人工知能で明日のビジネスは変わるのか?

第2回 ディープラーニングの具体的な手法を知り,ビジネスの方向性を探る

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ディープラーニングの目的は対象データの特徴量の抽出

さて話を戻すと,ディープラーニングの本質は,画像,音声,自然言語といったデータの処理に適した仕組みを与えられた多層ニューラルネットワークです。繰り返しになりますが,この中でも画像に関する成果が突出しています。逆に,自然言語分野は,まだディープラーニングが得意としていなくもない,といったところです。

ディープラーニングの目的は,対象データの特徴量の抽出です。次元の削減,圧縮,いろいろな呼び方がありますが,大量のデータから重要な部分を抜き出すことです。

たとえば自然言語であれば「文章のトピック」になります。ほかにも,GoogleやFacebookの画像から人間をタグ付けするというのは,その画像から「◯◯さん」という特徴を抜き出していることになります。

ディープラーニングに対する誤解

ここまでディープラーニングの本質を説明してきました。ここで,よくある誤解の1つを紹介します。教師なし学習という,ディープラーニングが注目されたキッカケとなった言葉です。

たとえば「猫の画像を認識する」という学習について考えます。

機械に対して「これは猫の画像」という教師データを与えなくても,大量の画像を入力していった結果,自然に猫の特徴をクラスタリングした,というのが教師なし学習です。しかし,これは「猫の特徴」をクラスタリングしたわけではありません。そもそも猫の特徴を抜き出したならそれはクラスタリングではなくて分類です。

機械が自然と猫の画像をクラスタリングしたことは,⁠なんとなくこういう特徴がありそうです。ちなみにそれはなんなのかわからないですが」と言っている(提案している)だけです。いや言ってはいないですが。

「あ,それは猫だね」という判断は,あくまで人間が意味を見出しているのです。この一連の流れが,教師なし学習ですが,まだ第3段階です。

もし機械が「画像を見る限り,これは人間がいわゆる猫と呼んでいる生き物ではないでしょうか」と言ったら,それはすごいわけで,まさに人工知能です。これこそが前述の第4段階であり,強いAIになります。しかし,今現在は実現できません。

ただそれにしても,ディープラーニングによって,教師データを与えなくても特徴量の抽出ができるようになった,しかも「教師データを与えた場合よりも認識の精度が高くなった」という点が,十分画期的だったわけです。

教師データを与えなくても良くなっただけでは,ここまで注目されなかったでしょうし,人工知能ブームにはつながらなかったでしょう。精度が高くなった点が今のブームにつながっていると思われます。ここが,よくあるディープラーニングに対する誤解でもあります。

ディープラーニングはビジネスをどのように変えるのか?

ここまでディープラーニングの基礎について説明してきました。では,ディープラーニングはビジネスをどう変えることができるでしょうか。

今のところ,その期待が大きな分野は,画像認識です。あとは自然言語処理ですが,現状はまだ「ディープラーニング最強感」はありません。このあたりは,まさに日進月歩であり,そうなる可能性も十分あるでしょう。

2016年時点でディープラーニングがビジネスとして影響している分野

しかし,画像認識(や自然言語処理)では,まだ限定的な分野でしかビジネスを変えられません。もっと言えば,世の中が大騒ぎしているほどの市場は,今のところありません。

それでは,具体的に画像認識がお金になる分野はなんでしょうか。

たとえば有力なところでは,医療における画像判定などです。実際,ディープラーニングはすでに人間の能力を超える精度を出し始めているので,今までは見つけられなかった病変などを発見できる可能性は十分にあり,それはかなりの市場の可能性を秘めています。

また,監視カメラから人物認識をする,というのも防犯という市場の可能性は十分あるでしょう。

一方で,SNSにアップした写真に人をタグ付けするというのは,おもしろいテクノロジーというだけで,市場にはならないと考えます。SNSにあるから便利な機能ではありますが,⁠タグ付けするのにお金を払いますか」と言ったら払う人はほとんどいないでしょうし,そういったものは市場とは呼びません。

これらをまとめると,もし現時点で「ディープラーニングは大きな市場が見込めます」という意見を見かけても,⁠その意見をする人は)現状をわかっていないか,わかっていて恣意的なコメントをしているかのどちらかです。

しかし,前述したように健康や安全という分野は,金銭的な対価の基準がないので,それ自体の本質的な価値は大きいと言えます。

まとめると,ビジネス面では「ディープラーニングに関する」ではなく,⁠画像認識に関する」市場が大きく変化してきているのであって,⁠ディープラーニングによる画像認識には大きな市場が見込めます」という表現をする人がいれば,⁠その真偽はともかく)現状をきちんと理解して正直にコメントしていると言えます。それはその人の意見ですから。

次回は機械学習が市場を形成する可能性を考察

この先,人工知能,機械学習が市場を形成する可能性としては,2つの方向性が考えられます。1つは人間を超える精度を出すこと,もう1つは人間ではそこまで隈なくできない処理をすること,です。

前者は画期的ですが,お金になるのは当然後者,というのが私の個人的な意見です。

次回はこのあたりについて解説します。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。ライブドア(現LINE)のデータホテルを構築・運営の後,海外にてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 ZETA株式会社)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZERO-ZONE」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

株式会社ゼロスタート:https://zero-start.jp/