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「テレビなんてヤラセばっかり!」と思っている方々にも,制作現場のいまを知ってほしい ~新刊『それでもテレビは死なない』 奥村健太 著者インタビュー

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マスに向けたテレビだから通る企画,やりにくい企画

─⁠─業界の暗い話題になってきてしまいました! これはこれで尽きないですけど,少し話を変えて,実際の番組制作についてうかがいますね。
奥村さんは,本書でも撮影協力いただいた「ラーメン二郎」にせっせと通い,番組を作ってしまうほどのジロリアンなんですよね。
たとえば,最近よく流れているだれもが知るファミレスやメーカーの人気ランキングを見るより,二郎の企画をもっと! というようなファンも多いと思うのですが,通向けの番組はなかなか通らないものなのでしょうか。

ラーメン二郎! くると思った,この質問(笑)。Ramen of Ramens<ラーメンの中のラーメン>である二郎は……(※編集部注:以下,ラーメン二郎関連話が20分以上も続いたのでここでは省略)⁠

どん! これがコアなファンからの絶大な支持を受ける1品(撮影協力・ラーメン二郎 ひばりヶ丘店)

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冗談はさておき,テレビで有名ファミレスチェーンのランキングなどが紹介されることが多いのは,テレビがマス,つまり多数に向けて発信されるメディアだからということに他ならないんです。

日本全国津々浦々まで放送される全国ネットの番組,ま,一部地域を除くってこともありますが……では,番組を見る人が"その店を知っている",または"その店に行ってみたくなる"ということが最低限の条件です。いわゆる視聴動機とも言えますが,その番組を見ることで,ちょっと得をするとか,知らなかったことを知ることができる。つまり番組を見続ける動機を視聴者に与え続けなくてはならないのです。

─⁠─なるほど。ニッチ、マス……企画ごとに読者対象を考える書籍出版とは最初に向ける母数がちがいますよね。

本の中でも散々言及していますが,賛否両論あるにせよ,テレビにとって視聴率というものは絶対的な物差しです。毎00秒ごとに訪れるカウントチャンスを毎分どうやって乗り切っていくか,制作者たちは常に頭を悩ませています。そんな熾烈な戦いが繰り広げられている中,ラーメン二郎がどれだけ有名だとは言え,いわゆる直系の店舗が都内を中心に30数店しかない以上,やはり数百店舗を数えるチェーン店には知名度では遥かに及びません。関東地方でしか放送しない深夜番組ならいざしらず,ゴールデンタイムの全国ネットの番組ともなると,どちらが「視聴率」を取る企画書として優れているか,言うまでもありません。

ただ,僕はそういうマスに向けた番組にはあまり興味がないようで,マニアックな題材でなおかつ後にDVD化されるような良質な番組を作り続けたいと考えています。ラーメン二郎の若き店主たちとは個人的にも親しくさせてもらっていますが,彼らのドキュメンタリー番組なんて絶対に面白いと思うんですよね! 今,企画を考え中で……(※編集部注:以下,またしてもラーメン二郎関連の話が延々と続いたので省略)⁠

─⁠─ラーメン二郎のドキュメンタリー番組,ぜひ見たいです。

さて,奥村さんは,さまざまな現場を経験されていますが,どのジャンルの制作が一番楽しいというのはありますか?

殺人事件の現場リポートから,カルト教団の潜入取材,雪山に登って遭難しかかったり,大ヒット少女漫画の秘密を探ったりと,硬軟併せてありとあらゆる現場の取材をしていますが,やっぱり一番やっていて楽しくて好きなのは,秘境系のドキュメンタリー番組です。

誰も行ったことのない場所で,誰も撮影したことのない事象や人物にカメラを向ける。参考にするテキストもなければ,先人の本もない。自分と取材対象とのまさに真剣勝負です。この首筋がヒリヒリするような感覚は他ではちょっと味わえません。視聴者に,これまでに見たことのないような映像を届けるという意味では,こんなにワクワクする仕事はないんじゃないでしょうか。

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もちろんそこに辿り着くまでに死にそうな目に遭ったりもしますし,取材者なんだか,冒険者なんだかよくわからなくなっている状況も多々あるのですけど。

そのあたりのエピソードは本書のコラムにいろいろと書いたので,是非,読んでみてください。でも,こういったドキュメンタリー番組は,予算がかかる割に視聴率が取れないので,最近のテレビ,特に地上波では敬遠されがちです。なんとかしたいと常に考えているのですが……。

─⁠─最後に『テレビは死なない』と挑戦的なタイトルに加え,⁠こんなこと言って大丈夫?」というネタまで,真面目に鋭く書いていただいた本書ですが,読者のみなさまにひと言お願いします。

今回の本は,いわゆる「暴露本」ではありません。匿名で,面白可笑しく無責任にテレビ業界の内幕を書きまくる,という選択肢は最初からありませんでした。同じ業界で働く人たちはもちろん,⁠テレビなんてヤラセばっかり!」と思っている方々にも,制作の現場がどうなっているのか知ってほしいと思いますし,これからテレビ業界を目指す学生さんには是非読んでもらいたいです。

センセーショナルかどうかと言われれば,それは読者の皆さんの受け止め方次第ですが,"現場の人間でしかわからないこと"という意味では,かなり濃い中身だと思います。ということで,今までありそうでなかった1冊になった,という自負はあります。まぁ,誰かに怒られるかもしれませんが,それはそれでズバリ,的を得ていたということで(笑)。

─⁠─本日は,お忙しいなかありがとうございました。


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