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次の10年に向け,持続する電子出版ビジネスを~2020年の先の電子出版ビジネスを考える

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電子出版元年から10年,次の10年に向けて

ここまで2019年の振り返りと2020年の電子出版ビジネスを取り巻く状況について,とくに出版社の目線から取り上げてきました。紙の出版というビジネスに電子が加わった10年が過ぎ,状況は大きく変わり2020年代へ突入します。最後にそれらをふまえてのまとめと筆者の考察です。

2年前のコラムで「普及期における課題と対応」というテーマとともに,技術進化に合わせたコンテンツやサービスに関する運用・保守の重要性を取り上げました。それから2年が経過し,ビジネスとしての電子出版は,出版業界にとっては欠かせないものとして成長しました。

一方,世の中や社会は日進月歩,変化・進化する中で,まったく同じことをしているだけでは成長が止まる,あるいは,退化してしまう危険性があります。成長する中で作り上げられた電子書籍・電子雑誌,そして,動いているサービスを持続させることが,この先の10年に向けて重要です。

筆者が所属する技術評論社での具体例を1つ紹介します。

技術評論社は現在,ほとんどの紙のコンテンツをサイマルで電子化し配信しています。2019年は,新刊の電子化に加えて,これまで配信した電子コンテンツのアップデートとして,増刷時の修正を電子コンテンツでも対応するよう体制とフローを整備しました。まだ体制は整備中で,完全に体系的には行えていないものの,多くのコンテンツで対応が進んでいます。⁠コンテンツの)アップデートがしやすい」という電子版のメリットを最大限に活かすことで,紙と電子のコンテンツの差を埋め,結果として読者の皆さんには,紙と電子の選択する余地を広げられます。こういった部分はあまり目に見えない部分ですが,普及から次のフェーズに進む電子出版ビジネスにおいて欠かせない要素と言えるでしょう。

もちろん,コンテンツそのもののメンテナンスだけではなく,前述のようなEPUBリーダーの動向,また,外部電子書店を利用しているのであれば,各電子書店の動向(とくに閉店や仕様変更)にも,つねに注視し,状況が変化した場合には対応する必要があります。

過去の資産を大事にし,新しい価値を生み出す

技術評論社の電子出版サービス「Gihyo Digital Publishing」を2011年にリリースして以来,2020年1月8日現在,2,600を超えるコンテンツを配信しています。これからサービスとして10年目を迎える中で,これまで提供してきた2,600のコンテンツやこれから提供するであろうコンテンツの価値をさらに高めるべく,技術評論社では,新規のコンテンツ制作や配信とともに,さまざまなメンテナンスやアップデートを引き続き行っていきます。

日本にiPadが登場した2010年は,⁠何度目かの日本での)電子出版元年と言われ,10年が経ちました。ここまで成長した電子出版市場だからこそ,電子コンテンツの制作や配信に関わる人すべてが,新規コンテンツ・サービスの開発・提供,新しい技術・トピックへの対応に加えて,この間に蓄積された膨大なコンテンツ・サービス(資産)のメンテナンスやアップデートをしっかりとし続けることが,次の10年の電子出版市場をさらに大きくしていくと筆者は考えています。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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