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第737回VirtualBox 7.0の新機能[Windows 11とUbuntu 22.10の自動インストール編]

今回はVirtualBox 7.0の新機能である自動インストール(unattended installation)の現状を紹介します。

VirtualBox 7.0概要

VirtualBox 7.0は10月10日(現地時間)にリリースされたVirtualBoxのメジャーバージョンアップ版です。現在の最新バージョンは、10月20日(現地時間)にリリースされた7.0.2です。

VirtualBox 7.0の新機能としてメリットが大きいのは、ゲストOSとしてWindows 11をサポートしたことでしょう。今更述べるまでもありませんが、Windows 11はTPMサポートと(U)EFIブートが必須です。VirtualBox 7.0はTPMをソフトウェア的に実装し、さらにセキュアブートにも対応しました。それをもってWindows 11のサポートしたといえます。

また自動インストール(unattended installation)にも対応しました。正確には以前より対応していましたが、コマンドラインベースであってGUIでは対応していないという状況でした。そして7.0からはGUIでも使用できるように実装されました。

というわけで今回は自動インストール機能でWindows 11とUbuntuをゲストOSとして使用する際のポイントを紹介していきます。

注意点

VirtualBox 7.0はまだリリースされたばかりのソフトウェアであり、多数の不具合を含んでいることが予想されます。現在6.1以前を本格的に利用している場合は、上書きインストールせずに別のPCを用意し、試してみることを強くおすすめします。

換言すると、本記事は現在使用しているVirtualBox 6.1以前をアップデートすることを推奨するものではありません。アップデートを行う場合は本記事の公開後、少なくとも3か月以上経ってから行うことをおすすめします。本記事を読めば、現段階でも多数の不具合があることがわかります。

検証環境

本記事はUbuntu 22.04 LTSにOracleがリリースしているVirtualBox 7.0.2のパッケージをインストールして検証しています。少なくとも7.0.2の時点では22.10用のパッケージはリリースされていませんが、22.04 LTS用をインストールして使用できたことを報告します。

VirtualBoxパッケージをインストールする前に端末から「dkms」パッケージをインストールしてください。またパッケージインストール後に「vboxusers」グループに現在使用しているユーザーを追加しておくといいでしょう。例えば次のコマンドを実行してください。

$ sudo usermod -a -G vboxusers $USER

インストール完了後は再起動することをすすめします。

Windows 11をゲストOSとしてインストール

Windows 11の問題点とはいいすぎですが、最近のWindows 11は(実は10も同様です)インストール時にユーザー名とパスワードを使用したローカルアカウントが作成できなくなっています図1⁠。

図1 ここで作成できるのはMicrosoftアカウントであってローカルアカウントではない
図1

たしかにセキュリティ的にはローカルアカウントはないほうがいいに越したことはないのですが、少なくとも仮想マシンのゲストOSで使用する場合はローカルアカウントであっても特に問題ないでしょう。

VirtualBox 7.0の自動インストールを使用すると、ローカルアカウントが作成できるため、これは大きなメリットです。逆にいえば、自動インストールを使用しないとローカルアカウントが作成できません。

というわけで、Windows 11は自動インストール機能を使用してインストールします。

事前にWindows 11のインストールイメージをWindows 11 ディスク イメージ (ISO) をダウンロードするから取得してください。

新規に仮想マシンを追加する方法はこれまでと同じで、VirtualBoxマネージャーにある「新規」をクリックしてウィザードを起動します図2⁠。

図2 起動直後のVirtualBox 7.0
図2

まず「Virtual machine Name and Operating System」⁠仮想マシンの名前とOS)が表示されます図3⁠。⁠名前」⁠ISO Image」⁠Edition」を指定します。⁠Skip Unattended installation」⁠自動インストールをスキップ)にチェックを入れると、自動インストールを行いません。よってここではチェックを入れず「次へ」をクリックします。

図3 「Virtual machine Name and Operating System」の設定例
図3

続けて「Unattended Guest OS Install Setup」⁠ゲストOSの自動インストールのセットアップ)が表示されます図4⁠。⁠Username」⁠ユーザー名⁠⁠、⁠Password」⁠パスワード⁠⁠、⁠Repeat Password」⁠パスワードの再入力)を入力してください。また「Hostname」⁠ホスト名)が無効になっている場合は、有効なものに書き換えてください。⁠Domain Name」⁠ドメイン名)は、ローカルインストールではあまり重要ではないのでデフォルトのままでもいいでしょう。

「Guest Additions」にチェックを入れるのを忘れないでください。

「Product Key」⁠プロダクトキー)も入力できますが、インストール後の入力もできるので後回しにしてもいいでしょう。

「Install in Background」⁠バックグラウンドでインストール)にはチェックを入れず、⁠次へ」をクリックします。どうしてチェックを入れないかは後でわかります。

図4 「Unattended Guest OS Install Setup」の設定例
図4

「Hardware」⁠ハードウェア)からは、今まで見たことがあるものになるでしょう図5⁠。⁠メインメモリー」は8GB以上がおすすめです。⁠Processors(プロセッサー数⁠⁠」は使用しているCPUのスレッド数に応じて決定してください。⁠Enable EFI (Special OSes only)」⁠EFIを有効化(一部のOSのみ⁠⁠)はデフォルトでチェックが入っていますが、外さないようにしてください。Windows 11をインストールするには必須です。設定が完了したら「次へ」をクリックしてください。

図5 「Hardware」の設定例
図5

「Virtual Hard disk」⁠仮想ハードディスク)はストレージの設定をします図6⁠。今回は新規に仮想ハードディスクを作成します。Windowsをインストールして使用するのであれば、デフォルトの80GBは少し少ないので「100GB」としていますが、可能であればもっと多いほうがいいでしょう。

「Pre-allocate Full Size」⁠全サイズの事前割当て)にチェックを入れると指定したサイズ(今回の例だと100GB)の仮想ハードディスクを作成してしまいます。チェックを入れなければ必要な分だけ仮想ハードディスクのサイズが大きくなっていくため、ある程度は大きめに設定しておいたほうが安心です。

設定が完了したら「次へ」をクリックしてください。

図6 「Virtual Hard disk」の設定例
図6

「概要」で設定内容が表示されます図7⁠。設定に問題がなければ「完了」をクリックし、インストールを行ってください。

図7 「概要」
図7

これで放っておけばインストールが完了するといいのですが、残念ながらそうはなりません。⁠Press any key to boot from CD or DVD.」が表示されている間に何らかのキーを押す必要があります図8⁠。これを行わないとインストールに失敗します図9⁠。その場合は再起動すればまたやり直せます。

図8 この画面のうちに何らかのキーを押す
図8
図9 失敗するとこうなるので再起動する
図9

インストールが開始してしまえば、あとは待っているとログオンまで行われます図10⁠。パスワードを指定したにもかかわらず自動的にログオンするような設定になっているようです。

図10 Windows 11のインストールが完了すると自動的に起動する
図10

筆者が試したところでは、⁠設定⁠⁠-⁠ディスプレイ」「3Dアクセラレーションを有効化」にチェックを入れたほうが安定して動作していました図11⁠。動きにおかしさを感じたら、この設定を変更してみるといいかもしれません。ただし表示がおかしくなるとこもあり、一長一短です。

図11 「3Dアクセラレーションを有効化」にチェックを入れるとメリットもあるしデメリットもある
図11

Ubuntu 22.10をゲストOSとしてインストール

Windows 11は自動インストールを使用したほうがよかったのですが、Ubuntu 22.10(またはそれ以前)は逆に使用しないほうがいいです。

今のところ次のような問題を見つけています。

  1. EFIを有効にすると自動インストールに確実に失敗する
  2. EFIを有効にしないと(すなわちレガシーブートでは)自動インストールは実行されるものの、管理者権限を持ったユーザーが作成されない
  3. 言語の選択ができないので、英語でインストールされる。手動で日本語に切り替える必要がある

3はVMware Workstationでも同様なので、おそらく修正されることはないでしょう。

1と2は困ったもので、現時点では自動インストールを使用すべきではない(事実上できない)ことになります。

図12図13図14が手動インストールの設定例です。VirtualBox 6.1以前とおおむね同じです。あくまで設定例なので、お使いのPCのスペックに合わせて適宜変更してください。

図12 「Virtual machine Name and Operating System」の設定例
図12
図13 「Hardware」の設定例
図13
図14 「Virtual Hard disk」の設定例
図14

ではUbuntuをゲストOSとして使用するのであればVirtualBox 7.0を使用する意味はないのかと言われるとそうでもありません。Guest AdditionsをインストールするとこれまではXセッションだけでできた「表示⁠⁠-⁠仮想スクリーン1」での解像度変更が、デフォルトセッション(すなわちWaylandセッション)でもできるようになりました。

Changelogを読むと「Guest Control: Implemented initial support for automatic updating of Guest Additions for Linux guests」という一文があります。これの詳細はよくわかりませんでした。どうもWindowsでは同様の機能がすでに実装されているようですが、有効にする方法のドキュメントは見つかりませんでした。もちろん読み落としている可能性は充分にあります。

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