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第474回 UbuntuとdarktableではじめるRAW現像入門

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ノイズ低減

最近のデジタルカメラは,ISO3200や6400,さらには12800を越えるような高感度撮影が可能になっています。感度を上げると,カメラは内部で電気信号を増幅します。結果として感度を2倍にすると,2倍明るく写真は写ります。言いかえると,光量が半分の条件でも,同じ明るさで写せるということです。さらに言いかえると,同じ条件でISO感度を2倍に上げると,2倍高速なシャッターを切ることができるということです。

ところが,ISO感度は上げればいいというものではありません。居酒屋などの暗い空間でスマホで写真を撮り,写真がザラザラになってしまった経験はありませんか? これは「高感度ノイズ」というもので,ISO感度を上げれば上げるほど出やすくなります。感度は上げすぎると画質が劣化してしまうのです。たとえば三脚を使った風景写真では,シャッタースピードを遅くできるため,感度を上げる必要はありません。こういう場合は画質を優先するため,感度は可能な限り下げるのがセオリーです。しかし被写体が動くような場合はシャッタースピードを落とせないため,感度を上げて光量を稼ぐ必要が出てきます。こうして発生してしまったノイズは,ノイズ低減モジュールで低減できます。

darktableはカメラのモデルごとに固有のノイズプロファイルを持っています※15)⁠このプロファイルを使ってノイズ除去を行うのが「ノイズ低減(プロファイル)⁠モジュールです。RAWデータに記録されたカメラのモデル名とISO感度から最適なプロファイルが自動的に選択されるため,モジュールを有効にするだけで自動的に最適な処理が行われます。⁠適用量」スライダーを動かすことで,ノイズ除去の強さを調整できます。ただし,ノイズ除去とシャープネスはトレードオフの関係にあることは忘れないでください。そもそも本質的に,発生したノイズは除去できません。ノイズ除去とは周囲のピクセルから色を補完して,ノイズを塗り潰しているのです。そのため強くノイズ除去をかけるとディテイールが潰れ,単一色で塗り潰したような,のっぺりとした写真になってしまいます。

※15
/usr/share/darktable/noiseprofiles.jsonがプロファイルです。JSON形式で保存されています。

図22 ノイズ低減(プロファイル)モジュール。プロファイルはEXIF情報から自動的に選択される。

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図23 PENTAX K-1 + Sigma 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE, 焦点距離15mm, 露光時間8秒, 絞りF2.8, ISO3200, 全体的にザラザラとした高感度ノイズが乗っているのがわかる。

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図24 ノイズ除去を強めにかけた状態。夜空のザラザラは消えているが,山肌のディテイールが完全に潰れてしまっている。

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ノイズ低減にはプロファイルの他に,⁠ノイズ低減(バイラテラル)⁠「ノイズ低減(非局所平均)⁠モジュールが存在します。詳しくはマニュアルを参照してください。

写真をエクスポートする

前述の通り,darktableはRAWデータに対する変更差分を保存しています。そのため写真の調整が終わったら,JPEGとしてエクスポートして,画像に書き込む必要があります。これはライトテーブルで行います。

ライトテーブルを開いたら,エクスポートしたい写真を選択してくてださい。次に右側パネルにある「選択画像をエクスポート」を開き,出力先フォルダ(ターゲットストレージ)とオプションを選択し,最後に「エクスポート」をクリックします。エクスポートには,場合によってはかなりの時間がかかります。

もしもWeb用に縮小した画像がほしいのであれば,⁠最大サイズ」を変更してください。エクスポート画像は,ここで設定されたサイズ以下に抑えられます。なおデフォルト値は0で,これはオリジナルのサイズをそのまま利用することを意味しています。

図25 エクスポートパネル。ここでエクスポート先,圧縮率,サイズ等を調整する。

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より新しいカメラに対応するには

RAWデータはカメラの機種ごとに形式が異なります。そのため現像ソフトも,世の中に存在するすべてのカメラに対応しているわけではありません。使いたい現像ソフトが自分の持っているカメラに対応していない場合,色が正しく再現されなかったり,そもそも画像を読み込むことができなかったりします。

次々と登場する新製品に対し,現像ソフト側もバージョンアップで対応しています。これは言いかえると「ソフトがリリースされた後に発売したカメラは,そのソフトでは使えない」ということです。たとえばdarktableの場合,OLYMPUS製の「OM-D E-M1 Mark II」というカメラには,最新の2.2.4で対応していますが,Ubuntu 17.04に含まれているdarktableは2.2.1のため,そのままではRAWデータを読み込めません。

図26 OM-D E-M1 Mark IIのRAWデータ(ORF)をインポートしたところ。不明な形式と言われる。

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図27 無理矢理ダークルームで現像しようとすると,読み込みに失敗する。

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darktableは開発元がPPAで最新のリリースを配布しています。最新リリースなら対応してるのに!といった場合は,こちらを試してみるとよいでしょう。新しくサポートが追加されたカメラや,ノイズプロファイルが追加されたカメラはリリースノートに書かれているため,新しいカメラを購入する時の参考にしてください。

PPAを追加してdarktableをインストールするには,以下のコマンドを実行してください。

$ sudo add-apt-repository ppa:pmjdebruijn/darktable-release
$ sudo apt update
$ sudo apt install darktable

図28 バージョン2.2.4にアップデートした後の状態。ORFファイルも正しく開けるようになった。

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以上がdarktableの基本的な使い方になります。もしRAWで記録できるデジカメを持っているのならば,カメラ任せにせず,自分で写真の現像に挑戦してみてはいかがでしょうか?

ちなみに筆者は昨年からAdobe Creative Cloudのフォトプランに加入して,普段はMacでLightroomとPhotoshopを使っています。

著者プロフィール

水野源(みずのはじめ)

Ubuntu Japanese Teamメンバー。理想のフリーデスクトップ環境を求めて東へ西へ……のはずが,気がついたら北の大地で就職していたインフラ寄りのエンジニア。株式会社インフィニットループ所属。

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