tanQブックスシリーズサイコバブル社会
―膨張し融解する心の病―

[表紙]サイコバブル社会 ―膨張し融解する心の病―

四六判/248ページ

定価(本体1,480円+税)

ISBN 978-4-7741-4273-9

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書籍の概要

この本の概要

今,精神病については数々の情報が公開されています。これにより患者への理解や対応が深まっている一方で,何にでも病名がついたり,あるいは素人が思い込みで勝手に病名をつけようとしたりする傾向にあります。落ち込みと鬱,個性と発達障害の境目はどこなのか? 病名で分類されるということは果たして良いことなのか? 氾濫(バブル化)する精神病情報を正しく読み解くための1冊。

うつ病/アスペルガー障害/アルコール依存症/PTSD/診断したがる人,診断されたがる人/氾濫する情報と付き合うために/サイコバブル

こんな方におすすめ

  • 精神医学に興味のある方
  • 医療問題に興味のある方

著者の一言

まず、事実から。

  • (1)心の病についての情報は,かつてないほどの勢いで広まっています。
  • (2)気分障害(うつ病など)患者数は,この10年間で2倍以上に増え,100万人以上になっています。
  • (3)メンタルクリニックの数は,この10年間で約2倍です。
  • (4)抗うつ薬売り上げは,この10年間で約5倍,1000億円市場になっています。
  • (5)ハラスメント,虐待は,かつてないほど問題視されています。
  • (6)ストレスは,かつてないほど問題視されています。

どれも,心の病に関する事実です。

けれども,では,(1)~(6)のうち,どれが原因で,どれが結果でしょうか。

たとえば(2)の患者数と(4)の抗うつ薬売り上げ高との関係は? 患者数の増加が原因で,その治療のために抗うつ薬が使われたのでしょうか。だとすれば(2)が原因で(4)が結果です。でももしかしたら,逆に(4)が原因で(2)が結果ではないでしょうか。つまり,膨れ上がった抗うつ薬市場の維持のために,うつ病の診断が乱発されているのでは?

(2)の患者数と(3)のメンタルクリニック数の関係についてはどうでしょうか。これも(3)が原因で(2)が結果ということはないでしょうか。つまり,急増したメンタルクリニックの維持のために,心の病の診断が乱発されているのでは?

(5)のハラスメントや虐待,そして(6)のストレスは,本当に増えたのでしょうか。増えたのは実数ではなく,情報だけではないでしょうか。

すると(1)の「心の病についての情報」が,(2)(3)(4)(5)(6)のすべての原因?

もちろん心の病についての情報が広がることによる恩恵ははかり知れないものがあります。その結果,多くの人々が早い段階で精神科を受診して適切な治療を受けることが出来るようになっています。

しかし他方,病気でないのに精神科を受診し,「病名を欲しがる人」がじりじりと増えていることも否めません。また,そうした人々に対し,精神科医はすぐに病名をつけすぎるという批判も水面下に生まれています。いや,すでに水面に浮上しているといえるかもしれません。

心の病の人々を救うための情報の広がり。それによる恩恵を光とすれば,光には必ず陰を伴います。陰がこのまま拡大すれば,本当に必要な人に医療が届かなくなる。それを危惧して私はこの本を著しました。

目次

第一章 うつ病

  • 光の中に出たうつ病
  • うつ病とは何か
  • うつ病? ただの気分の落ち込み?
  • スローパニックの本当の被害者
  • バブル化するうつ病

第二章 アスペルガー障害

  • 光の中に出てきたもうひとつの病
  • 発達障害とは何か
  • アスペルガー障害
  • 大人になったアスペルガー障害
  • 困惑する周囲
  • 大人になったアスペルガーの人のために
  • レッテルへの怒り
  • 障害個性論
  • アスペルガー障害の診断にメリットがあるか?
  • 社会脳の障害
  • 正確な診断は誰のため?

第三章 アルコール依存症

  • 酔っ払い天国の崩壊
  • アルコール依存症とは何か
  • 飲酒運転者の中のアルコール依存症
  • アルコール依存症は回復する
  • 病気の理解は風見鶏的理解か
  • 大人のための診断は正論か

第四章 PTSD

  • バブルへのブレーキがない病
  • PTSDとは何か
  • 法廷でのPTSD
  • PTSDの自己責任
  • 精神医学への判決

第五章 サイコバブルとサイコバブル

  • それは,BUBBLE
  • いま,アブノーマライゼーション
  • そして,ネオ反精神医学
  • すべては,BABBLE

著者プロフィール

林公一(はやしきみかず)

精神科医。医学博士。月のアクセス数がゆうに150万を超える「Dr林のこころと脳の相談室」を1997年から運営中。このサイトの中心である「精神科Q&A」は,読者からの質問に林医師が事実を回答するもので,明るい事実・暗い事実・希望を持てる事実・希望を持てない事実を問わず,直截に回答している。なお,サイトがクリニックの宣伝の要素を持つことを避けるため,実際の診療場所などは一切公開していない。著書は『擬態うつ病』(宝島社新書),『統合失調症 患者・家族を支えた実例集』(保健同人社)など多数。