Ubuntu Weekly Recipe

第452回 Ubuntu 16.10リリース記念オフラインミーティング参加レポート

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セミナー5「人間の歌唱を合成するためのFLOSSプロジェクトがあるっぽい」

Ubuntu Japanese Teamの坂本さんによる,「人間の歌唱を合成するためのFLOSSプロジェクトがあるっぽい」です。坂本さんはUbuntu Japanese Teamのフォーラムでの受け答えやアドミニストレーターを担当しているそうです。また,Linuxのサウンドサブシステムのアップストリームのコミッター,サブシステムを通してカーネルのコミッターをしています。

図21 前回も登壇したときよりも髭が伸びていた,坂本さん

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先日開催されたMini Debian Conferenceで聞いた台湾の歌唱合成プロジェクト「微音梅林(ちおんめいりん⁠⁠」「LINNE」がおもしろそうだったので,今回はその内容を再構成して話しました。なお,今回は個人的な見方であって内容の妥当性は検証されていないとのことでした。

まず,微音梅林のデモを行いました。日本語でそれっぽく歌っていました。この曲はYouTubeで公開されており,微音梅林のサイトからもリンクされています。

図22 微音梅林のデモ

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発表では,UTAUとLINNEプロジェクトを説明しました。現在の微音梅林は音声を作ってからUTAUという歌唱合成ソフトウェアで歌にしていますが,UTAUそのものは開発が終了しているそうです。さらにUTAUは,OSSではないため少し使いづらいという問題もあります。そこでUTAUを再構成してFLOSSにしようというのがLINNEプロジェクトなのだそうです。

図23 LINNEプロジェクト

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発表後に,坂本さんから次の補足説明をいただきました。

現在の微音梅林は,UTAUという歌唱合成ソフトウェア互換フォーマットの発声サンプルデータセットです。歌唱合成を行うにはまず,UTAUが持つ歌唱エディタでデータを作成します。次に,LINNEプロジェクトで開発したソフトウェアに発声サンプルデータと歌唱データを処理させます。すると合成結果として,プレイヤーで再生可能なRiff/Waveフォーマットのファイルが作成されます。

UTAUそのものはすでに開発を終了しているにもかかわらず,LINNEではエディタ機能を依存しているため,LINNEプロジェクトではこのエディタ機能の開発者を必要としています。エディタが完成すると,ほぼUTAU互換のFLOSSソフトウェアが完成します。これがLINNEプロジェクトの当面の目標です。

次に,歌唱合成と関連が深いと思われるText To Speachを説明しました。Text To Speachとは,テキストを与えると人間の発声を合成して読み上げる機能です。電車のアナウンスなどで使われています。フリーなText To Speachソフトウェアには,MBROLAやOpenJtalkがあります。なお,MBROLAについては,坂本さんご自身が過去の連載第250回第251回第426回第427回で取り上げています。

人間の発声のシミュレート方法は,録音したサンプルデータからの合成が主流だそうです。たとえば,製品の歌唱合成ソフトウェアでは,声優さんの声がサンプルデータとしてあらかじめ用意されていますが,フリーなソフトウェアの場合は自らサンプルデータを集める必要があって大変だそうです。

坂本さんの見解では,LINNNEはプロジェクトとしていろいろときびしいのではないかとのことです。ただし,展望がいくつかあって,⁠FLOSSで再リリースすることによりいろんな人が幸せになれるのではないか」⁠AudacityやMuseScoreのように裾野を広げていければ面白いことができるのではないか」⁠機械学習との組み合わせによって,もう少し楽に使えるようにできるかもしれない」と挙げていました。

ライトニングトーク1「LibreOffice Onlineについて」

LibreOffice日本語チームのおがさわらなるひこさんによる「LibreOffice Onlineについて」です。おがさわらさんは,開発中のLibreOffice Onlineのデモを行いました。また,LibreOfficeの次期バージョン5.3を紹介しました。

図24 おがさわらさん

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LibreOffice Onlineは複数の人がネットワーク越しに同じファイルを編集できるオフィスソフトです。ブラウザから実行するオフィスソフトという意味ではGoogle Driveなどに似ています。違いは,Google Driveはフロントエンド側で処理を実行しますが,LibreOffice Onlineではバックエンド(サーバー)が処理を実行して,画面の描画情報をリアルタイムでフロントエンド(ブラウザー)に送信します。そのため,LibreOffice Onlineを使うには広いネットワーク帯域が必要です。そういうこともあって,内部ネットワークで使う用途を想定しているとのことです。そのかわり,サブセットではない通常のLibreOfficeの機能をブラウザーから利用できるようです。

LibreOffice Onlineの正式版は少し前にリリースされた2.0ですが,デモではさらに新しいバージョンの開発版を動かしました。

図25 LibreOffice Onlineのデモ

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LibreOffice Onlineが2.0で改善された内容として,次の事柄を挙げていました。

  • 他の人が編集していてもロックされなくなり,同時編集ができるようになった。
  • 以前はできなかったIMEによる日本語のインライン入力ができるようになった。ただし,入力窓の位置はブラウザの端のほうになる。

また,LibreOfficeの次バージョン5.3が,2017年1月末にリリースされる予定です。おがさわらさんは「まだ翻訳の進捗率が低いので皆さん協力してください」と述べていました。LibreOfficeの翻訳の参加方法については,TDF(The Document Foundation)のWikiページに説明があります。5.3のリリースノートは改定中ですが公開されています。翻訳もあります。

最後に,LibreOffice5.3の新機能や改善点をいくつか紹介しました。

  • 開発版にリボンのようなインターフェースが追加された。
  • レンダリングエンジンを書き直して,異なるプラットフォームの表示内容が近づいた。
  • セーフモードができた。
  • クラッシュレポートが自動送信されるようになった。

なお,5.3では変更が多岐にわたったので,旧バージョンで作成したドキュメントを5.3で開くときは,念のためバックアップを取るか,環境変数で古いエンジンに切り替えることを勧めていました。

著者プロフィール

よこざわかおり

普段はStellariumというプラネタリウムソフトの翻訳に参加している。UbuntuのライトユーザーとしてUbuntu Japanese Teamのイベントにもよく一般参加している。