クラウドソーシングを活用した新機軸 C-TEAMの可能性に迫る!

インターネットの価値、その1つが「量」です――「量」を徹底的に活用するサービスが誕生しました。

今回紹介する「C-TEAM」です。

C-TEAMはクラウドソーシングの考え方を盛り込んだ、新しい広告ビジネスモデルとして期待されています。

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クラウドソーシングとは

まず始めに、クラウドソーシングについて簡単に紹介しましょう。クラウドとは、言葉の通り⁠crowd⁠⁠、すなわち群衆を意味します。クラウドソーシングとは、インターネット上に存在する群衆(クラウド)(アウト)ソーシングすることを意味して作られた言葉です。インターネットを通じて物理的な距離を越えた不特定多数のユーザにアウトソースすることで、課題の解決を目指します。

このような考え方が誕生した背景にはWeb 2.0の概念があります。ご存知のとおり、Web 2.0という単語が登場してから、blogやSNSなどのCGMと呼ばれるエンドユーザが創り出すコンテンツの価値が評価され、認識されるようになってきています。クラウドソーシングは、まさにその考え方の延長と言え、インターネット上に埋もれてしまいがちなエンドユーザの創造力を汲み取り、実際の製品やサービスに形を変えていくような展開を目指すものとして、今、多くのWebサービスで注目されているのです。

C-TEAMとクラウドソーシング

クラウドソーシング型クリエイティブエージェンシー

さて、今回紹介するC-TEAMは、株式会社リクルート メディアテクノロジーラボが提供するクラウドソーシング型のクリエイティブエージェンシーサービスです。登録したユーザは誰もがクリエイターとなり、クライアントの広告キャンペーンに参加できます。サービスのイメージは図1のようになります。

図1 C-TEAMのイメージ
図1 C-TEAMのイメージ

C-TEAMはWebブラウザ上から手軽にバナーをアップロードできるため、ユーザはPCで制作したデータをスムーズに投稿できます。このように、まずたくさんのバナーを集めやすい仕組みが作られている点、これがC-TEAMの特徴の1つです。こうすることで、クラウド自体を最大化できるため、品質の向上が見込めます。

採用後のバナーとランキングシステム

ユーザに登録されたバナーは、案件を提案したクライアントの審査により掲載の可否が決定します。実際に掲載バナーとして採用されると、ユーザにはバナー1つにつき500円分のポイントが付与されます。これが、C-TEAMのポイントシステムです。ここで獲得したポイントは、郵便貯金やイーバンク銀行の口座などの現金化の他、表1のようなさまざまな外部サービスのポイントや金券との交換が可能です。

表1 ポイントと交換可能なおもな外部サービス
図書カード(500円分)
クオカード
ジェフグルメカード(全国共通お食事券)
ハーゲンダッツギフト券
iTunes Card
VISA商品券

詳細はhttps://c-team.jp/creator/point_list.php

さらに、投稿されたバナーはC-TEAM内に表示回数やクリック数が表示され、クリック率に応じたランキングとして発表されます。加えて、1位を取ったバナーには5万円分のポイントがもらえるといったボーナスシステムが用意されており、バナー制作者のモチベーションがアップする仕掛けが盛り込まれています。

図2 C-TEAMの価値構造
図2 C-TEAMの価値構造

C-TEAMのビジネスモデル

広告価値を高めるためのビジネス

続いて、C-TEAMのビジネスモデルについて紹介します。

C-TEAMは、クライアントからクリエイティブ制作に対してさらにコストを投下することで、結果的にCPCやCPAを下げ費用対効果を良くするビジネスモデルになります。仮に300万の媒体費をかけている場合よりもCTRが2倍になるのであれば、通常5万円程度の制作費に100万円投下しても、1クリックあたりの費用対効果が改善します。

このように、広告価値が高まり費用対効果を改善することで、クライアントのビジネスを加速させて、さらに広告予算自体を拡大することを目指しています。マーケット自体を拡大できる点が最大の特徴です。

詳しくは後述の実績をご覧ください。

独自アルゴリズムによる最適化

では、実際にどのようにしてバナー効果を最適化しているのでしょうか。大まかなイメージとしては図3のようになります。このように、効果が落ちてきたバナーを最適のタイミングで入れ替えるロジックを採用することで、つねに高い効果を実現できるバナーを表示させられるのです。

図3 C-TEAMによる最適化のイメージ
図3 C-TEAMによる最適化のイメージ

ここで使用されているアルゴリズムはC-TEAMプロデューサーの須藤憲司氏とハーバード大学の数学者による共同で研究されており、現在特許申請中となっています。

また、バナーについても随時C-TEAM上にアップされるだけではなく、先に紹介したランキングシステムやボーナスシステムといった形で、クリエイターのモチベーションを維持する仕組みが用意されているので、恒常的に、クライアントとクリエイターの効果的な循環関係が実現できるのです。

78.4%―最適化によるCTR改善

では、実際にどのぐらいの改善が実現できたのでしょうか。住まいのコミュニティサイトスマッチのバナーに関する事例では、最適化前と最適化後のCTRを比較して78.4%の改善が見えています(2008年9月1~7日の調査⁠⁠。この間、投稿されたバナーの数は99個ありました。

また、実際に投稿されたバナー(17ページ下段枠参照)を見ても、プロのクオリティに劣らないものばかりです。

さらに、CTRの改善からランディング→アクションまでのCVR(Conversion Rate)が4.9倍に向上したという結果も出ています。

株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ 中期戦略チーム C-TEAMプロデューサー須藤憲司氏に訊く、クラウドソーシングを活用した広告バナー戦略

続いて、C-TEAMを企画した株式会社リクルートメディアテクノロジーラボ 中期戦略チーム/C-TEAMプロデューサーの須藤憲司氏に、サービス開始の背景や狙い、今後の展開について伺ったのでその模様をお届けします。

スタートまでの経緯

――まずはじめに、C-TEAMをスタートしようと思ったきっかけと経緯について教えてください。

株式会社リクルートメディアテクノロジーラボ
中期戦略チーム
C-TEAMプロデューサー須藤憲司氏
株式会社リクルート メディアテクノロジーラボ中期戦略チーム C-TEAMプロデューサー須藤憲司氏

「質より量」の重要さ

きっかけは、2007年4月にR25.jpに関わることになって、マス広告の世界を肌で感じたことです。このとき、ネットの世界でも「質より量」という部分が非常に重要だと感じたのです。また、メディア側から見たクライアントの課題をふまえて、クリエイティブから広告の世界を変えていけないかという発想が最初のきっかけでした。

CGA―Consumer Generated Advertisement

その後半年間、どうやれば競争優位性が出せるのかという点について検討し、アルゴリズムのベースが見えてきました。時期としては11月ぐらいでしょうか。そして「CGMができるのであればCGA(Consumer Generated Advertisement)も実現できる」と確信し、社内研修で新しいビジネスとして提案したのです。そこですぐに受け入れられ、2008年4月に現在のポジションに移動し、C-TEAMの開発に関わることになりました。

その後、4月からプロジェクト化し、2ヵ月企画・検討を行い、実際の開発・実装に2ヵ月かかりました。正式リリースは8月14日です。

C-TEAMという名前

C-TEAMのCには、⁠Creative」⁠Client」⁠Customer」など、さまざまな意味を含めています。広告に関わるもの、すべてを含めていくことを考えて付けました。また、今回のサービスはクライアントとクリエイター、クライアントとユーザという構造をはっきりさせるのではなく、関わっている人すべてがチームであるという意味を込めて、C-TEAMという名前を付けました。

運用後の反応を見て

クリエイターからの反応

まず、8月14日のサービス開始直後からさまざまなメディアで取り上げられるなど、非常に大きな反響がありました。サービスそのものとしても、10月28日現在、約1,400名のクリエイターが登録してくださり、1日約100個のペースでバナーが投稿され、4,128個のバナーが登録されています。

数字から見ても非常に多くのクリエイターにリーチできたと確信しています。今後はさらにこの数を増やしていきたいですね。

また、岩手大学と産学連携の取り組みが始まるなど、若手クリエイター育成に役立っていけるのではと期待しています。

投稿されたサンプル
投稿されたサンプル 投稿されたサンプル 投稿されたサンプル 投稿されたサンプル 投稿されたサンプル 投稿されたサンプル

クライアントニーズと市場

一方のクライアントニーズに関してですが、現在はまだ弊社(リクルート)の案件のみを扱っているため、あくまで参考数値となりますが、⁠スマッチ」の案件をはじめ、30以上の案件で平均でCTRが2倍になるなど、非常に大きな効果が見られています。この数字などをベースに近いうちに外部のクライアント向けの展開を始めていきたいです。

今後

現在、社内の案件をベースに展開していますが、2009年1月には他のクライアントからの案件も請け負っていきたいと考えています。

C-TEAMの元々の目的は広告の価値をさらに向上させていき、効果を高めることでした。今回の事例結果からその可能性は十分検証できたと考えています。これからは、新規顧客を獲得したいクライアントを対象に、よりビジネスに直結する部分の広告効果を上げることで市場を拡大できればと思っています。私の中で、ビジネスを拡大することを考えたときに、クライアントの売り上げを大きくしなければ、その先も大きくならないと考えているからです。

将来的には他のメディアと連動させたり、積極的なキャンペーンを展開するなどして、⁠質より量」の考え方を軸に、効果の高い広告を生み出して行ければ嬉しいですね。

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