新春特別企画

openFrameworksから拡がるメディアアートの世界

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openFrameworksを利用した作品例

それでは,openFrameworksでいったいどんな事ができるのか,実際にopenFrameworksを使用して生みだされた作品を見てみましょう。

監視する大勢の鏡:Audience, Chris O'Shea

Audience, Chris O'Sheaでは,ギャラリーに設置には大量の鏡が設置されています。その中に人が入りこむと,一斉に全ての鏡が入りこんで来た人間を注視します。鏡の中では,自分自身がこちらを見つめ返しています。その様子は,鑑賞者が鏡を観ているのではなく,まるで大勢の観客に監視されているような気分に陥ります。

観客が参加するインタラクティブなプロジェクションマッピング:Night Lights, YesYesNo

YesYesNoは,openFrameworksの開発者である,Zachary LiebermanとTheo Watson,さらにはGolan Levinや真鍋大渡など錚々たるアーティストが名を連ねるクリエイティブグループで,openFrameworksを活用した様々なプロジェクトを行っています。Night Lightsは,ニュージーランドの古い建築物にプロジェクションマッピングをした作品で,単純に映像を投影するだけでなく,観客が映像の前で動きまわると,投影されたキャラクターが同じように動きまわるといった高度なインタラクションを実現した作品となっています。

モバイル:Horizons, Lukasz Karluk

openFrameworksを使用してiPhoneやiPadのアプリケーションを作成することも可能です。AppleのiTunes Storeで,openFrameworksを使用したアプリケーションが数多く公開されています。Lukasz KarlukによるHorizonsは,インタラクティブに音楽を生成するiPhoneアプリです。iPhoneの傾きやユーザのタッチに抽象的な幾何学形態が反応して,それと呼応するように音響が変化しながら再生されます。

レーザ光線で巨大なビルにグラフィティを描く: L.A.S.E.R. Tag, Graffiti Reserch Lab

LASER Tagは,レーザポインタでビルの壁面や街角の看板をなぞると,まるでスプレーでグラフィティを描くように巨大な光の落書きをすることのできるシステム。彼らの活動の根本にはグラフィティ文化への深い造詣があり,その行為はグラフィティで街に足跡(タギング)を残すように,テクノロジーやメディアアートをハッキングしていくことに主眼が置かれています。LASER Tagを始めとする多くのプロジェクトのプログラムはオープンソースとして公式サイトからダウンロードすることができます。

視線でグラフィティを描く:EyeWriter, Free Art and Technology (FAT), OpenFrameworks, Graffiti Resarch Lab

EyeWriter, Free Art and Technologyは,2003年にALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患した伝説的なグラフィティライターで活動化のTony Quan(aka TEMPTONE)との共同プロジェクト。Tony Quanは,ALSの症状により眼球の運動以外は自力で動かすことができなくなりました。世界中から集まった開発チームは,彼が以前のようにまたグラフィティを描くことができるように,眼球運動をトラッキングして,その軌跡によって絵を描くことのできるオープンソースのシステムが構築しました。この作品は,国際的な権威あるメディアアートのアワード,Prix Ars Electronica 2010のインタラクティブ部門の最高賞Golden Nicaを受賞しました。

著者プロフィール

田所淳(たどころあつし)

多摩美術大学非常勤講師、千葉商科大学非常勤講師。

アルゴリズムを用いた音響合成によるコンピュータ音楽,ラップトップコンピュータを使用した即興演奏などを行っています。最近はopenFrameworksを用いたオーディオとビジュアルの融合に興味を持って取り組んでいます。大学の授業の資料や,近況はすべて個人サイトに掲載しています。