Ubuntu Weekly Recipe

第375回 OpenStack Roadshow Tokyoレポート

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OpenStack Autopilot

ここまで説明したところで,Ubuntuで実現できるOpenStack体験のデモを行いました。

このデモはUbuntu上のChromiumブラウザを使って,CanonicalのAutopilotを実際に操作してみるというものです。Autopilotそのものは,MAASの上に第341回で紹介したUbuntu OpenStack Installerを使って注4⁠,OpenStackとCanonicalが提供する商用のシステム管理ツールであるLandscapeを構築したものです。

注4)
Recipeで紹介してからも,だいぶ機能が拡充されています。現在はLXDの対応を行っているようです。

Intel NUCが10枚入ったThe Orange Boxに,OpenStack Installerを使ってOpenStack環境をゼロから構築し,Compute用にKVMを,ネットワーク構成のためにOpen vSwitch,ストレージ用にSwiftやCephを選択していました。すべてWebブラウザ上の操作だけで設定完了し,セミナーの最後にはOpenStackのDashboardを表示する状態になっていました。

図6 Orange Boxの内部

図6 Orange Boxの内部

図7 Orange Boxの外観

図7 Orange Boxの外観

ちなみにこのAutopilotは現在ベータ版という扱いで,発表時点で数週間以内にGAとなる予定,とのことでした。

さらに将来的な目標として,Landscapeのマネージメントビューの拡張を考えているそうです。今はCPUやメモリのワークロードがリアルタイムに表示されている状態で,ここに障害検知や冗長化の操作を追加することも考えているとのことでした。またハイパーバイザ,ストレージ,ネットワークのそれぞれのコンポーネントについても,選択肢を増やしていくことも述べています。

図8 OpenStack Autopilot Roadmap - Vendors

図8 OpenStack Autopilot Roadmap - Vendors

ここまで説明した段階で,会場から「自動化を進めすぎると,トラブルシュートが難しくなってしまうことはないのか?」という質問がありました。シャトルワース氏曰く,Autopilotを支える技術はすべてオープンソースになっていること,そしてそのレイヤーは注意深く分離していることから,問題の切り分けを行いやすくしてある,とのことです。

また「AutopilotでOpenStackを導入した場合,バージョン間のアップグレード,特にライブアップグレードはできるのか?」という質問もありました。まず,現時点でAutopilotがインストールできるのはJuno/14.04のみということです。今後はJunoからKilo,さらにはLibertyへのアップグレードやOS部分も14.04から16.04へとアップグレードできるようになるとのことでした。ただ,カーネルのアップグレードを行う場合は当然再起動が必要になりますし,OpenStackの場合はバージョン間でコンポーネントの構成が変わることも考えると,移行パスによってはライブマイグレーションは難しくなるかもしれないとも回答していました。

Autopilotを支える技術:MAAS

ここからはAutopilotを支えるオープンソースの技術の説明となりました。

MAAS(Metal as a Service⁠⁠」はマシンのデータベースであり,そのマシンにOSをインストールするためのツールです。興味深いのはここでのOSは,Ubuntuに限ったことではないことです。会場ではシャトルワース氏が実際にOrange Box上の空のノードにWindowsとデスクトップ版のCentOSをインストールしてみせていました注5⁠。

注5)
実際に15分ほどでWindowsがインストールされ,ログイン画面が立ち上がっていました。

MAASはインストールされたOSの設定管理やサービスのインストールなどは行わず,マシンが空いているかどうかと,どのユーザーに割り当てるか,そしてOSをインストールするという限定された役割を担うことで,シンプルさと汎用性を保っています。

図9 MAAS稼働画面

図9 MAAS稼働画面

MAASは大量のハードウェアの管理に向いていると言います。ロンドンやウォールストリートの証券会社でも,Windowsのシンクライアントのデプロイにも採用されていますし,HPのMoonshotや高密度ARMサーバー,新しいPowerプロセッサでも使えること胸をはっていました。

最近ではCanonicalとChefの協力の手始めとして,ChefとMAASを用いたベアメタルサーバーのインストールといった話も出てきています。

さまざまなOSや設定管理ツール,プロビジョニングツールと連携することで,オープンソースでなおかつクロスOS,クロスハードウェアなSoftware Defined Data Centerを実現し,物理層の完全な自動化を実現することがMAASの目標だとシャトルワース氏は語っていました。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。