知りたい!サイエンスシリーズ極限環境の生き物たち
―なぜそこに棲んでいるのか―

[表紙]極限環境の生き物たち―なぜそこに棲んでいるのか―

四六判/256ページ

定価(本体1,580円+税)

ISBN 978-4-7741-5030-7

電子版

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書籍の概要

この本の概要

煮えたぎる源泉,極寒の土地,1千気圧の世界,放射線が飛び交う冷却水。

地球の平均的な環境とは大きく異なる場所,それが極限環境。

これほど過酷な環境の中でも平然と生きる生命がいる。

彼らは,どうしてそんなに強いのだろうか?

極限環境生物の秘密を軸に繰り広げられる,生命と科学の不思議な世界。

身近な場所から地球外生命体まで,ロマンあふれる1冊!

こんな方におすすめ

  • 生命や科学に興味のある方
  • 地球外生命に思いをはせたい方
  • 「極限環境」「極限環境生物」という単語にロマンを感じる方

目次

第1章 極限環境生物の研究はなぜ重要なのか

1-1 極限環境生物とは何だろう?

  • そんな過酷な場所にも生物が!?

1-2 好奇心。極限環境生物の研究はここから始まる

  • 極限環境生物を研究する本当の理由
  • 研究は純粋に。でも社会貢献も忘れずに……

1-3 限界が分かれば本質が分かる

  • 生物界という“森”の様子を知る二つの道
  • 森のなかだけ見ていると……
  • 極限環境生物から宇宙が見える
  • 極限環境生物の特殊な成分

1-4 生命は進化の産物

  • 進化の道筋を遡っていくと
  • すべての生物は,極限環境生物から始まる

1-5 極限環境生物が生み出すテクノロジー

  • 使える! 極限環境生物の酵素
  • 環境保全に役立つ極限環境生物

ExtremeなColumn① 極限環境生物の呼び方

第2章 微生物学の始まり

2-1 微生物と天体学の切っても切れない関係

  • 微生物と顕微鏡
  • オランダのメガネ職人たちが生み出した器具
  • リッペルハイの,何といえない行動力
  • 顕微鏡の発展,しかし微生物は……

2-2 微生物の発見

  • 細胞の発見
  • 微生物の発見

2-3 微生物学の始まり

  • 光学顕微鏡の完成
  • 微生物学の夜明け

2-4 極限環境微生物の発見

  • 意外と早い発見
  • 結核菌やコレラ菌よりも早く

Extreme な Column② 進化論の“微妙”な歴史

第3章 微生物の基礎知識

3-1 肉眼では見えない生物

  • 微生物とは?

3-2 微生物の細胞とは?

  • 生物の細胞は二つに分類

3-3 微生物と三つの領域

  • 分子分類学の発展
  • 三つの領域にまたがる微生物

3-4 細菌の性質を知ろう

  • 細菌の形による分類
  • 細胞壁による分類
  • 栄養要求性による分類
  • 呼吸による分類

Extreme な Column③ 微生物の美しい姿

第4章 極限環境の生物① 好熱菌

4-1 高熱という極限環境で生きる

  • 好熱菌って何?
  • 堆肥から温泉へ

4-2 中等度好熱菌

  • 納豆菌とよく似ているゲオバチラス・ステアロテルモフィルス
  • 酸素が苦手な中等度好熱菌
  • 恐ろしい? 役に立つ? クロストリジウム属

4-3 高度好熱菌

  • 高度好熱菌が拓いた遺伝子増幅法
  • どこにでもいるテルムス・テルモフィルスの謎

4-4 超好熱菌

  • 水温が100℃を超えても沸騰しない場所
  • 解析される好熱菌たちのゲノム

4-5 好熱菌はなぜゆだらないのか?

  • 好熱菌のゆだらない酵素
  • 酵素がゆだらない理由

4-6 好熱菌の核酸はなぜ安定しているのか?

  • 熱に弱い核酸
  • 核酸がゆだらない理由
  • tRNAに見る耐性獲得の基本

4-7 好熱菌の細胞膜が強い理由

  • 細胞膜を強くする三つの方法
  • 三つの組み合わせで,より強靱に

4-8 250℃で増殖した好熱菌?――実験科学の難しさ

  • 250℃!?
  • 実験科学者に間違いは許されないのか
  • 実験科学の難しさ。正しいからといって,正しいわけではない……

4-9 高度好熱菌をモデル生物に

  • モデル生物で原則を導き出す
  • ゲノム時代のモデル生物「好熱菌」
  • ミニマム生物を作ってみよう!

第5章 極限環境の生物② 好熱菌以外の生き物たち

5-1 好塩菌① 高塩濃度という極限環境で生きる微生物

  • 塩が好きな細菌
  • 塩分に強い理由
  • 酵素やタンパク質もv好塩性
  • ヘンな形の高度好塩菌
  • “好き”ではなく“耐える”
  • どこかにいるかもしれない細菌

5-2 好塩菌② 好塩菌の“目”

  • シリコンバレー
  • 好塩菌を研究する医学部の先生
  • 高度好塩菌にある“目”
  • 高度好塩菌から目の研究へ

5-3 好塩菌③ 好塩菌は“目”の起原?

  • 第一のロドプシン様タンパク質「バクテリオ・ロドプシン」
  • 第二のロドプシン様タンパク質「ハロ・ロドプシン」
  • 第三のロドプシン様タンパク質「センサリー・ロドプシン」

5-4 好塩性のエビ――アルテミア

5-5 好酸菌,好アルカリ菌  酸,アルカリのなかに棲む微生物

  • 周囲にあるイオンの種類
  • 周囲に合わせるのか,周囲に耐えるのか
  • 好酸菌,好アルカリ菌の特徴
  • 食べなくても生きていけるスルフォロバス属
  • 東工大のトコダイイ

5-6 絶対嫌気性菌 嫌気性は極限環境生物なのか!?

  • 酸素は有害
  • 好気性=真の極限環境生物

5-7 好冷性の細菌と動物 寒いところが好きな生物

  • 0℃以下になったらどうする?

5-8 好圧菌 高い圧力環境で生きる生物

  • 想像を絶する圧力の世界
  • 高圧下でないと増殖できない菌
  • 普通の菌もけっこう強い!

5-9 放射線耐性菌 放射線量の高い環境で生きる生物

  • 放射線耐性菌と高度好熱菌の不思議な関係
  • 放射線に耐えるには理由がある

5-10 生命の生存限界

  • 宇宙生命が存在する条件

第6章 極限環境生物と宇宙の生命

6-1 宇宙生物学と極限環境生物

  • 火星の環境を考えてみると

6-2 宇宙の環境は生命にどれほど過酷なのか?

  • 広範囲に及ぶ太陽の重力
  • 微少重力が及ぼす動植物への影響
  • 微生物にも微少重力の影響はあるのか?
  • 重力以外の影響

6-3 水が生命にとって重要な理由

  • 水の不思議さ=生命の源?

6-4 ハビタブルゾーンって何だろう?

  • 恒星と惑星の距離には秘密がある
  • ハビタブルゾーンの惑星――太陽系は特別な存在なのか?
  • ハビタブルゾーンの惑星を発見!?

6-5 ヒ素生物は存在するのか?

  • えぇ,こんな生物が本当にいるの?
  • ヒ素とリンは確かに似ている。しかし……

6-6 宇宙環境に耐えたクマムシ

  • 地表は保護されている。しかし……
  • 数少ない極限環境動物――クマムシ

ExtremeなColumn④ レーベンフックの肖像画?

第7章 ヒトと地球を支える極限環境生物

7-1 ヒトと極限環境生物① 極限環境微生物が作る発酵食品

  • 発酵って何?
  • 極限環境生物の発酵食品

7-2 ヒトと極限環境生物② 好アルカリ菌の利用

  • 好アルカリ菌を利用した染め物
  • 汚れを落とす好アルカリ菌の酵素

7-3 ヒトと極限環境生物③ 好冷菌の利用

  • 魚に含まれる「EPA」の正体
  • 低温輸送中に働いてもらおう

7-4 ヒトと極限環境生物④ 好熱菌の利用① さまざまな分野で活躍する熱耐性の酵素

7-5 ヒトと極限環境生物⑤ 好熱菌の利用② PCR法を確立させた熱耐性の酵素

  • DNAを人工的に増やす
  • 加熱してDNAポリメラーゼ,加熱してDNAポリメラーゼ……
  • PCR法の発見
  • 脚光を浴びる好熱菌

7-6 ヒトと極限環境生物⑥ 好熱菌の利用③ 微生物の有名人? テルムス・テルモフィルス

  • 好熱菌界の人気者
  • マンガに登場!
  • コスメティックに登場!

7-7 地球と極限環境生物① 元素循環に貢献する極限環境生物

  • 元素循環と生命
  • 元素循環における植物,ヒト,微生物
  • メタンガスとメタン細菌
  • 窒素固定を行う極限環境生物

7-8 地球と極限環境生物② 毒物を取り除く極限環境生物

  • 毒物を食べてもらって環境浄化
  • 最後の一言

ExtremeなColumn⑤ 歴史を見つめるDNA鑑定

著者プロフィール

大島泰郎(おおしまたいろう)

1935年東京生れ。現在は共和化工株式会社 環境微生物学研究所長,東京工業大学名誉教授,東京薬科大学名誉教授。理学博士。

1958年東京大学理学部化学科卒,1963年東京大学大学院生物化学専攻博士課程終了。東京大学助手,米国NASA博士研究員,アインシュタイン医科大学(ニューヨーク)博士研究員,三菱化成生命科学研究所主任研究員を経て,1983年より東京工業大学教授,のち生命理工学部長などを併任し,1995年定年退官。1995年4月東京薬科大学教授,翌年より生命科学部長。平成17年3月再び定年退職,4月より現職。好熱菌,好熱性古細菌を利用したタンパク質工学,進化生化学の研究を行っている。

趣味は? と聞かれると「地球外文明探査」と答えて煙に巻いているが,実は何もしていない。どうせ簡単には見つからないから。今の楽しみは,初心に立ち戻って自分の手で新たな好熱菌を探していること。