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小飼弾が「コード」について考えた

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ブログ「404 Blog Not Found」小飼弾さんからの問いかけ

ブログ「404 Blog Not Found」でおなじみの小飼弾さん。数々の書籍をブログで紹介し,さきごろ,本をテーマとした書籍『本を読んだら,自分を読め』も執筆。一方,⁠中卒」でもわかる科学入門』を著すなど,サイエンティストとしての側面も持も持ち、多彩な活動で知られます。そうした中でも小飼さんの重要な一面は,エンジニアという側面。株式会社オン・ザ・エッヂ(旧:ライブドア)元CTOであり,プログラミング言語PerlのEncode Moduleメンテナも長く務める小飼さんは,技術者としてソフトウェア開発を常に追い続けるギークでもあります。そんな小飼さんが,⁠コード」をテーマに認めたエッセイがこのほど,上梓されました。その名もずばり,小飼弾の コードなエッセイ ――我々は本当に世界を理解してコードしているのだろうか?⁠。

「コード」とは何か

本書における「コード」には,いくつかの意味が含まれています。

ソフトウェアプログラムとしてのコード

1つはいわゆるソフトウェアプログラムとしての「ソースコード⁠⁠。ソースコードというのは,その本質を理解して適切に書くことができるか否かで,その品質もパフォーマンスも圧倒的に大きく違うと言われます。本書では,⁠コンピュータの基本原理」⁠ハードウェアを知ることの重要性」⁠エレガントなプログラムを目指すべきか」⁠プロのプログラマに求められる条件」など,プログラミングを生業とする人がしっかりと向き合い,考えておく必要のあるテーマを挙げ,ソースコードとともに小飼さんがソフトウェアプログラムの本質に迫ります。

法律としてのコード

コードとして広く認識されているのは現在では上記の「ソースコード」かもしれませんが,⁠コード」という言葉のもともとの語源は,古代ローマにおける「ローマ法」にあるとされます。⁠電脳」⁠computer)のためのコードに対して,⁠人脳」に適用されるコード。これが本書の2つめのテーマです。民主主義,税制,政治…。本書は,月刊誌『Software Design』で3年間にわたって連載された記事がもとになっていますが,連載のまっただ中で非常に大きな出来事がありました。東日本大震災です。津波や原発事故などに向き合いながら小飼さんが「人脳」としてのコードとどう向き合ってきたかが赤裸々に綴られています。

法則としてのコード

本書が主に対象としているのは上述のコードですが,さらにもう1つ,⁠法則」としてのコードも挙げられます。これはいうなれば,この世界自身に書かれているもの。それを読み解くのは科学者で,⁠電脳」⁠人脳」のコードを読み書きするのは技術者。それぞれ別の仕事として成立しているけれども,コードというのは本来,読み解くべきものでもあり,書き下されるべきものでもある。そして,そこにこそ,喜びがある。小飼さんは本書「はじめに」で,そのように語っています。この「コード」と向き合う喜びこそが,小飼さんが本書で伝えようとしている「本質」なのかもしれません。

小飼さんの語りは,収録するエッセイのタイトルが「Y談。」⁠バカと電脳は使いよう」⁠たまには( )つけてみよう」など,ウィットに富んでこそいるものの,決して初心者にやさしいわけではありません。けれど,じっくりと読み解いていくなかで,そのメッセージが自然に伝わってくる,理解されるものと思います。

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