知りたい!サイエンスシリーズ生と死を握るミトコンドリアの謎
--健康と長寿を支配するミクロな器官--

[表紙]生と死を握るミトコンドリアの謎 --健康と長寿を支配するミクロな器官--

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四六判/256ページ

定価1,738円(本体1,580円+税10%)

ISBN 978-4-7741-5237-0

電子版

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書籍の概要

この本の概要

人間の細胞にはミトコンドリアという小さな器官があります。これは生きていくうえで欠かせない,酸素を燃やしてエネルギーを作り出す大切な器官です。そればかりでなくミトコンドリアは緊急時に細胞死の引き金を引いたり,細胞内にいろいろな指令を出すなど,健康と長寿の陰の立役者として重要な役割を担っていることが分かってきました。また生物や人類の進化を巡ってはミトコンドリアについて様々な論議が起こったことは記憶に新しいでしょう。本書はそのようなミトコンドリアの不思議な振る舞いを分かりやすく解説します。

こんな方におすすめ

  • 分子生物学に興味がある人
  • 自分の健康や代謝に興味がある人
  • 人体の仕組みに興味がある人

目次

第1章 ミトコンドリアと長寿命遺伝子

  • 1-1 ミトコンドリアと寿命はどう関係するか?
  • 1-2 カロリー制限で寿命が伸びる2つの要因
  • 1-3 メタボリックシンドロームはなぜ起こる?
  • 1-4 メタボリックシンドロームとミトコンドリアの深いつながり
  • 1-5 「長寿命遺伝子」の2つの系統
  • 1-6 長寿命遺伝子「SIRT1」とは何か?①ヒストンの脱アセチル化
  • 1-7 長寿命遺伝子「SIRT1」とは何か?②ストレス応答遺伝子
  • 1-8 これだけある!哺乳類の「SIRTタンパク族」
  • 1-9 脂肪酸のエネルギー代謝と長寿命遺伝子
  • 1-10 抗老化ポリフェノール「レスベラトロール」と長寿命遺伝子

第2章 うごめく糸屑 変わりゆくミトコンドリア像

  • 2-1 ミトコンドリアはどんな形をしているのか?
  • 2-2 ミトコンドリアの数を調べる方法①「細胞分画法」による算出
  • 2-3 ミトコンドリアの数を調べる方法②「リアルタイムPCR」による算出
  • 2-4 生きたミトコンドリアの姿をとらえる①透明な細胞の内部を観察する
  • 2-5 生きたミトコンドリアの姿をとらえる②超生体染色からバイオイメージングへ
  • 2-6 ミトコンドリアが光るマウスを作る①どのように作ったのか?
  • 2-7 ミトコンドリアが光るマウスを作る②繊維芽細胞や精子を観察
  • 2-8 ミトコンドリアが光るマウスを作る③細胞の「元気」のバロメーター

第3章 エネルギープラントとしてのミトコンドリア

  • 3-1 ヒトの一日のATP産生量を計算すると
  • 3-2 ミトコンドリアはなぜ膨大なエネルギーが生み出せるのか?
  • 3-3 解糖系のプロセス①嫌気条件下でのエネルギー獲得術
  • 3-4 解糖系のプロセス②「酸化還元反応」とは何か?
  • 3-5 ミトコンドリアでのエネルギー産生①「TCA回路」の働きと特徴
  • 3-6 ミトコンドリアでのエネルギー産生②代謝経路の「ラウンドアバウト」
  • 3-7 ミトコンドリアでのエネルギー産生③最終経路としての「電子伝達系」

第4章 死を呼ぶ赤いタンパク質…ミトコンドリアとアポトーシス

  • 4-1 細胞のアポトーシスを観察する
  • 4-2 アポトーシスはなぜ必要なのか?
  • 4-3 ミトコンドリアが細胞死の引き金に?チトクロームcの不思議な働き
  • 4-4 ミトコンドリアから始まる「死のシグナル伝達系」①内因性のプロセス
  • 4-5 ミトコンドリアから始まる「死のシグナル伝達系」②外因性のプロセス
  • 4-6 免疫,アポトーシスとの意外な関係①リンパ球も殺される?
  • 4-7 免疫,アポトーシスとの意外な関係②ミトコンドリアの関与は?
  • 4-8 免疫,アポトーシスとの意外な関係③ウイルスの感染防御にも関与
  • 4-9 アポトーシスの生物学的意義

第5章 「ミトコンドリア・カタストロフィー」はこうして起こる

  • 5-1 ミトコンドリアの不調によって病気が作られる?
  • 5-2 4つの特徴を持ったミトコンドリアDNAの働きとは?
  • 5-3 ミトコンドリア病とはどんな病気なのか?
  • 5-4 ミトコンドリア病にはどんな種類があるのか?
  • 5-5 画期的だった「ミトコンドリア病のモデルマウス」の開発
  • 5-6 なぜミトコンドリア病が発症するのか?
  • 5-7 どの段階で発症に至るのか?

第6章 ミトコンドリア母性遺伝の真実

  • 6-1 ミトコンドリアの「母性遺伝」はいかにして発見されたか?
  • 6-2 ミトコンドリア母性遺伝をめぐる2つの仮説
  • 6-3 衝撃的だった「IOモデル」肯定説
  • 6-4 同じ種どうしでも「IOモデル」説は成り立つのか?
  • 6-5 ミトコンドリアの「母性遺伝」を証明するための条件とは?
  • 6-6 受精卵を用いた実験でミトコンドリアの「母性遺伝」を証明!
  • 6-7 「種間雑種」で父親のミトコンドリアDNAが残るのはなぜか?
  • 6-8 ついに明らかになった!ミトコンドリアDNAの「遺伝法則」

著者プロフィール

米川博通

1946年,三重県生まれ。東京教育大学理学部動物学科卒業。同大学院修了。理学博士。日本学術振興会奨励研究員を経て,1975年埼玉県立がんセンター研究所に奉職。1986年ハワードヒュース医学研究所(ダラス市)に客員研究員として留学。1988年?東京都臨床医学総合研究所実験動物研究部門室長。同部長を経て1999年同研究所副所長。2010年?東京都医学研究所基盤技術研究センター兼知的財産活用センター・センター長。現在同研究所客員研究員。専門はマウス遺伝学,実験動物学。日本実験動物学会/安東田嶋賞受賞。筑波大学,新潟大学,国立遺伝学研究所,首都大学東京客員教授などを歴任。著書に「マウスラボマニュアル」(初版,第II版/執筆・責任編集),「モデル動物の作製と維持」「疾患モデルの作製と利用」(執筆・編集)など。