新春特別企画

企業サイトの変遷がわかる。Web制作の未来

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皆さんあけましておめでとうございます。インテリジェントネット株式会社和田です。

今回は新春企画企画として,紙版最終号となったWeb Site Expert #39の特集「Web制作の未来」で執筆した内容から,2012年に向けた記事をgihyo.jpの読者の皆さんに向けて改めて執筆させていただくことになりました。

ネットが一般化したという本当の意味

未来を考える上で,まず外部環境として私たちに起こった10年で大事な事を振り返ってみたいと思います。

1つ目の外部環境変化は,インターネットがインフラとして完全に根付いたということ。これだとたいていの人は,そうだよねっていってくれそうです。もうちょっと掘り下げると,これは⁠個人⁠⁠誰でも⁠⁠どこでも⁠⁠繋がりっぱなし⁠になったということです。

私たちの感覚だとなにを今更,という感じかもしれませんが,平成15年(2003年)くらいまでは⁠一般化⁠とは言えない状況でした。

ここがやっと一般化したということが大きな変化です。

 通信利用動向調査:インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人)

図 通信利用動向調査:インターネット利用者数及び人口普及率の推移(個人)

(注)

  1. 平成9~ 12年末までの数値は「通信白書(現情報通信白書)⁠から抜粋。
  2. インターネット利用者数(推計)は,6歳以上で,調査対象年の1年間に,インターネットを利用したことがある者を対象として行った本調査の結果からの推計値。インターネット接続機器については,パソコン,携帯電話・PHS,携帯情報端末,ゲーム機等あらゆるものを含み(当該機器を所有しているか否かは問わない)⁠利用目的等についても,個人的な利用,仕事上の利用,学校での利用等あらゆるものを含む。
  3. 平成13年末以降のインターネット利用者数は,6歳以上の推計人口(国勢調査結果及び生命表等を用いて推計)に本調査で得られた6歳以上のインターネット利用率を乗じて算出。
  4. 調査対象年齢については,平成11年末まで15~69歳,平成12年末は15~79歳,平成13年末以降は6歳以上。

総務省平成22年通信利用動向調査結果より

もちろん,今でも年齢,地域差などは注意が必要です。一般化以外では,PC,ケータイはもちろんゲーム機器など多くのデバイスがインターネットに繋がったところもポイントですね。

企業がWebサイトを作る目的は,ターゲットにリーチできて,ビジネスに貢献できるのかが本質です。逆説的に言うと,ターゲットにリーチできるのであれば,まずは一定の投資をするのも企業です。投資したら回収となるわけですが,極論を言うと,今までのWebサイトは投資,または間接的なビジネス貢献に向けられていたともいえそうです。

生活者の価値観が変化

2つ目の外部環境変化は,私たち生活者の価値観の変化です。物質的に豊かな社会から,人それぞれの多様性ある幸せに重きが置かれる社会に変わってきたところは皆さんもなにかしら実感があるのではないでしょうか。物質的な豊かさが社会の幸せとしてマジョリティであった時代の経済は大量生産・大量消費,大量広告でした。豊かさか,幸せかは排他的なものではなく両立しうるものですが,変化は緩やかに,確実に起こっています。

たとえば,月9(月曜21時)のフジテレビのドラマの変遷を見てもおもしろ発見があります。以前の月9に出てくる登場人物の設定と住んでいる部屋や持っているものなどがまったく合っていない高級マンションやブランドに包まれていたころもありましたが,今はそういったものを全面に出してくるようなことはあまりみかけません。

企業サイトの変遷とWeb制作

このようなネットの一般化,私たちの価値観の変化が起こったことによって,企業と生活者のつきあい方,そのコミュニケーションの最前線のひとつであるWebサイトも大きく変わってきました。そこで,企業サイトの位置づけの変遷とそれに伴ったWeb制作の現場の変化を若干強引ですがまとめてみました。

 企業Webサイトの変遷とWeb制作現場

図 企業Webサイトの変遷とWeb制作現場

左矢印(←)は左の項目(1つ前の世代)の内容を引き継いで,さらに追加することを意味する

世代と年代についてはわかりやすくするため,おおざっぱに5年おきにしてあります。⁠←」としたように,前の世代を引き継ぎ,その世代は,先進事例と捉えていただけたらと思います。ちなみに業種,業界,地域によっても大きく差があります。

第1世代から第2世代:パンフレットから情報発信ツール,制作現場は専門性へ

第1世代は,Webサイトが存在することに意味がある時代で,Web制作現場では職種に大きな意味はなく,できる人ができる事をなんでもやるという時代でした。インターネット黎明期から関わっている人と話すと,デザイン,コーディング,プログラムからサーバ構築まで何でもやってきたよ,という人が多いのではないでしょうか。

第2世代は,Googleが2000年に日本語検索サービスを開始し,日本のインターネット利用者が2000年の2,706万人(総務省:通信利用動向調査より,以降も同様)から2001年の4,708万人と一気に増え,Webサイトのアクセス機会が増えたことからWebサイトの重要度が増してきました。

それに伴い,それまでのパンフレット的なWebサイトからユーザビリティが重視され,マトリックス的なWebサイトやWeb独自のコンテンツが展開されるようになりました。Web制作の現場ではWebならではの価値提供と設計の専門性が重視されるようになってきました。

第3世代:大規模化,自社メディア化。制作現場は分業化へ

第3世代は,インターネットユーザーが急激に増えた段階です。2005年に日本のインターネット利用者は8,529万人となりました。2010年が9,462万人であることからかなり普及したことがわかります。この頃になると,利用者増加に対応すべく,Web標準,アクセシビリティといったような標準化に関係する動きが出ました。また,ブログ,SNSサービスの開始から個人Webサイトが急激に増え,インターネットの本質でもある,生活者と企業がより深くコミュニケーションできる土台が少しずつできて来ました。

一部の企業サイトは巨大化し,数万ページを有するところやECもだいぶ一般化してきました。Web制作の現場では,図表であげたキーワードのような多様な技術やサービスを提供するため,チームによる分業化が進みました。また,B2B企業などの生活者との直接コミュニケーションが直接ビジネスに重要視されない企業,中小企業などの多くに取っては,この段階でWebへの投資が本格化し始めたことから,全国各地でWeb制作へのニーズが増えそれに対応すべくWeb制作会社やSOHOが増えた時期でもあります。

第4世代:コミュニケーションメディアへ

第4世代は,まさに現在とこれからなので,未来予測的な要素が入り俯瞰的に見ることは難しいですが,前段で書かせて頂いた,⁠豊かな社会から幸せな社会」⁠個人が誰でもどこでも繋がりっぱなし」がより現象として出てきていると思います。

私たち生活者は,スマートフォンを初めとする様々なデバイスでインターネットを意識することなくどこでも利用し,ソーシャルメディアで個人や企業と容易に繋がれるようになりました。企業が出す製品,サービスはより生活者を意識したものとなり,社会性が求められ,企業は生活者とより深く付き合っていくことが必要になってきています。

インターネットはマス的な側面もありますが,⁠個人⁠が繋がったのがインターネットの本質ですから,企業が生活者と深く付き合っていくことにインターネットをより利用するのは必然です。つまり,企業はビジネスライフサイクルの中でインターネット/Webを本当の意味で無視することが難しい時代になってきました。

著者プロフィール

和田嘉弘(わだよしひろ)

インテリジェントネット株式会社COO/WebSig24/7代表。

大手企業のコミュニケーションデザイン,コンサルティング,制作に多数携わる。2004年に業界団体WebSig24/7を立ち上げ,WebSig1日学校など参加型の勉強会を主催。

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