Ubuntu Weekly Recipe

第710回Snap版Firefoxを使用しないでやり過ごす

今回は、どうにかしてSnapパッケージ版Firefoxを使用しないで済む方法を紹介します。

Snapパッケージ版Firefox概要

第687回でお知らせしたとおり、Ubuntu 21.10ではSnapパッケージ版Firefoxがデフォルトになり、Debianパッケージ版がオプションとなりました。

今月21日にリリースが予定されているUbuntu 22.04 LTSでは、さらに一歩進んでDebianパッケージでの提供がなくなります。具体的にはChromiumと同じくDebianパッケージ版はSnapパッケージ版のインストーラーになります。正確には、もうすでになっています。

Snapパッケージ版Firefoxは動作におおむね問題なく、問題点もUbuntu 21.10のリリース時点よりは改善が進んでいるものの、まだまだ多数の不具合報告があります。

Ubuntuソフトウェアのように[1]いつも使うわけではないアプリケーションの場合はさしたる問題になりませんが、Webブラウザーのように常用するアプリケーションでは起動が遅い時点でストレスの元です。

なんとかして使わないようにできるのであればこれに越したことはありません。

回避方法を考える

Snapパッケージ版Firefoxを使用しないで済む方法はいくつか考えられます。

まず思いつくのは、⁠Snapパッケージ版と同じく)Mozillaが提供しているFirefoxのバイナリをそのまま使う方法です。以後オフィシャルバイナリ版Firefoxと称します。

FirefoxにはESR(Extended Support Release)という長期サポートリリースもあります。実はPPAでパッケージが公開されているため、これを使用する手もあります。ただし通常リリース(正確にはRapid Release)と比較するとバージョンが低くなるため、プロファイルダウングレードが発生してしまいます。このプロファイルダウングレードはできないようになっているため、すでに使用しているFirefoxを移行することになると話がややこしくなってきます。そのため原則としては新規ユーザー向けとなります。

Firefoxにこだわらないのであれば、Google Chrome、Microsoft Edgeも選択肢に入ってくるでしょう。

というわけで、本記事では4種類の方法を紹介します。

オフィシャルバイナリ版Firefox

オフィシャルバイナリ版Firefoxは、もちろん普通にダウンロードすればいいのですが、起動に必要なデスクトップファイルが用意されないなど若干の不都合があります。今回は次のようなスクリプトを用意したので活用ください。

#!/bin/sh

DLFOLDER=$(mktemp -d)
DLNAME="firefox-latest.tar.bz2"

if [ -d "${HOME}/firefox" ]; then
  echo "${HOME}/firefoxフォルダーが存在しています"
  exit 1
fi

if ! wget -O "${DLFOLDER}/${DLNAME}" "https://download.mozilla.org/?product=firefox-latest&os=linux64&lang=ja"; then
  echo "Firefoxの取得に失敗しました"
  rm -r "${DLFOLDER}"
  exit 1
fi

tar xf "${DLFOLDER}/${DLNAME}" --one-top-level=firefox --directory="${HOME}"

cat << EOF > "${DLFOLDER}/firefox.desktop"
[Desktop Entry]
Version=1.0
Name=Firefox Web Browser
Name[ja]=Firefox ウェブ・ブラウザ
Comment=Browse the World Wide Web
Comment[ja]=ウェブを閲覧します
GenericName=Web Browser
GenericName[ja]=ウェブ・ブラウザ
Keywords=Internet;WWW;Browser;Web;Explorer
Keywords[ja]=Internet;WWW;Web;インターネット;ブラウザ;ウェブ;エクスプローラ
Exec=$HOME/firefox/firefox %u
Terminal=false
X-MultipleArgs=false
Type=Application
Icon=$HOME/firefox/browser/chrome/icons/default/default128.png
Categories=GNOME;GTK;Network;WebBrowser;
MimeType=text/html;text/xml;application/xhtml+xml;application/xml;application/rss+xml;application/rdf+xml;image/gif;image/jpeg;image/png;x-scheme-handler/http;x-scheme-handler/https;video/webm;application/x-xpinstall;
StartupNotify=true
StartupWMClass=firefox
Actions=new-window;new-private-window;

[Desktop Action new-window]
Name=Open a New Window
Name[ja]=新しいウィンドウを開く
Exec=$HOME/firefox/firefox -new-window

[Desktop Action new-private-window]
Name=Open a New Private Window
Name[ja]=新しいプライベートウィンドウを開く
Exec=$HOME/firefox/firefox -private-window
EOF

xdg-desktop-menu install --novendor "${DLFOLDER}/firefox.desktop"

rm -r "${DLFOLDER}"

echo "Firefoxのインストールが完了しました"

このスクリプトを「firefox-downloader.sh」というファイル名で保存し、端末で実行するとセットアップが完了します。

なお、すでにFirefoxを使用していてSnapパッケージ版Firefoxを起動した場合、プロファイルの移行処理が実行されます。その後オフィシャルバイナリ版Firefoxに移行しようとするとややこしくなるため、Snapパッケージ版Firefoxを起動する前に上記スクリプトを実行してください[2]⁠。

もし新規にプロファイルが作成されてしまった場合は、$ ~/firefox/firefox --ProfileManagerを実行し、使用するプロファイルを選択してください。通常上から作成された順番に並んでいます。

Snapパッケージ版Firefoxは不要になるため、削除してください。ただしSnapパッケージの場合はプロファイルも削除してしまうため、必要であれば事前にバックアップを取ってください。

アップデートはWindows版Firefoxと同じくアップデートがある場合起動中にダウンロードされ、再起動すると適用されます図1⁠。

図1 Windows版と同じく、⁠Firefoxについて」を見るとアップデートがあるかわかる
図1

なおAppArmorプロファイルはないため、パッケージ版Firefoxと比較するとセキュリティ的には不利であることはご承知おきください。

Firefox ESR

Firefox ESRは前述のとおりPPAからインストールします。

端末を起動し、次のコマンドを実行してください。

$ sudo add-apt-repository ppa:mozillateam/ppa
$ sudo apt install firefox-esr firefox-esr-locale-ja

第675回で紹介されているようにadd-apt-repositoryコマンドは内部で廃止予定のapt-keyを使用していますが、Ubuntu 22.04 LTSでは従来どおり使用できます。

前述のとおりプロファイルのバージョンには気をつけてください。

Google Chrome

Google Chromeを使用するのもひとつの手です。

Chromiumもありますが、SnapパッケージなのでSnapパッケージ版Firefoxとあまり違いがありません。

Googleアカウントでプロファイルの同期できるので、WindowsやAndroidでGoogle Chromeを使用している場合には合わせると便利でしょう。

インストール方法はGoogle ChromeのWebサイトからDebianパッケージをダウンロードし、インストールしてください。アップデートは通常のパッケージのアップデートとして提供されます。

Microsoft Edge

Ubuntu Weekly Topics 2020年10月30日号で紹介されているように、2021年10月にMicrosoft Edge preview builds for Linuxが提供されました。その約1年後に正式版として提供されています。

こちらはWindowsでMicrosoft Edgeを使用している場合、プロファイルの同期を行うと便利です。

インストール方法とアップデートはGoogle Chromeに準じます。

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