吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
山風が吹きおろしてくると、たちまち秋の草や木が萎れてしまうので、きっと山風のことを「嵐(荒らし)」いうのだろう。
逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
あなたと会うことが一度もなかったのならば、むしろあなたのつれなさも、わたしの身の不幸も、こんなに恨むことはなかったでしょうに。(あなたに会ってしまったばっかりに、この苦しみは深まるばかりです)
風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける
風がそよそよと楢(なら)の葉を吹きわたるこの奈良(なら)の小川の夕方は、(もうすっかりと秋のような気配だが)川辺の禊祓(みそぎはらい)を見ると、まだ夏であるのだなぁ。