新春特別企画

アメリカ西海岸発、2010年注目WebサービスBest 5

ネットベンチャーのメッカ、アメリカ西海岸

ここサンフランシスコを中心としたアメリカ西海岸では、多くのネットベンチャー企業がしのぎを削り、日々新しいサービスが現れ、そして消えていきます。2009年も多くのスタートアップがさまざまなアプローチからWebサービスをリリースしました。今年の年頭に当たって、その中でも最も注目度の高いサービスBest 5をピックアップしてみました。

多くのベンチャーが参加するイベント「SFNewTech」

今回ご紹介するのは、サンフランシスコ市内で月に1度のペースでネットベンチャーが自社のサービスに関してのプレゼンを行うイベント、SFNewTechにおいて、2009年に紹介された5社です。同イベントには累計で200社以上、2009年度だけでも実に102もの会社が厳しい事前審査をくぐり抜け、プレゼンの機会を獲得しました。ここでは、その中から"これはいける!"と思う注目のサービスを厳選し、カウントダウン方式で紹介していきます。

図1 SFNewTechの模様
図1 SFNewTechの模様

2010年にヒットするための4つのポイント

それぞれのサービスを紹介する前に、ヒットするために必要不可欠と思われる4つのポイントを説明したいと思います。これらは、こちらアメリカ西海岸のスタートアップや投資家の間では、サクセスフォーミュラとして特によく語られている点です。

1.リアルな日常生活とつながっている
オンライン上だけで全てが完結するサービスは、今後あまり多くの注目を集めることは望めません。テクノロジー的な限界が見えたり、似たようなサービスがすでに出尽くしている感もあり、あまり革新的なものは生まれにくいように思えます。2010年は、より日々の生活に密接に関連したサービスが流行る傾向にあります。Webを使って日常生活をどれだけより良いものにするか、がアメリカでは注目されています。
2.サービス内容がわかりやすい
数年前までは、どれだけの機能が実装されているかが勝負のような感がありましたが、それも最近は一段落し、これからは一目でサービス内容がわからなければユーザは離れて行きます。英語で言うところの"Less is More"がコンセプトになります。
3.二番煎じではない
サンフランシスコ/シリコンバレーは、Google, Twitter, Facebook等、大ヒットサービスの誕生の地であるからなのか、未だに多くのスタートアップが彼らに似通ったタイプのサービスモデルを展開しています。しかしながら、既存のサービスの改良版的なものをリリースしても、すでにプレイヤーは出そろっており、後発での成功はかなり難しいと思われます。したがって、"XXXっぽいサービス"は敬遠される傾向にあります。
4.ユーザビリティが高い
非常に基本的で普遍的なポイントですが、やはりWebサイトにおけるユーザビリティは何よりも重要です。特にややこしい事をいやがる国民性のアメリカでは、わかりやすく使いやすいサイトでなければユーザは定着しません。どんな時代でも直感的に扱えるサイトが重要になります。

2010年の注目WebサービスBest 5

それではお待ちかねのランキングの発表です。

【第5位】NationalBLS(ナショナルBLS)

まず第5位は, あまりネットとは縁の薄い不動産物件売買に関連するサービスです。アメリカの不動産業界は21世紀に入ってからもまだまだ保守的で、アナログな側面が色濃くあります。数年前より、TruliaRedFinなどのオンライン不動産物件検索サイトの人気が高まってはいますが、昨今のサブプライムローン問題もあり、最近では家を売る側もバイヤーの審査に非常に敏感になっています。実際に買い手が見つかったけれども、ローン審査で却下されたケースも珍しくありません。そこで登場したのがこのサイト、www.nationalbls.com/">NationalBLSです。

図2 NationalBLSのページ
図2 NationalBLSのページ

このサイトの特筆すべき点は、買う側が自分の欲しい物件の詳細を記載し、事前に各種金融機関より承認されているローンの借り入れ上限額を提示するところです。それに対して売る側がコンタクトをするという仕組みなので、商談がまとまった後でローンが組めない等の事態をさける事ができます。実際の売買にはプロのエージェントと呼ばれる不動産業者の仲介が必要になります。そこでNationalBLSでは、そのようなエージェント向けにプレミアムアカウントを開設しており、これを収益源としています。不景気で不動産業界が非常に苦しい時代には最適なサービスかも知れません。

図3 購買希望者の情報が詳しく表示される
図3 購買希望者の情報が詳しく表示される

【第4位】My Job Referrals(マイジョブリフェラル)

不景気で苦境に立たされているのは不動産業界だけではありません。現在はどの業種でも職探しは困難を極めています。とはいえ転職が頻繁に行われるアメリカでは、企業側も常に優秀は人材を探していることには変わりありません。一方、求職者と募集企業を結ぶしくみはまだまだ発展途上で、既存の求人サイトやプロのリクルーターに頼ってきました。求人サイトの場合、企業側から見ると不特定多数の応募者の中から選出する手間がかかり、リクルーターを活用した場合はコストの面がハードルとなります。より良い人材を発掘するには、やはり人からの紹介、いわゆる口コミが一番信頼できるのですが、そう簡単には多くの人材を紹介してもらう事は難しいのが現状でした。そのような問題を解決するのがこのサービス、My Job Referralsです。

図4 My Job Referrals
図4 My Job Referrals

内容は至ってシンプル。企業が募集中のポジションを掲載し、 紹介者に対する報酬額を記載します。 採用になった場合、適切な人材を紹介してくれた人に、その報酬額が支払われるというものです。 企業にとってはより多くの人材が第三者を通し紹介される上、イニシャルコストが掛からないので、非常に有意義なサービスと言えます。また、求職者と紹介者にも大きなメリットがあるため、今後話題になるのではないかと思います。不景気ならではのアイディアです。

図5 企業からの求人一覧が表示される
図5 企業からの求人一覧が表示される

【第3位】Waze(ウェイズ)

第3位は、UGC(ユーザ生成型コンテンツ)とモバイル技術を最大限活用したリアルタイム交通情報サービスです。現在でもGoogleマップで地図や交通情報はある程度確認できますが、このWazeは利用しているユーザが参加し、より"今"の情報を共有できるのがコンセプトです。Googleが企業側からの一方的な情報提供であるのに対し、Wazeはコミュニティ感覚の情報生成である点において、基本コンセプトに大きな違いがあります。

図6 Wazeのページ、最新のトラフィックアップデートが並ぶ
図6 Wazeのページ、最新のトラフィックアップデートが並ぶる

たとえば、現在サンフランシスコのどこで交通事故があり、渋滞しているか、や平均走行速度が瞬時に把握できます。ユーザが現場の写真をアップしている場合は、それを見ることも可能です。全てのデータはiPhoneなどのモバイルアプリに内蔵されているGPS機能を活用して生成されます。2人以上のユーザが同じ道路を走っていれば自動的に速度が算出され、サイト上に反映されます。また、既存のマップに不備がある場合も、ユーザの善意により随時更新される仕組みです。まさに"コミュニティ"のコンセプトを最大活用し、ユーザ参加型コンテンツをリアルな日常生活の役に立てた良い例と言えます。

図7 数分前の情報が地図上に表示される
図7 数分前の情報が地図上に表示される

【第2位】Blurb(ブラーブ)

ここ最近Webメディアの台頭により、本や雑誌等の紙媒体が圧迫されています。しかしながら、スクリーンでは得られない質感やクオリティが本にはあります。第2位のBlurbは、オンライン製本サービスを展開しているのですが、そのやり方やサービス内容が非常に良くできています。自分の所有する写真や文字コンテンツを専用のソフトを使って編集・構成し、送信するだけで数週間後に製本され送られてきます。作成する本の種類の一例としては、フォトブック、ポートフォリオ、ビジネス書、ウェディングブック、ブログブック等があります。

図8 Blurbのページ
図8 Blurbのページ
図9 完成イメージがわかりやすい
図9 完成イメージがわかりやすい

編集ソフトの使い易さもさることながら、最も特筆すべきは、作成した本がサイト上で販売され、他のユーザに購入してもらうことが可能な点です。自分のために作成した本が購入対象になることにより、実質的な自費出版が手軽に実現します。また、費用もお手軽で、白黒、文字のみの構成の場合、最大40ページまでで4.95ドル、 一般的なフォトブックでも100ドル以内で作成可能です。2010年はテクノロジーの発達により新しい出版の形が形成されつつあるようです。

【第1位】Offbeat Guides(オフビートガイド)

アメリカ西海岸発、2010年注目サービス、堂々の第1位は、自分だけのオリジナル旅行ガイドブックが手に入るサービス、Offbeat Guidesです。

図10 Offbeat Guidesのページ
図10 Offbeat Guidesのページ

たとえば海外旅行に行く際に、書店で手に入るガイドブックを購入するケースが多いと思いますが、不特定多数のユーザ向けに作成されたガイドブックは、自分の行く目的地の情報が十分でなかったり、必要のない情報も含まれている場合が多々あります。このOffbeat Guides社が提供するサービスは、目的地と日程、そして自分の名前を入れるだけで、自分のためだけにカスタムメイドされたガイドブックが生成され、オーダーする事ができます。

図11 旅程を入れるだけで、その土地のガイドブックができあがる
図11 旅程を入れるだけで、その土地のガイドブックができあがる

自分の旅程や滞在地を元に作成されるため、旅行中の天気予報や、イベント情報など、必要な情報は全て含まれます。特に目的地がマイナーな土地であれば、既存のガイドブックからは十分な情報が得られる事は難しいので、このサービスが非常に役に立つと思われます。テクノロジーが進化した今、このようなオンラインとリアルをつなげるサービスが注目されると思われます。なお、こちらのOffbeat Guidesに関しての詳しい情報は、今後もご紹介していきたいと思っています。

新規サービス展開における3つのトレンド

今回の記事を書くにあたり、アメリカ西海岸における多くのWebサービスに共通する3つのポイントを発見しましたのでご紹介します。

1.Facebook Connectを活用

ユーザ登録型サイトの場合、ユーザが新規アカウントを作成する手間を敬遠するケースがあります。多くのサイトがFacebook Connectを利用する事でそれを回避しています。Facebook Connectを使えば、ユーザが既存のFacebookアカウントを使ってログインする事が可能になります。

図12 Facebook Connectを使ったログイン
図12 Facebook Connectを使ったログイン

2.iPhoneアプリ版のリリース

多くのサービスが、PC向けWebサイトを公開と同時期にiPhone向けのアプリもリリースしています。より多くのメディアからの集客と、モバイルを活用したサービス展開を行っているケースが見受けられます。

図13
図13

3. Demo Video コンテンツの掲載

新規サービスをリリースする際は、ユーザにとってどのようなメリットがあるかを端的に伝える事が必要とされ、多くのサイトがサービス説明のナレーション付きのDemo Videoをトップページから見れるようにしてあります。

図14
図14

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