Ubuntu Weekly Recipe

第352回UbuntuとVirtualBox再入門 パート2

UbuntuをVirtualBoxで運用している人も多いのではないでしょうか。と言うわけで、昨今のVirtualBox事情をまとめます。

パート1再読のお願い

この記事は第313回に書いた再入門の続きの記事ですので、まずはこちらをお読みください。

昨今のVirtualBox事情

ホストOSをUbuntuにしてVirtualBoxを使っているぶんにはとくに大きな問題は見受けられないのですが、WindowsやOS Xではそうでもないらしく、メンテナンスリリースのペースが若干上がっています。それだけ聞けば良いことのように思えますが、実際のところはどうなのでしょうか。

筆者がGoogle DriveにまとめているVirtualBoxのリリース日一覧をご覧いただくと、いろいろなことがわかります。

今年はメジャーバージョンアップがなかった

2010年には3.2.0と4.0.0、2011年には4.1.0、2012年には4.2.0、2013年には4.3.0がリリースされています。すなわち1年に1~2回はメジャーバージョンアップ版がリリースされていたわけですが、2014年にはそれがありません。もっとも、Subversionのリポジトリでは開発が進んでいるので[1]⁠、年内にメジャーバージョンアップ版がリリースされる可能性がなくはないのですが。

メンテナンスリリースのペースが若干上がっている

4.3.0から4.3.20のリリースまでは約13ヵ月経過しています。4.2.0から4.2.20までは14ヵ月半、4.1.0から4.1.20までは約13ヵ月なので、リリースのペースはあまり変わらないじゃないかと思われがちですが、4.3.xではRCが2回リリースされているので、リリース回数が増えています。すなわちリリースのペースが上がっている、ということです。

メンテナンスリリース中にもRCがリリースされるようになった

これは4.3シリーズでの初めての取り組みですが、あまりうまく行ってないようです。RCとメンテナンスリリースの間隔が短く、充分にテストが行われたのかよくわかりません。おそらくテスターが少なかったのではないかと思います。4.3.8と4.3.10の間隔が約1ヵ月と短かったことを考えると、RCでのテスト不足と考えて差し支えなさそうです。4.3.14にはアンチウィルスソフトのせいで起動しないゲストがあり、4.3.16で修正されていますが、これは4.3.14RC1で報告されていました。しかし開発側ではそれがアンチウィルスソフトが原因である、ということを把握できませんでした。結局何度か開発版のスナップショットをリリースし、最終的に修正した4.3.16をリリースするまで2ヵ月ほどの時間がかかっています。

Oracleがメジャーリリースしたバージョンは、今でもメンテナンスされている

表には開発元(リリース時の企業)を入れていますが、3.2.0からはOracleになっています。そして、3.2.0以降すべてのバージョンが現在でもメンテナンスされています。これは顧客[2]によるリクエストなのかそうでないのかはよくわかりませんが、ある程度は自動化されているのだとしても5バージョンをメンテナンスするのは結構大変だと思います。

VirtualBoxの開発チームは何人ぐらいなのかはわかりませんが、さほど多くないことは想像に難くありません[3]⁠。ということは、

  • 4.3のコードベースが、なかなか落ち着かない
  • メンテナンスが必要なバージョンが多い

ということで、新規機能の開発に回る人員が足りておらず、メジャーバージョンアップの時期がズルズルと延びている、ということになっているように思います。VirtualBoxの開発はOracle社員しかできないということはなく、MITライセンスにしても良いのであれば、開発に参加することができます[4]⁠。しかし、そういう人はあまり見かけません。また、本稿とも筆者の観測からも大幅にずれているので断言はしませんが、ホストOS(具体的にはWindowsとOS X)もリリース間隔が短くなっており、サポートするのが大変という事情があるのかもしれません。

Ubuntu 14.10とVirtualBox

VirtualBoxのバージョン

Ubuntu 14.10のリポジトリにあるVirtualBoxのバージョンは4.3.18です。4.3.18のリリースが10月12日、14.10のリリースが10月24日であることを考えると、かなり頑張ったことがわかります。ちなみに本記事公開時の最新バージョンは4.3.20であり、筆者のPPAにあるVirtualBoxは4.3.18です(本記事公開時⁠⁠。

isoイメージから起動時、画面が乱れる

VirtualBox 4.3.18のゲストOSとしてUbuntu 14.10をisoイメージから起動した場合、画面が乱れます図1⁠。この場合、一度ホストキー[5]+F1で仮想コンソールを表示し、再びホストキー+F7を押すと、通常の画面が表示されます。

図1 isoイメージから起動すると、このように操作不能な画面が表示されます
図1 isoイメージから起動すると、このように操作不能な画面が表示されます
インストール完了後、再起動すると解像度が小さい

画面が乱れた後、正常な状態にするとインストールそのものはスムーズに行えます。しかし、再起動すると解像度が小さくなってしまいます図2⁠。これはGuest Additionsをインストールすると解消されます。ログインしてインストールするには少々しんどい解像度なので、ここでもホストキー+F1で仮想コンソールに移動し、ユーザー名とパスワードを入力してログインした後図3⁠、次に紹介するいずれかの方法でGuest Additionsをインストールしてください。

図2 こんな解像度では何もできません……
図2 こんな解像度では何もできません……
図3 ホスト+F1キーを押すとこんな仮想コンソールが表示されます
図3 ホスト+F1キーを押すとこんな仮想コンソールが表示されます
1. リポジトリにあるGuest Additionsをインストールする

Guest AdditionsとVirtualBoxのバージョンは合わせたほうが良いため、どの程度オススメなのかは難しいところですが、一番簡単な方法はこれです。次のコマンドを実行してください。

$ sudo apt-get install virtualbox-guest-x11

インストール後、再起動してください。

2. 筆者のPPAにあるGuest Additionsをインストールする

ただし本記事公開時にはまだ提供していません。方法は前述の第313回にある方法の応用です。

$ sudo add-apt-repository ppa:ikuya-fruitsbasket/virtualbox
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install virtualbox-guest-x11

インストール後、再起動してください。

3. Guest AdditionsのCDイメージからインストールする

これが一番ポピュラーな方法です。まずは[デバイス]-[Guest AdditionsのCDイメージを挿入]をクリックし、CDイメージを挿入してください。そして、次のコマンドを実行してください。

$ LANG=en_US.UTF-8
$ sudo apt-get install dkms
$ sudo mount /dev/sr0 /mnt
$ sudo bash /mnt/VBoxLinuxAdditions.run

インストール後、再起動してください。なお、コマンドで再起動する場合は次のとおりです。

$ sudo reboot

3Dアクセラレーションを有効にする場合は、VirtualBoxマネージャーの[設定][ディスプレイ]タブ-[ビデオ]タブの[3Dアクセラレーションを有効化]にチェックを入れるのを忘れないでください図4⁠。

図4 ⁠3Dアクセラレーションを有効化]にチェックを入れます
図4 [3Dアクセラレーションを有効化]にチェックを入れます

オマケ:いにしえのUbuntuをインストールする

VirtualBoxは古いPCのエミュレーションにも対応しています。筆者のVirtualBoxにインストールしてある最も古いゲストOSはDebian GNU/Linux 3.0です。2002年7月19日リリースだそうです。軽く干支が一周していますが、筆者が初めて触ったDebianでもあります。ただし、これは自力でインストールしたものではありません。自力でインストールした最も古いゲストOSは、Red Hat Linux 8.0です。2002年9月30日リリースだそうです。これほど古いOSが動作するのであれば、ここから2年以上新しいUbuntuの最初のバージョンである4.10が動作しない理由はありません。と言うわけで、オマケとして10年前にリリースされたUbuntuをインストールしてみます。

まずはisoイメージの取得ですが、今でもダウンロード可能です。warty-release-install-i386.isoをダウンロードしてください。amd64では正常にインストールできません。

VirtualBoxの設定は、⁠全般][バージョン][Ubuntu (32bit)]にしてください図5⁠。⁠ストレージ][コントローラー:IDE]に作成したHDDイメージをアタッチします図6⁠。デフォルトのSATAだとHDDが認識しません[6]⁠。変更後、起動します。

図5 ⁠バージョン]を必ず[Ubuntu (32bit)]にします
図5 [バージョン]を必ず[Ubuntu (32bit)]にします
図6 HDDイメージ(ここではUbuntuWarty.vid)をIDEに接続します
図6 HDDイメージ(ここではUbuntuWarty.vid)をIDEに接続します

インストーラーが起動したら、指示に従ってインストールしてください。過程の解説は省略します。とくに再起動後は文字化けしているので、作業はなかなかに困難であり、苦戦するかもしれません。

インストールが無事に完了して、ログインしてGuest Additionsをインストールします。まずはホストキー+F1キーで仮想コンソールを表示し、カスタマイズします。/etc/apt/sources.listを編集し、old-releases.ubuntu.comからパッケージをダウンロードするようにします図7⁠。続いて、Guest Additionsに必要なパッケージをインストールします。

$ LANG=C
$ sudo apt-get install gcc linux-headers-`uname -r`

続けてGuest Additionsのインストール……と行きたいところですが、残念ながら4.3.18のGuest Additionsだとインストールに失敗します。4.3.14だと成功するため、該当バージョンのGuest Additionsをダウンロードしてアタッチしてください。続いてインストールします。

$ sudo mount /dev/cdrom /mnt
$ sudo bash /mnt/VBoxLinuxAdditions.run

インストール完了後、再起動します。

4.10のインストールはかなり難しいですが、6.06であればもう少し簡単にできる気がします。

図7 /etc/apt/sources.listはこのように編集します
図7 /etc/apt/sources.listはこのように編集します

おすすめ記事

記事・ニュース一覧