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コンテンツの数と発売タイミングが大切になる1年――電子書籍と電子出版ビジネスの2013年→2014年

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電子書籍の読者は増えたのか?

調査数字から見る考察

このように,2013年は電子書籍・電子書店がきちんと整備され,出版社の電子出版ビジネスに向けた意識が高まった1年だったと筆者は感じます。では,最も大切な「読者の数」はどうだったのでしょうか。

まず,いくつかの調査報告を引用いたします。

MMD研究所が20歳~49歳の男女673人を対象に行った調査(2013年1月~2月実施)によれば,電子書籍利用経験者は56.8%ととなっており,その数字は半分を超えていました。今から約1年前の数字で半数を超えていたので,これは大きな数字と見ることができます。

一方,インターネットコムと goo リサーチの10月に行われたアンケート調査では,⁠電子書籍/雑誌を読んだことがありますか」という問いに対して34.3%(前回34.8%,前々回33.4%)という結果になっています。数字としては約1/3で安定しており,1年を通じて利用者数は大幅に伸びていないという結果です。

もう1つ,日本の電子書店サービスBookLiveが8月に発表したアンケートでは回答者の約3割が電子書籍購入経験あり,との結果が出ました。

これらの数字を見ると「確実に増えている」と断言するのが難しいかもしれません(苦笑⁠⁠。しかし,どの結果もほぼ1/3は電子書籍での読書体験をしていることから,0ではないことがわかります。

それでも,筆者の2012年と比較した2013年の電子書籍読者数,とくに専門書・実用書に関しての印象は「確実に増えた」です。その要因をいくつか紹介します。

まず1つ目が,2013年7月12日~8月31日までの約1ヵ月半に実施した100万人から教わったウェブサービスの極意―「モバツイ」開発1268日の知恵と視点 [Kindle版]です。この書籍は,2012年1月に紙の本が出て,翌年4月に電子版が発売されたものです。実際のところ,電子版の販売状況は芳しくなかったのですが,キャンペーン直後に売れ行きが伸び,相対的なデータとして,Kindleストア有料版ランキング(全コンテンツ)で最大13位まで上がりました。専門書が,ビジネス書や文芸書と同等に売れ始めたというのは,電子書籍の読者が増えてきたことの裏返しなのではないかと考えています。

もう1つ,こちらは電子版のみで展開したVagrant入門ガイド [Kindle版]に関するものです。技術系コミュニティで注目を集めたで,こちらはリリース直後からKindleストア有料版ランキング(全コンテンツ)でトップ10に入り,最大6位まで上がりました。

Kindleストア有料版ランキング(全コンテンツ)でトップ10入り(2013年9月13日AM6:00時点)

Kindleストア有料版ランキング(全コンテンツ)でトップ10入り(2013年9月13日AM6:00時点)

いずれもKindleストア,限定した期間でのデータではありますが,コミックや文芸書の中に,専門書のコンテンツがランクインするといったデータはインパクトがあると感じています。

この他,伊藤直也氏が刊行した入門Chef Solo - Infrastructure as Code [Kindle版]は2013年3月に配信以来,長期で売れ続けているという数字が見られており,専門書電子書籍の読者数が確実に増えていると感じています。

海の向こうアメリカでは……

海の向こう,アメリカの状況はどうでしょうか。すでに日本よりも数年早く電子出版物マーケットは形成されているのですが,その中でも,昨年末にアドビ システムズが発表したアドビの統計により、電子出版の読者数の急成長が明らかにといった統計報告によれば,2010年のAdobe DPS発売以来,1億5,000万部を超える電子出版物がダウンロードされ,モバイル機器を使って読まれているとのこと。さらに,同報告によれば,デジタル版の読者数は直近12ヵ月の間に2012年と比較して3倍に増えていると発表されています。

これらは,専門書・実用書といった枠を越えたものではありますが,総数で見ると確実に電子出版物のマーケットが拡張していると言えるでしょう。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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