したように「フリーズ」はあくまで「目安」であり,フリーズが行われたあとも適切な「例外手続き」を踏めばアップデート可能です。特に今回は5年間のサポートを行うLTSリリースでもあるため,積極的に開発に関わり,FFeやUIFeを行って品質を改善していくことが期待されています。

とはいえいきなり「例外手続き」に手を付けるのはハードルが高いため,Ubuntuの開発にはじめて参加する場合は,上記の目安にしたがってその時その時で「求められていること」を見つけるのが良いでしょう。

注3
今週行われる「ベータフリーズ」「ベータ版をリリースするための一時的なフリーズ」であり,リリースサイクルとの直接な関係はありません。

ベータ版の使用上の注意

ベータ版はあくまで開発途中のバージョンであり,アップデートするといきなり起動しなくなって,場合によっては再インストールしなくてはならない自体になる可能性もないとは言えません。

予備のマシンや仮想環境にインストールする,いきなり起動しなくなったときにもすぐに元に戻せる状態にしておくなどの自衛策を講じておいてください。

特にVirtualBoxなどの仮想マシンは,アップグレード前のスナップショットに差し戻したり,問題が起きる環境を複製して再現性をチェックしたりといった操作を簡単に行えるため開発版を使用する環境としてもおすすめです。

致命的な不具合に関するアナウンスやテスト要請などは,ubuntu-devel-announceメーリングリストに流れますので,こちらを登録しておきましょう。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。

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