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人が創るから技術はおもしろい

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どうして難しい?

初めてお目にかかる方と名刺交換をするとき,よく言われることがあります。

  • 「硬い社名ですね」

「ちゃんとしていそう」という良いイメージをもっていただいていることが多いのでまったく問題ないのですが,中には身構えてしまう方がいるのも事実。「そんなに小難しい本ばかり出してませんから,大丈夫ですよ……」とフォローしたくなるときもしばしばです。

日本はよく「ものづくりが強み」「技術立国」などと言われ,「技術がすごい」という印象を持つ方は国内外問わず多いと思います。一方で,「技術」という言葉を見たとたんに「なんか難しそう……」とアレルギー反応を起こしてしまう方も少なくないのではないでしょうか。

かくいう私も,いわゆる理系科目は大の苦手なクチ。技術と聞いて「おもしろい!」と目を輝かせる人を横目に見ながら,目の前のすごそうな原理を理解できずに「自分も理解力があればそう思えるのかなあ」とぼんやり思いを巡らすことしかできませんでした。

“体温”を感じればもっと身近に

そんな状況が少し変わったのは,編集の仕事をするようになってからです。

編集の仕事の一番楽しいところは,技術のスペシャリストと直接お話しできること。そして,お話の中で必ず出てくるのが「こだわり」です。

こだわりの中には「本当に大事なこと」が隠れています。たとえば「今度の新製品はどこにこだわりましたか?」と伺うと,そのモノを作った目的,そして込められた夢や想いがわかります。一見難しそうな技術の名前や原理も,よくよく聞いてみれば理想と現実のスキマを埋めるためのシンプルな要求の手段に,ちょっと変わった名前がついているだけだったりすることもあります。そして,いかに高度な技術が使われていようとも,その裏には

「みなさんの,こんな夢にもうちょっと近づけるようにしたかったんです」といったわかりやすい物語があったりします。不思議なもので,そういった体温が感じられると,難しいことでも自然と頭の中に入ってくるようになります。それは「技術が生まれる理由」「技術が届く先」がイメージできることも大きいかもしれませんが,1人の人のこだわりを伺うこと自体が無条件におもしろいからでしょう。

技術がわかれば世界が変わる

そして,何より大事なのは「創った人にしかわからないこと」を教えてもらえることです。

今,街を歩けばいろいろなモノであふれています。どれも便利なものばかりで,違いがわからないぐらいに。違いがあまりよくわからなくてもある程度満足できてしまったりします。

でも,実際に創った方のお話を伺っていると「ああ,そんな違いがあるのか」と目を開かされることがたくさんあります。たとえばテレビならば,普段,お店で何も考えないで眺めているだけでは絶対わからないような画質の違いがいきなりわかってきて,ものすごく楽しくなることも。

「たった少しのことだけ知っているか,知らないかで,ここまで違う景色が見えてくるのか!」と一人で感心してしまうことはザラです。目の前にあるモノ自体は同じでも,自分がどこまで知識を持ち,きちんと見るかどうかで,見える景色は10倍にも違っていくのです。

技術は人の目に触れないところで私たちを支えてくれています。そんな「裏方」「黒子」は,こちらから意識して近づかないといつまでたっても見えてきません。せっかく買った大事なモノ,その魅力を目一杯楽しめる可能性を逃がしたまま終わるのは相当もったいないのではないでしょうか?

おかげさまで40周年を迎えることができた技術評論社の最新シリーズ「テック・ライブ」では,テレビやケータイといった身近なモノの開発に携わった方々を徹底的な取材。いつもはなかなかわからない,モノの裏側に秘められたこだわりや想いが伝わる本になっています。私も,家にあるテレビに十分満足していたのが,この本の取材に同行してからはついつい細かい差がわかるようになってしまい,気分が悪くなってしまったほどです。そんな罪作りな本ですが,毎日目に触れる身近なモノの裏側を知る喜び,そして違いがわかる悦び喜びを味わっていただけるはずです。文字通り「モノの見方」が変わると思いますよ。

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