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ネット空間と読書スタイルの変化への対応~2017年の電子出版

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2017年の展望~コンテンツの質,そして,読者の読書時間と場所を意識

最後に,2017年の展望,とくに出版社の立場からについてまとめてみます。

まず,繰り返しになりますが(紙ありきの)日本の電子出版市場は,最初の安定期に入ったと感じています。つまり,これからさらに広げるためには,コンテンツ自体の質をさらに高めること,そして,紙ありきではない部分に目を向け,開発を進めていくことでしょう。

読み放題という体験へ対応する

2016年のトピックとして,筆者が一番インパクトを感じたのは,Kindle Unlimitedの登場でした。いわゆる読み放題です。弊社は2017年1月現在参画はしておりませんが,リリース後の影響,また,その結果などを聞いて,⁠久々に電子出版界隈でも新しい動きが出てきた」と感じました。

現状の書籍の読み放題サービスの場合,コンテンツのカテゴリや対象読者による分類がされず,⁠電子書籍」という一括りでコンテンツがまとめられ,読者はその中から,自分の時間に読みたいものを,読みたいときに選べるわけです。

これは,読者にとっては大変嬉しい特徴ではないでしょうか。また,サービスを運営するプラットフォーマーにとっても,新たな市場形成に向けて大きな可能性を感じていると思います。

ただ,コンテンツを生み出す出版社としては,注意しなければならないと考えます。

その理由は,前半で述べたフロー型とストック型の違い,そして,同一プラットフォームに多様なコンテンツが集まることの2点です。

たとえば,弊社のような専門性の高い書籍と,コミックを比較した場合,読者は同じでも,本の作り方・価格はまったく異なります。それを同じプラットフォームに乗せるということは,売れる・売れないとはまったく別のリスク,具体的には読まれても利益が出ないリスクが出てくるからです。

そのために,これからは,同じプラットフォームに乗せてもビジネスが成立する仕組みづくり,あるいは,同種のコンテンツを集めた限定読み放題サービスの整備,こういったものに向けて取り組んでいく必要があると考えています。

昨年の新年のコラムでは,

  • (出版業界として)IT/ネット技術を積極的に取り入れる
  • 必要以上に古い商慣習に固執しない

というまとめを述べさせていただきました。また,重要なポイントとして配信を挙げております。

まさに,読み放題サービスへの対応,というのは,この部分をどのように具現化していくことかとも言えます。どのように行うか,それが,電子出版市場の次のフェーズにつながると筆者は考えます。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

Twitte ID:tomihisa(http://twitter.com/tomihisa/

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