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電子出版の世界を“アップデート”していこう~2019年の先の電子出版ビジネスを考える

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2019年の動向~スマホ対応,オーディオブック,そして,5Gへ

それでは,さっそく筆者が考えている2019年の電子出版ビジネスの展望を,技術や環境の観点から考察します。

2018年12月,筆者は日本電子出版協会主催の「電子出版アワード授与式+パネル討論+忘年会」にて,パネルディスカッションに登壇いたしました。資料については,以下をご覧ください。

ここで,2018年の振り返りとして,リーディング技術として「スマホ対応」⁠コンテンツ制作の観点で「オーディオブック」⁠5G対応」を取り上げました。

2019年はこれらの動きがさらに加速していくと考えます。

スマホ対応

マンガアプリの縦スクロール対応

まず,スマホ対応です。まず,注目したいのはマンガに関してです。これまで,他のジャンルと同様に,マンガでも紙の本をスマホ対応させる動きが一般的でした。しかし,2018年後半から,スマホの縦スクロールに対応した機能を実装するマンガアプリが増えています。たとえば,LINEマンガやコミックシーモアです。

LINEマンガは,⁠LINEマンガ LINE版」で先行実装していた縦読みを,2018年9月6日,LINEマンガアプリ版でも実装しました。

また,コミックシーモアの縦スクロール機能「タテヨミ」は,さらに一歩進んだ形で,縦スクロール専用に作られたコンテンツの提供を合わせて行っています。これまでは,紙の電子化が一般的でした。しかし,タテヨミの登場により,マンガ市場に電子化(スマホ対応)前提のコンテンツが増える市場が広がったと言えます。

別の例を紹介しましょう。株式会社KDDIウェブコミュニケーションズが提供する「g.o.a.t」です。g.o.a.tはユニークなインターフェースを持つブログサービスで,2018年6月7日,縦書きが可能となる機能が実装されました。

縦読みできるブログサービスも

広義の意味の電子出版で考えると,ブログサービスも電子出版の1つと考えられますし,今まで横書きが一般的だったブログコンテンツの世界に,縦書きが登場したわけです。g.o.a.tはその後,2018年10月に小学館の小説丸との連携を発表し,Web上で縦読みができる小説プラットフォームとして,機能しはじめています。

筆者が在籍する技術評論社が刊行する,専門書,とくにプログラミング書のようなコンテンツでは,現時点でスマホでの縦スクロールや縦読みとの親和性は高くないですが,いずれ,ユーザ(読者)の体験の変化に合わせる必要が出てくるかもしれません。

日本のオーディオブック市場はどうなるか?

リニューアルし,存在感が増すaudiobook.jp

2019年の市場拡大という点では,筆者はオーディオブックに注目しています。2018年3月,オトバンクが提供するオーディオブック配信サービス「FeBe」が,⁠audiobook.jp」に名称変更し,アプリをはじめ,大幅リニューアルが行われました。従来の機能の機能に加えて,シチュエーション・テーマ別にまとめたブックリストが用意されたり,個別購入に加えて月額750円の聴き放題プランが用意されています。

また,audiobook.jpは,2018年10月29日~11月11日の期間限定で,日本交通と共同で音のない図書館TAXIを特別運行しました。これは,タクシーに乗車しながら,audiobook.jpのオーディオブックを聞ける実験的なサービスです。

audiobook.jpはリニューアル後のユーザの反響やこうした展開が評価され,電子出版アワード2018において大賞を受賞しています。

この他,AmazonのAudibleGoogle Playオーディオブック2018年9月にリニューアルしたApple Booksなど,オーディオブックを聴く環境が整備され,ダイヤモンド社,サンマーク出版,PHP研究所,かんき出版など,ビジネス書・実用書出版社を中心に徐々にコンテンツが増えてきています。

スマートスピーカー&AIアシスタントと音声コンテンツ

個人的には,配信サービスやコンテンツの拡充に加えて,読み手の環境の進化にも注目しています。gihyo.jpの今年の新春コラム2019年のAIアシスタントにて,田中洋一郎氏が,スマートスピーカー改めAIアシスタントの動向と展望をまとめています。

2017年,ここ日本では,LINE Clova,Google Home,Amazon Echoと一気に3種類のスマートスピーカーが登場し,昨年,ユーザ数が増えました。これにより,ユーザにとって音のインターフェースがより身近になってきていると言えるでしょう。

さらに田中氏のコラムでも触れられているように,音に加えてスクリーンを活用する環境が増えれば,今後はスマートフォンやスマートディスプレイを介した音声コンテンツの可能性がさらに広がると考えています。たとえば,図解などを含めた実用書では,メインとなる説明文を音声にし,ポイントポイントとなる画像や映像をディスプレイに表示させる,といったことが可能になります。

これは従来の電子書籍・雑誌における音声読み上げ機能に近いものではありますが,筆者としては,耳から得る情報を主入力とし,目から得る情報を補完として考えたコンテンツの可能性を探ってみたいと考えています。今後,オーディオブックサービスから,音+画像・映像の動きが出てくることにも期待したいです。

オーディオブックに関しては,鷹野凌氏による2019年出版関連の動向予想でも触れられています。また,鷹野氏のコラムでも,オーディオブックを含め,2019年の出版関連動向予想がされており,多くの気付きが得られると思いますので,併せてご覧ください。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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