Ubuntu Weekly Recipe

第596回snapパッケージ版Chromiumを使用する

今回はUbuntu 19.10から本格的に使用されるようになったsnapパッケージ版のChromiumについて解説します。

Ubuntu 19.10のChromiumはsnapパッケージ版のみに

Google Chromeのオープンソース版であるChromiumは、Ubuntuではuniverseリポジトリで提供しています。ということはCanonicalによるサポート(アップデート)はなくてもやむを得ないのですが、ユーザー数の多さを鑑みて実際にはCanonicalによってアップデートが行われています。Google Chromeは6週間ごとにメジャーリリースが行われていますが、Chromiumもこれに準じています。

Ubuntuは本記事の掲載時点で16.04 LTS、18.04 LTS、19.04、19.10の4つのバージョンがサポートされています。もちろんChromiumもこの4つのバージョンに提供されています。そして各バージョンごとにそれぞれ複数のアーキテクチャーがあるわけです。

ハイペースでリリースされるChromiumのサポートがどれだけ大変なのかは想像に固くなく、そんな中で出てきたのがChromiumのsnapパッケージでの提供です。たしかにsnapパッケージにするとUbuntuのバージョンによる違いはなくなります。そしてサポートのための手間を劇的に減らせるということです。

Ubuntu 19.10からはDebianパッケージ版のChromiumをインストールしても、自動的にsnapパッケージがインストールされるようになりました。19.04以前でも、snapパッケージ版を使用できます。

ポイントは、次のバージョンである20.04 LTSでも同様の対応となる可能性が極めて高いことです。また18.04 LTSや16.04 LTSでも同様になることがあるかもしれません。いつかはDebianパッケージ版がなくなるかもしれない可能性を鑑みて、今から慣れていくのも一案です。

詳しい情報は英文ですがChromium in Ubuntu – deb to snap transitionをお読みください。

またフォーラムにも情報が集積されています。

Ubuntu 19.10のChromium

前述のとおりDebianパッケージをインストールしてもsnapパッケージがインストールされます。具体的には「Ubuntuソフトウェア」で検索してもSnapパッケージしか出てきておらず図1⁠、端末からsudo apt install chromium-browserを実行するとダミーパッケージがインストールされ、自動的にsnapパッケージがインストールされます図2⁠。Ubuntu 19.04からアップグレードした場合でも、このダミーパッケージに上書きされて先の挙動になる、ということです。

図1 Ubuntuソフトウェアで検索しても「Chromium」が一つしか表示されない。下から2番目に表示されているのは同名のゲーム
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図2 実行したのはaptコマンドだが、installing the chromium snapのとおりsnap版Chromiumもインストールされている
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Ubuntu 18.04 LTSのChromium

snapパッケージ版Chromiumは18.04 LTSでも提供されています。現状ではDebianパッケージ版も提供されているため、Ubuntuソフトウェアには両方とも表示されています図3⁠。同居もできますが紛らわしいのでDebianパッケージ版は削除したほうがいいでしょう図4⁠。どちらがどちらかわからなくなります。

図3 Ubuntuソフトウェアで確認するとChromiumアイコンが2つある
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図4 Chromiumアイコンが2つあって、どちらがどちらかわからない。ちなみに前がsnap版
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使用感

筆者の手元の環境(18.04 LTS)を試しにsnapパッケージ版Chromiumに変更してみました。

以前使用していたことがある場合、自動的に設定ファイルをsnapパッケージに移行する機能があるので、移行自体は楽です。

使用感も今のところあまり大きな問題を見つけていませんが、気になったところがいくつかありました。

まずはBasic認証のユーザー名とパスワードを記憶させているにも関わらず自動入力しませんでした。これは「Ubuntuソフトウェア」「Permissions」を開き、⁠Read, add change or remove saved passwords」「オン」にすると自動入力するようになりました図5⁠。

図5 ⁠Read, add change or remove saved passwords」「オン」にした
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ファイルのダウンロード先がsnapパッケージ向けの設定になっていたため、元のホームフォルダー直下に変更しています図6⁠。またフォントも以前使用していたものとは違っていたため、手動で変更しています。

図6 snap独自のダウンロード先になっていたため、変更した
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Ubuntu(とそのアップストリームであるDebian)では、x-www-browserというコマンドが用意されています。これはAlternativesという仕組みを使い、複数のWebブラウザーからこのコマンドで使用したい(=デフォルトにしたい)ものを選択することができます。

Debianパッケージ版ではChromiumもこのAlternativesのリストに入っていましたが、snapパッケージ版ではなくなってしまいました図7⁠。したがって、もしx-www-browserコマンドでChromiumを指定していた場合は、/snap/bin/chromiumを直接指定したほうがいいでしょう図8⁠。

図7 update-alternativesコマンドを実行してもchromiumがリストにない
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図8 筆者が使用しているSylpheedの設定例
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もしかしたらまだ気づいていない不都合な点があるかもしれません。その場合は随時バグ報告を確認するといいでしょう。

snapパッケージを使用したくない場合

Ubuntuを使用している時点でsnapパッケージから逃れるのはなかなか難しいのですが(フレーバーだとまだ容易ですが⁠⁠、snapパッケージ版Chromiumをどうしても使いたくない場合はGoogle Chromeを使用するというのが一番手っ取り早いでしょう。それも抵抗があるということであれば、DebianのリポジトリにあるChromiumのソースパッケージを自前でビルドするという手も考えられます。もちろんかなり茨の道なので(前述のとおりリリースの頻度が半端ないので)お勧めはしません。

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