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2013年最注目分野?O2Oとソーシャルメディアの展望

あけましておめでとうございます。株式会社ミクシィ 広告事業部の藤井大輔です。

2012年にWeb業界で頻繁に耳にした単語のひとつとして、⁠O2O」が挙げられます。もっとも、日本においてはQRコードやFeliCaの先行普及により従来から発展していたものが、スマートフォンの爆発的普及で各社振り出しに戻り、プラットフォームの構築をやり直すことに明け暮れた1年だったようにも思われます。昨年の各社事例を振り返りながら、スマートフォンとソーシャルメディアに注目して、O2Oの今年の展望と課題を整理してみたいと思います。

O2Oの分類とフロー

一般的に、O2OとはOnline to Offline=オンライン上でのコミュニケーションから、店頭などでの購買行動に結びつけるものを指す言葉ですが、広義には店頭とオンラインの相互連携も含みます。また、ラジオ局出身の筆者として、⁠放送と通信の融合」と呼ばれてきた分野も、本稿ではOnair ⇔ Onlineとして一緒に取り上げてみたいと思います。テレビからO2Oへ連続的に誘導する手法は、とくに「T2O2O(Television to Online to Offline⁠⁠」と呼ぶこともあります。

誘導元と誘導先の組み合わせによって、使用される手法やプラットフォームをマッピングしてみました。現在の市場全体を網羅するものではありませんが、ここからのお話の⁠地図⁠としてご参照ください。

 誘導元と誘導先の組み合わせ
表 誘導元と誘導先の組み合わせ
放送からオフラインへの誘導はWebサービスを経由する場合が一般的だが、2013年に開始が予定されているVHF-LOW帯マルチメディア放送では、カーナビ等に向けたクーポンの放送波配布なども検討されている。

O2O施策設計のフローを、一般的なリワード型オンライン広告と同じく、図1のように整理してみましょう。インセンティブ施策がO2Oのすべてではないことは後ほどご説明しますが、段階ごとに追ってみましょう。

図1 O2O施策設計のフロー
図1 O2O施策設計のフロー

①ターゲティング

ターゲティングにおいては、性別・年齢などの属性情報に加え、O2Oでは現在地情報や居住地が重視されます。2012年はまだ、首都圏などで限定的に実施された施策が多く見られましたが、iPhone5からプリインストールされるようになったPassbookのように、2013年には地方都市でも十分な顧客数を確保したO2Oプラットフォームが実践フェーズに入ると予想できます。

mixiをはじめ、ソーシャルネットワーキングサービスが顧客基盤のひとつとして重要視されるでしょう。Facebookも2011年に買収したGowallaの技術をもとに、2012年12月、⁠付近の情報(Nearby⁠⁠」機能を大幅にアップグレードしました。

②施策告知

施策の告知手段として、O2Oでは行動を起こすタイミングや場所が重要となるため、通常のバナー広告などでは対応しきれないケースが発生します。2012年は、スマートフォンのプッシュ通知の開封率の高さに大きな注目が集まりました。O2Oとプッシュ通知は非常に親和性が高く、適切に用いれば利用者にも高い利便性を提供することができますが、過剰なプッシュ通知などの課題が、2013年には利用者側の悩みの種になるかもしれません。

③行動誘導

通常のインターネット広告ではクリックひとつで済んでいた行動誘導には、オンラインから持ち出し可能なクーポンなどのツールを提供したり、URLを店頭で入力させる簡便な手段が必要となり、最も離脱が懸念されるポイントです。日本ではすっかりお馴染みとなっていたはずのQRコードは、スマートフォンの登場で読み取りソフトがまちまちになり、若干利便性が失われた感があります。iPhone 5にNFCが導入されなかったことも、2012年こそNFC元年となるだろうと考えてきたマーケッターに失望を残したものと思います。おサイフケータイの利便性が恋しいです。

また、インターネット広告のノウハウでは対応しきれない店頭プロモーションツールの制作などを伴う場合が多く、2012年5月には凸版印刷とサイバーエージェントが提携したプロモーションサービスを発表しました。筆者も前職でのイベント制作の実務経験がこんなに役立つ一年になるとは思いませんでした。専用アプリで来店を検知する「Smapo」など、音声を活用したソリューションも続々登場しましたが、設置場所や検知範囲に応じたソリューションの最適選択に、試行錯誤が続いています。

④コンバージョン測定

コンバージョン測定においては、位置情報の特定などで来店を認証したり、店頭での売上情報を紐付けるなど、技術的な解決が必要とされます。顧客情報と売上情報の連携が重要となりますが、店頭での顧客情報回収はなかなか難しいようです。ひとつの方策として、Webで発行された商品クーポンを店頭で引き換え、POSレジで直接クーポンの消込処理ができる仕組みをソフトバンクギフトが「店頭受取り型電子ギフトソリューション」として提供し、mixiをはじめ各社のキャンペーンで採用されています。

ところで、2012年8月にIBMはPOSレジ部門を東芝テックに売却しました。この動きをPOSレジの専用端末をスマートデバイスに置き換える市場の動きを背景としているのではとみる向きもあり、店頭会計の仕組みそのものが大きく変化していくことで、効果測定は大きく進化を遂げるのかもしれません。

⑤インセンティブ付与

行動を促すためのインセンティブには商品の割引クーポンのほかに、ソーシャルゲームのアイテムなどが重用されていますが、ソーシャルゲームに進出したヤマダ電機のように、割引に頼らないインセンティブ設計に自社で取り組む企業も2012年には見られました。また、インセンティブにバイラルを生みだすソーシャル設計を導入することで、この循環を再拡大していくことが可能となります。

さて、一連の流れを眺めたところで気分を変えて、放送とオンラインの連携のお話をしてみたいと思います。

Onair to Online/Online to Onair

放送とオンラインの連携においては、放送に活用しやすいTwitterの導入が広く進み、 NHKもソーシャル連携ニュース「NEWS WEB24」をスタートしました。

一方、これまで放送からWebに誘導する手法としてはQRコードや「iメニュー」のメニューを提示するなどが行われていましたが、スマートフォンの普及でこれまでの手法の利便性が低下し、大きな課題として残りました。⁠Shazam」を用いた音声認識が米国のTVCMでは流行し、日本ではラジオ局のニッポン放送が、電話のピポパ音(DTMF音)を使ってURLを伝える「トーンコネクト」の開発・普及会社に出資するなど、音声を使ったアプローチが注目されます。

放送そのものがオンライン側にあれば解決する、というアプローチを採るのが、インターネットサイマルラジオのradiko.jpです。2012年6月には1,000万ユーザを超えたとの発表がありましたが、広告プラットフォームとしても機能するよう、一層の拡大が期待されます。ミクシィ・radiko.jp・TOKYO FMが展開した「ソーシャルラジオ」は、143万ユニークユーザを獲得しました。

日本テレビが手がけるソーシャルテレビサービス「JoinTV」は、データ放送サービスからスマートフォンとも連動したダブルスクリーン併用型に進化し、映画やスポーツ中継で、瞬間的な熱量を可視化し、ソーシャルメディアに拡散する手法を提示しました。mixiもフジテレビ「にっぽんのミンイ」との連動を発表しています。テレビ番組についてソーシャルメディア上に投稿して視聴者同士がコミュニケーションできる「テレビチェックインサービス」も各社がしのぎを削り、デファクトスタンダードの座を狙う1年でした。

さて、O2Oの話題からは遠回りしたように見えますが、10年近く前から通信との融合を模索してきた放送分野での課題は、そのままO2Oにも当てはまると筆者は考えます。すなわち、⁠デバイスを超えた情報やURLの簡便なやりとり」⁠ソーシャルメディアとの連携」⁠デファクトスタンダードの不在」です。これを記憶に留めて、Online to Offlineの分野に戻りたいと思います。

Online to Offline/Offline to Online

オフラインへの誘導で重要となるのは来店検知手法ですが、GPSを用いたチェックインには誤差や地下等での遮蔽物による位置情報精度の不足もあり、厳密な「入店認証」にはなりえない場合があります。また、位置情報を送信することの心理的な負担感や、GPS機能をオフにしているユーザの存在も無視できません。Foursquareやmixiチェックインのように、網羅的にスポット情報を提供するサービスは、日常的に使い続けていただくことがさらなるサービスの価値向上につながるので、そのためのメリット提供やゲーミフィケーション要素が、2013年も発案されていくことが予想されます。

位置情報を頻繁に送信することに強いインセンティブが働く、位置情報ゲームプラットフォームのコロプラは、2012年11月に上場を果たしました。⁠コロニーな生活」や、マピオンの「ケータイ国盗り合戦」が提供しているチェックインリワードやマストバイリワード施策は、確実に熱量の高いゲームユーザを動かしています。

mixiでは2012年12月に、大丸松坂屋の全国13店舗とO2O施策を展開する機会を得ました。⁠デバイスに依存しない簡易かつ確実な入店認証」⁠ソーシャルメディアに広くバイラルする仕組み」について、百貨店の顧客層を想定して検討した結果、現状のデバイス環境では⁠店頭に週替りの暗号を貼るのが良い⁠という結論に至りました。

mixiのクリスマス企画「mixi Xmas 2012」に連動して百貨店店頭にmixi Xmasではおなじみの「くつした」をランダムに並べたパネルを毎週貼替えて掲示し、これを見て入力することで、店舗と来店週が特定できる仕組みです。極めてアナログな手法ですが、一切特別な設定は必要なく、確実かつわかりやすいと好評です。また一部の店舗では、この問題をiPadで自動的に更新しながら提示しました。mixiチェックインが完了すると「くつした」を飾るコラボアイテムが付与され、mixi上で「くつした」を見せ合いながら、mixiでつながる友人にバイラルする仕組みです。また、お買い物されたお客様に差し上げるアイテムカードも全国でご用意しました。

図2 mixi Xmasと連動した大丸松坂屋O2Oキャンペーン
図2 mixi Xmasと連動した大丸松坂屋O2Oキャンペーン

さて、ここまでのサービスは「目的をもってどこかに出かける」ことを支援するものがメインでしたが、AppStore Best of 2012に選出された「tab」「Passbook」のように、場所に応じた情報をレコメンドしたり、気になった情報を蓄積しておくとその場所に近づいた時にリマインドしてくれるサービスも2012年には多数登場しました。

従来のターゲティング広告がこれまでの検索履歴や属性から類似・関連した候補を提示するものだったのに対して、米国Placedはスマートフォンの位置情報や移動速度の情報履歴から、顧客が「どんな店によく立ち寄っているか」⁠どのような移動手段を使ったか」といった情報をもとに分析可能としました。これらの情報を用いて、⁠これからどんな行動をするか」を提案する広告手法が、O2Oの発展とともに2013年は進化していくのかもしれません。技術の進化に伴い、一層の広告倫理も求められます。

まとめ

インターネット通販がどれだけ規模を拡大しても、企業活動のほとんどはオフライン領域に軸足があることにはいまのところ変わりがありません。O2Oという領域に足を踏み入れ、江戸時代から400年以上の歴史(!)を持つ百貨店業界の皆様とお仕事をする機会に恵まれた筆者も、2012年に改めて、店頭でのコミュニケーションも「ソーシャル」なコミュニケーションに違いない、ということを再確認しました。

ソーシャルメディアのアカウントを軸としたCRMソリューションとモバイル決済、位置連動広告の発展で、2013年は行動に注目した高度なO2O施策が続々登場すると思われますが、一方で個人的には、行き過ぎたターゲティングでせっかくオフラインの店舗が持っている「偶然の出会い」の面白さを失わないよう、店舗設計などにも知見を深めた手法が現れると、ブレイクスルーとなるのではないでしょうか。

また、特別な機器の設置などを必要としないO2Oソリューションで、スモール&ミドルビジネス領域が盛り上がりを見せると、日本経済全体の活性化になるのではないでしょうか。導入ハードルの低いO2O手法の開発・普及に注目したいと思います。

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