Ubuntu Weekly Recipe

第233回Ubuntu App Showdownの応募作品に見る、気になるアプリ(2)

先週に引き続き先月から今月にかけて開催された、Ubuntuにおけるアプリ開発コンテストUbuntu App Showdownのノミネート作品の中で、特におもしろそうなアプリを紹介します。

デスクトップの設定に関するアプリ

Cuttlefish

Cuttlefishは特定のイベントに対して、指定した操作を自動的に行うアプリです。

$ sudo add-apt-repository ppa:noneed4anick/cuttlefish
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install cuttlefish

例えば、指定したSSIDの無線LANに接続した時はプロキシをオンにする、ノートPCのACアダプターを接続したら特定のアプリケーションを起動するというように、何かしらかの「イベント(Stimulus⁠⁠」に対して指定した「アクション(Action⁠⁠」を起こさせることができます。

またイベントとアクションの対応は「Reflex」として複数保存することができ、状況に応じて個々のReflexを有効・無効にして使い分けることも可能です。

図1 Basicタブでイベントを指定し、Reactionタブでアクションを追加する
図1 Basicタブでイベントを指定し、Reactionタブでアクションを追加する

指定できるイベントは次のとおりです。

  • アプリケーションが起動したとき、終了したとき
  • 特定のBluetoothデバイスを接続・切断したとき
  • Bluetoothデバイスがオン・オフされたとき
  • ACアダプターを接続・切断したとき
  • 指定したUSBデバイスを接続・切断したとき
  • 指定したSSIDの無線LANに接続したとき、ネットワークから切断されたとき
  • 画面をロック・アンロックしたとき
図2 イベントはハードウェア関連のイベントが主体になる
図2 イベントはハードウェア関連のイベントが主体になる

また、アクションとして次の項目を指定できます。

  • アプリケーションの起動や終了
  • サウンドボリュームの設定
  • Bluetoothのオンオフ
  • 標準のプリンターの変更
  • 壁紙の変更
  • 待機
  • 無線LANのオンオフ
  • プロキシ設定の変更
  • Pidginのステータス変更
  • 電源状態をハイバネートやサスペンド、再起動、シャットダウンに変更
  • 画面のロック・アンロック
  • Reflexの有効化・無効化
図3 1つのイベントに対して、アクションは複数追加できる
図3 1つのイベントに対して、アクションは複数追加できる

ノートPCをいろいろな環境に持ち運ぶ際、環境に応じて設定を変えたい場合、とても便利なツールとなるでしょう。

MenuLibre

MenuLibreはdesktopファイルの編集ツールです。desktopファイルとは、デスクトップ環境においてアプリケーションを起動するメニューに表示する項目や、実行するコマンド、アイコンなどを指定するファイルであり、アプリケーションごとに/usr/share/applicationsの下に保存されます。

$ sudo add-apt-repository ppa:menulibre-dev/devel
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install menulibre

Unity環境であればDashの検索対象となりますし、XubuntuやLubuntuであればアプリケーションメニューに表示される項目そのものとなります。

MenuLibreはシステムにインストールされたすべてのdesktopファイルを編集し、ユーザー単位のdesktopファイルとしてホームフォルダーの.local/share/applicationsの下に保存できます。

図4 カテゴリーごとに分けられたメニューから編集したいものを選択する
図4 カテゴリーごとに分けられたメニューから編集したいものを選択する

例えば次のような項目を設定できます。

  • メニューのアイコン
  • メニューのタイトル
  • メニュー選択時に実行するコマンド
  • メニューを表示するカテゴリーの変更
  • 起動時にクイックリストに表示する項目の追加や削除
  • メニューに表示するかどうか
図5 アイコンやタイトルはそれ自身をクリックすると編集できる
図5 アイコンやタイトルはそれ自身をクリックすると編集できる

desktopファイルはUnity以外のデスクトップ環境でも使用されているので、アプリケーションメニューを細かくカスタマイズしたい場合は便利に使えるでしょう。

Slidewall

Slidewallはシンプルな壁紙チェンジャーツールです。システム設定の「外観」でもインストール済みの壁紙であれば一定時間ごとに切り替えることができますが、このツールを使えば好きな壁紙を好みのタイミングで切り替えられます。

$ sudo add-apt-repository ppa:fioan89/slidewall
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install slidewall
図6 更新周期や更新時に通知するかといった設定が可能
図6 更新周期や更新時に通知するかといった設定が可能
図7 Load FolderやLoad Imageで画像を追加しておくと順番に壁紙として使われる
図7 Load FolderやLoad Imageで画像を追加しておくと順番に壁紙として使われる

さらにライブ壁紙モードも用意されており、一定時間ごとに地球の昼夜の様子や壁紙サイトから自動で壁紙をダウンロードしてランダムに表示するさせることも可能です。

図8 ライブ壁紙はインターネットからデータを取得して表示する
図8 ライブ壁紙はインターネットからデータを取得して表示する

Variety

VarietyもまたSlidewallと同じ壁紙チェンジャーツールです。

$ sudo add-apt-repository ppa:peterlevi/ppa
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install variety

壁紙のダウンロードURLを自分で指定できること、壁紙に対してImageMagickを使ったエフェクトを追加できるといった点がSlidewallと異なります。

図9 Flickrやその他サービスのURLを細かく指定できる点が特徴
図9 Flickrやその他サービスのURLを細かく指定できる点が特徴

これによりFlickrの特定のユーザーの写真をランダムにダウンロードして壁紙として使用したり、壁紙はすべてグレイスケールで表示させることが可能になっています。

図10 壁紙表示時にエフェクトをかけることもできる
図10 壁紙表示時にエフェクトをかけることもできる

ファイルやデータの管理をするアプリ

ShowMyFaves

ShowMyFavesはローカルにインストールされたすべてのブラウザのブックマークを一元的に管理できるアプリです。

$ sudo add-apt-repository ppa:showmyfavesteam/showmyfaves
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install showmyfaves

ブックマークページのサムネイル表示や、Facebookを使った共有、Ubuntu Oneへのバックアップが行えます。

初回起動時はサムネイルをロードするため、起動するまでに時間がかかることに注意してください。

図11 サムネイルを見ながらブックマークの更新が行える
図11 サムネイルを見ながらブックマークの更新が行える

Unity bookmarks

Unity bookmarksはブックマークのクイックアクセスツールです。

$ sudo add-apt-repository ppa:swink/ppa
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install unity-bookmarks

Unity bookmarksによく使うブックマークを登録し、常時起動するようにしておけば、Launcherのアイコンを右クリックしたときに現れるクイックリストや、インジケーターからそれらのブックマークに素早くアクセスできます。

図12 残念ながら既存のブックマークをインポートはできないので、手で入力する
図12 残念ながら既存のブックマークをインポートはできないので、手で入力する
図13 特によくアクセスするものだけを登録しておくと良い
図13 特によくアクセスするものだけを登録しておくと良い
図14 Launcherのアイコンを右クリックしたり、インジケーターからページにジャンプできる
図14 Launcherのアイコンを右クリックしたり、インジケーターからページにジャンプできる

Lockbox

LockboxはGPGで暗号化されたディスクイメージを作成するツールです。

$ sudo add-apt-repository ppa:fabio-massaioli/lockbox-ppa
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install lockbox

このディスクイメージにファイルを保存しておけば、秘密鍵がある環境でしかディスクイメージのファイルにアクセスできないので、例えばUSBメモリー上に作成したディスクイメージを置いておけば、暗号化機能付きのUSBメモリー代わりに使えます。

イメージの作成にはGPGの鍵が必要になります。まだ鍵を作っていない場合は、⁠Setup Encryption」から「Add Key」を押して作っておくと良いでしょう。さらに「Setup Disk」で暗号化したいディスクイメージを作成します。

図15 Ubuntu標準のバックアップツールに似たシンプルなインターフェース
図15 Ubuntu標準のバックアップツールに似たシンプルなインターフェース

ディスクのロック解除は、インジケーターにある鍵マークのアイコンから「Unlock」を選ぶか、メインウィンドウの「Virtual Disk State」をオンにするだけです。すると自動的にマウントされて、ファイルブラウザーなどからアクセスできるようになります。アンマウントすると、再びロックされます。

Switz

Switz「ちょっとした便利ツール」を集めたアプリです。例えば、時計、システムモニター、メモ帳、TODOリスト、天気予報などを一つのウィンドウにまとめて表示してくれます。

$ sudo add-apt-repository ppa:luciomrx/switzallnew
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install switz
図16 Androidのウィジェットのようなインターフェース
図16 Androidのウィジェットのようなインターフェース
図17 10cm尺の定規なんかもある
図17 10cm尺の定規なんかもある

PPA Software Center

PPA Software CenterはLaunchpad上にあるPPAを検索できるアプリです。Launchpadにある膨大なPPAの中から指定した名前にマッチするパッケージを検索してくれます。

$ sudo add-apt-repository ppa:marcoscarpetta/ppasc
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install ppasc

さらに表示されたパッケージをダブルクリックすると詳細内容が表示され、インストールに必要なadd-apt-repositoryなどのコマンドをクリップボードにコピーできます。

検索に時間がかかるのが難点ですが、パッケージ名は覚えているけど誰のPPAかを忘れた場合に便利でしょう。

図18 検索にはそこそこ時間がかかってしまう
図18 検索にはそこそこ時間がかかってしまう
図19 ⁠Copy to clipboard」を押すとインストールコマンドがコピーされるので端末に張り付けて実行しよう
図19 「Copy to clipboard」を押すとインストールコマンドがコピーされるので端末に張り付けて実行しよう

ゲームや学習ツール

Picsaw

Picsawは好きな画像をジグソーパズル化できるゲームです。

$ sudo add-apt-repository ppa:picsaw-team/ppa
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install picsaw

画像はピクチャフォルダーの中から選択でき、さらに難易度を12、28、60ピースから選択できます。最後にShuffleボタンを押せばゲーム開始です。

図20 ピクチャフォルダーにある画像がリストアップされる
図20 ピクチャフォルダーにある画像がリストアップされる

ピースが少ないこと、背景に縮小された元画像が表示されることから、それほど難易度は高くありません。好きな画像を選択できるので、真っ白な画像を用意してチャンレンジすれば、あっという間に時計の針が進んでいくことでしょう。

図21 完成したら経過時間を表示してくれるのでタイムアタックもできる
図21 完成したら経過時間を表示してくれるのでタイムアタックもできる

PYEnglish

PYEnglishはランダムに表示される単語を使って英作文を作る語学アプリです。主語、述語、時制、疑問形や否定形、目的語が指定されますので、それにあわせた文を作成してください。

$ sudo add-apt-repository ppa:costales/pyenglish
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install pyenglish

正しい文章を入力している間は、入力ボックスの右側に緑のチェックマークが表示されます。最後まで正しく入力できたら、ウィンドウの下部に「Well done」と表示されます。⁠3 Lives」ボタンを押すと、3回まで正解を教えてもらえます。

図22 解答後に再生ボタンを押すと合成音声で読み上げてくれる
図22 解答後に再生ボタンを押すと合成音声で読み上げてくれる

Python Trainer

Python Trainerは次々と出題される問題にPythonスクリプトで回答していく、Pythonの学習ツールです。

$ sudo add-apt-repository ppa:nedimmuminovic/ptrainer
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install pythontrainer

テキスト領域にPythonコードを入力し、Checkボタンを押せば、コードが正しいかどうかを計算します。正解すれば、Nextボタンで次の問題に移動します。

ちなみにインデントは半角空白4つしか受け入れないようです。あと現時点では、一度終了すると最初からやり直しになるので注意してください。

図23 Checkボタンを押すとインタプリターで実行して結果を知らせてくれる
図23 Checkボタンを押すとインタプリターで実行して結果を知らせてくれる

まとめ

2週に渡るアプリの紹介、いかがでしたでしょうか。

今すぐにでも使えるほど完成度が高いもの、面白そうだけどもう少しつくりこみが必要なものなど、さまざまな応募作品が存在しますが、いずれも3週間という応募期間で作られたものばかりです。

つまりLinuxにおけるデスクトップアプリの開発は、それほど難しいものではありません。ぜひ日曜大工のような感覚で、アプリ作りに挑戦していただけたらと思います。

今回紹介したアプリはPPAから導入できますが、今後すべてリポジトリを追加することなくソフトウェアセンターから導入できるように、Application Review Boardと開発者が協力してソフトウェアやパッケージの品質向上を行っています。その成果が公開されたら、Ubuntu Weekly Topicsで案内できればと思いますので、期待してお待ちください。

ちなみに、例えばPYEnglishなど一部のアプリはすでにLaunchpadでも翻訳できるようになっていますので、翻訳に興味のある方は、Launchpadのプロジェクトページも確認してみると良いでしょう。

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