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なぞの宝庫 南極大陸―南極大陸の氷は太っているか痩せているか

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氷と雪におおわれた南極大陸。いったいこの大陸は他の大陸と何がどのように違うのか? 海から固体が顔を出しているという点でも、他の大陸や島とそれほど変わってはいない。しかし、その表面が岩石ではなく氷におおわれていることが、南極をたいへん興味深い大陸にしている。氷の融点や水の沸点は、地球表面の温度に比較的近い。そのた南極は環境のわずかな変化でその姿を変える性質をもつ水におおわれていることになる。

人間も動物も、毎日消費されるカロリーを超えて食事をとり続ければ体重が増えていく。南極氷床もこれと似ている。氷が減る量を増える量が上回れば氷床は成長していく。南極氷床は地球上に存在する陸上の氷の約90パーセントを抱えており、その質量収支は、近年心配されている世界の海水面上昇の鍵となっている。

南極氷床が成長する最大の原因は降雪である。南極に降り積もった雪は、雪自身の重さで圧縮されて徐々に固くなり、やがて氷として氷床の一部となっていく。ところで南極にはどのくらいの雪が降るのか。これが意外と少なく、地域によって大きく異なるものの、雪の多い沿岸部で年間数十センチメートル、より乾燥している内陸部では年間わずか数センチメートルである。これは南極全体で見ると平均10センチメートルほどにすぎない。こんなわずかな降雪量でよくもあれほど巨大な南極氷床が生まれたものである。これは、たとえ消耗によって消えていく雪や氷がゼロだとしても、現在の南極氷床をつくるには数万年の降雪が必要になるということである。

では氷床の消耗、すなわち氷が減るのはどんなプロセスによるのだろうか。街に降った雪はたいていすぐに融けてなくなってしまうが、気温が非常に低い南極では、降り積もった雪も氷もあまり融けることがない。夏になると、標高の低い沿岸部で氷床の表面がわずかに融けたり、海に張り出した氷が水面下で少し融けたりする程度である。では、融けることのない氷がなぜなくなるのか。この手品のタネは海と接する氷床の末端にある。内陸から沿岸へと押し寄せる氷は最終的には海へと流れ込み、海水に浮かんで棚氷をつくる。棚氷はやがては氷床から切り離され「氷山」として海に漂うことになる。こうした氷山分離(カービング)こそが、氷床でもっとも重要な消耗、すなわち氷の量が実質的に減少する過程なのである。

近年、温暖化によって世界の氷河が小さくなり、海に融け出した水によって海水面が上昇するのではないかと心配されている。南極氷床の質量も温暖化によって減りつつあるのだろうか? 実はこの問題はそれほど簡単ではないのだ。

(本書の一部より抜粋)

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