The Analytics──誰のためのWebアクセス解析か?

第7回目標と結果を数値化するには

キャンペーンの目的

「キャンペーンは何が目的なんだ?」

今回、矢島と飲んだ最大の目的である、昼間部長に言われた一言─⁠ところで、先日行ったCキャンペーンのことなんだけど、アクセス解析から結果をレポートにできる?」前回参照)への質問である。

そもそも、柏木さんの担当だったし、実はキャンペーンの内容もよく知らなかった。正直にそれを矢島に伝えると、こんな答えが返ってきた。

「目的がないと、そもそも何のためにキャンペーンやるのか?って話になってしまうよ。キャンペーンを評価するならまずは目的の定義をしておかないとね」

と言っていてもしょうがない、ということで、矢島はキャンペーン評価の話をしてくれることになった。

「安東のサイトは小売りだったよな。つまり、コマースサイトになるわけだけど、サイトの目的はわかってるよな?」

「売上だろ?」

「そうだ。これがサイトのコンバージョンと言われるポイントになってくる。おそらく今回のキャンペーンも売上の向上とかだろう」

ちなみに…ということで矢島はコマースサイトにおけるキャンペーンの主な目的をいくつか挙げてくれた。

  • 売上の向上
  • 新規顧客の開拓/会員登録の促進
  • メールアドレスの獲得

これらがコマースサイトでよく定義される目的とのことだ。売上の向上が目的とはいえ、場合によってさまざまな種類の目的が出てくるわけだ。

キャンペーンを行う場合は、この目的が完了したページを、コンバージョンポイントとして解析ツール上で設定をすることが必要とのことだ。

コンバージョンポイントは「売上の向上」の場合は購入完了した画面、⁠新規顧客の開拓/会員登録の促進」の場合は会員登録が完了した画面などになるとのこと。

メールアドレスの獲得も、サイトの構成にもよるが、会員登録で獲得している場合もあるし、1つの機能として別に用意されている場合もある。それはそのサイトに合わせて設定することになるそうだ。

どう評価するのか?

解析ツールを使い、目的に合わせてコンバージョン件数が取得できるようになったら、あとは目標値の確認と予算の確認となってくるわけだ。

「⁠⁠目標の値に対して何%達成できたか?』『予算に対して黒字だったのか赤字だったのか?』こういったところが最終的な報告になってくるんだよ。そうでないと、⁠うまくいっってます』⁠いまいちです』といった報告もただの感覚的なものになってしまい、意味が無いだろ?」

確かにそうである。むしろ今まではそうであった。いろいろ言われそうなので、このことは矢島には言わないでおこう。

矢島は売上をコンバージョンにした時を例にとって、もう少し詳しく話しをしてくれた。

「200万円の売上追加のために、20万円の予算でキャンペーンを実施するとするだろ。この時ににどのくらいのの購入があれば良いと思う?」

「平均購入額とかを参考にすれば良いかな?そうすると、うちのサイトは約5,000円だから、400件だな」

「そうだ。これが最終的な目標になってくる。ちなみに赤字になる最低ラインはどうだろう?」

「20万円の予算でやってるからね。細かいことを除いてざっくりと考えるなら、平均単価で予算を割った40件だね。」

「おぉ、いいねぇ。次はこのキャンペーンを実施する際のおおよその訪問者数を考えてみよう。これはコンバージョン件数÷訪問者数で求められる、コンバージョン率を参考にすると良いんだ」

「でも、キャンペーンの実施前だろ。コンバージョン率はやってみないとわからないんじゃないの?」

「おっ、いいつっこみじゃないか。今日は冴えてるね。そうなんだ。そういう時は、サイト全体のコンバージョン率とか以前に行った似たようなキャンペーンを参考にすると良いよ」

矢島は少し得意げな顔をしながらビールをぐびっと飲む。

「今回はとりあえず5%として考えてみようか。そうすると逆算して、8,000件の流入が必要ということになってくるんだ」

訪問者数の目安を作ることで、ずいぶんとわかりやすくなった。確かにこれなら実施が行いやすい。

「これらの数字が見えていれば実施をしているときも、動きがわかりやすくなるだろ。そうして、最後の評価もしやすくなるんだ」

そう言って居酒屋のおてもとを裏返してメモを書き始めた。

  • 購入件数(コンバージョン数)
  • キャンペーン訪問者数
  • コンバージョン率(購入件数÷キャンペーン訪問者数)
  • ROI(投資対効果:コンバージョン件数÷予算)

「これらを明確化すれば、キャンペーンの状況がわかりやすいし、同じ目的のキャンペーンを行う場合は、比較しやすいと思うよ」

購入件数は最終目標だけど、それ以外にもキャンペーン同士を比較するのであれば、同じぐらいの件数であればどちらがROIが高いかによって、より良いキャンペーンの判断ができる。

コンバージョン率は他のものと比較して、低いのであればキャンペーンもそうだが、サイト内の誘導があまり良くないだろうという仮説がそこでできるそうだ。なんだかワクワクしてきた。

「投資対効果がわかるのは良いな。いいじゃないか。次回の部長会議でもシェアするよ」

次の日、柏木さんに相談をしながらCキャンペーンの評価を考え、部長に伝えに行った。このキャンペーンは売上向上が目的だったそうで、導入時にコンバージョンポイントとして設定していた「購入完了」のところでコンバージョンの取得ができた。

部長も満足したようだし。良かった良かった。

つづく

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