インターネット広告とテクノロジーの行方

第4回インターネット広告配信と測定の仕組み

前回はインターネット広告の種類と特長について説明しました。

第4回はインターネット広告の配信と測定の仕組みについて考察していきます。

インターネット通信の仕組み

まず、配信や測定の仕組みを説明する前にインターネットの通信の仕組みについて説明しましょう。インターネットの通信はTCP/IPというIP上のプロトコルで成り立っています。

TCP/IP上のアプリケーションとしてHTTPプロトコルがあり、ブラウザとウエブサーバー間の通信は主としてHTTP(HTTPS)で行われています。

ブラウザとウエブサーバーの通信(1)
ブラウザとウエブサーバーの通信(1)

ブラウザは指示されたURLからアクセスする対象のウエブサーバを決定して、HTTPリクエストを送信します。

HTTPリクエストにはヘッダとボディがあります。

ヘッダにはURLやウエブサーバのホスト名、後述するクッキーがブラウザによって設定されます。

ボディはブラウザからウエブサーバへデータを送信する場合に使います。

ウエブサーバはブラウザから送信されたHTTPリクエストを解釈して、コンテンツを送信します。

HTTPレスポンスにもヘッダとボディがあります。

ヘッダにはレスポンスコードや後述するクッキーの設定情報などが付加されます。

ボディにはブラウザへ送信すべきコンテンツ(HTML,画像,JavaScriptなど)が入っています。

このブラウザとサーバー間の通信にインターネット広告や測定の仕組みの秘密が隠されています。

ブラウザとウエブサーバーの通信(2)
ブラウザとウエブサーバーの通信(2)

ブラウザ画面は一般的に複数の画像、テキスト等が画面内に配置されて表示されます。

ブラウザとウエブサーバー間の通信は、画面単位ではなく、ファイル(コンテンツ)単位です。

リクエストしたコンテンツ(HTMLページなど)を読み込んだ後、ブラウザはHTML内に記述された内容に従がって、画像やファイルを取得するためにウエブサーバへリクエストを発行します。

つまり、ブラウザ上のURLと異なる別のサーバーから画像やテキストを取り出すことができるのです。

これは携帯端末のブラウザでも同様です。しかも、それぞれの通信は独立(並行)して実行されます。

インターネット広告配信や測定サービスはこの仕組みを利用しています。

次はユーザ(ウエブ利用者)を特定する方法を見ていきましょう。

ユーザの特定方法

通常、会員制のウエブサイトであればログイン画面があり、ユーザIDとパスワードを入力して会員サイトのコンテンツへログインします。この場合はユーザIDがわかりますので、ユーザを特定することができます。

しかし、会員制でないサイトや、ログイン前のユーザをどうやって特定するのでしょう? それにはクッキーという仕組みを利用します(PCサイトの場合⁠⁠。

クッキーはHTTPプロコトルでサポートされている機能です。

もともと、HTTPは単純なリクエストとレスポンスの組み合わせだけで構成されるプロトコルです。

つまり、1回の通信のみで閉じており、次回の通信は前回の結果と関係を持ちません。

このような通信を「ステートレス(Stateless⁠⁠」な通信と呼びます。

このため、トランザクション・アプリケーションのように複数の通信を束ねて、1つの処理を完結しなくてはならない処理などの場合には、クッキーを使います。

Cookie
Cookie

最初のアクセスではブラウザはクッキーを持っていませんので、クッキーなしでウエブサーバに要求が実行されます。ウエブサーバは新規にクッキーにユーザを識別する値を作成して、ブラウザにクッキーを付加して応答します。 2回目以降のブラウザからウエブサーバの要求にはクッキーが付加されます。

このような仕組みにより、ウエブサーバは同一ユーザであることを識別できるのです。クッキーには指定した期間内有効な永続タイプとブラウザを閉じると消滅するセッションクッキーがあります。

広告配信では一般的に14日以上の有効期間をもった永続タイプのクッキーを利用します。

クッキーの仕組みはブラウザの設定によっても変動します。

ブラウザの種類や設定、PC側のセキュリティソフトの設定によってはクッキーを受け付けないようにしたり、ブラウザを終了させると毎回クッキーを削除することが可能ですが、その場合は、上記の仕組みは有効になりません。また、クッキーはブラウザ依存ですので、利用者がブラウザを変更した場合や、会社と自宅では別ユーザとなります。

クッキーが利用可能でないと利用できないウエブサイトもあることからほとんどのブラウザの標準の設定はクッキーを許可しています。したがって、100パーセント正確とはいえませんが、現在のインターネット技術で利用者を一意に識別するためには最もベストな方法です。

携帯サイトの場合

携帯サイトの場合はすべての携帯端末でクッキーが利用可能ではありません。特にdocomo端末ではほとんどクッキーが使えません。

携帯サイトの場合、セッションの管理はURLにセッション情報(ID)を埋め込む方法が採用されていますが、 ユーザを識別するには以下のようなアプローチが必要です。

1) docomo

公式サイトであれば、URLパラメータに特定の値を入れておけばdocomo側でユニークなIDに変換してくれます。また公式サイトでなくても、iモードIDを利用すると同様のことが行えます。ただし、両方の方法とも、HTTPSで暗号化されている場合はこの方法は使えません。

したがって、セッションIDをURLへ埋め込むなど、ウエブアプリケーション側で工夫が必要です。別の方法でutn(FORMによる送信時に個体識別情報を送信する方法)がありますが、確認画面が携帯端末に表示される、すべてのDoCoMo端末で利用できるわけではないことから利用しているサイトは少ないと思われます。

2) KDDI

HTTPヘッダ内に携帯端末を識別する値が入ってきますので、これを利用します。ただし、端末の設定によっては付加されないことがあります。

3) SoftBank

HTTPヘッダ、User-Agentに携帯端末を識別する値が入ってきますので、これを利用します。ただし、端末の設定によっては付加されないことがあります。

つぎは配信と測定の仕組みを説明しましょう。

広告配信の仕組み

これまで説明してきたHTTPプロトコルの仕組みを利用してインターネット広告の配信は行われています。

広告配信の仕組み
広告配信の仕組み

上記の図で説明しましょう。

ウエブサイトのページには広告用のスペース(広告枠)が設けられています。

この広告枠にはアドサーバ(広告配信サーバ)へリクエストさせるための HTML言語(またはJavaScript)が記述されています。

  1. ユーザがウエブページをアクセスします。
  2. ウエブサーバはウエブページのコンテンツを返します。このウエブページにはアドサーバへリクエストさせる記述が含まれています。
  3. ブラウザはアドサーバへリクエストを要求します。
  4. アドサーバはこのリクエストに対して、条件に応じたバナー画像等の広告コンテンツを配信します。
  5. ブラウザには広告を含んだウエブページが表示されます。

上記の3.のリクエストを受け取ったアドサーバはユーザのIPアドレスや、クッキー情報を解析して、最適な広告を配信することが可能になります。

この仕組みを利用して「ターゲティング配信」が可能となります。

多少の違いはありますが、アフィリエイトもほぼ同様の仕組みで実現されています。

広告測定の仕組み

一般的にアドサーバは広告の効果測定機能を持っています。提供する測定機能はインプレッション数、クリック数、コンバージョン数とそれから求められる指標(率)です。

測定の仕組み
測定の仕組み

(1)広告出稿サイトのページに広告が表示されています。広告枠にはリンクが設定されています。
⁠2)広告をクリックすると、広告主のサイトへは直接移動せずに、計測用サーバへリクエストが要求されます。計測用サーバはクリックをカウントして、広告主が指定したURLへブラウザの表示を移動させます(これをリダイレクトと呼びます⁠⁠。広告主のサイトにはコンバージョンページには計測用のタグを埋め込んでおきます。
⁠3)ユーザがコンバージョンすると、コンバージョン計測タグがコンバージョン情報を計測サーバへ送信します。

計測サーバはクッキーを利用して、広告クリック-コンバージョンしたユーザを紐付けて、広告成果としてレポートします。

動画配信サーバや、テキスト広告等のインターネット広告配信コンテンツは様々な種類が登場していますが、広告配信の仕組みは基本的には同じです。

このような仕組みに加えてサイト内でのユーザが閲覧しているウエブページの情報や過去の訪問行動を分析することでユーザの嗜好を把握して、広告のターゲッティング配信や嗜好性のあったコンテンツの推薦が可能になります。

これからは配信するコンテンツのターゲティング技術やウエブ測定機能の結果を利用した最適化手法が続々登場してくると思われます。

次回は「インターネットとメディアの融合 - クロスメディア」について考察したいと思います。

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