ネットだから気をつけたい! 著作権の基礎知識

第7回 保護期間延長論争の陰にある現実

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

はじめに~除夜の鐘とともに消えゆくもの

もうすぐ迎える年の暮れ。除夜の鐘を聞きながら,まさに終わらんとするゆく年のことをあれこれと思い出して毎年しんみりとされている方もいらっしゃることでしょう。

そして,除夜の鐘とともに終わるものがもう一つ。

……そう,「著作権の保護期間」です。

著作権法には,著作権がいつまで続くのか,ということを定めた規定があり,著作物の種類によって何パターンかの規定が設けられているのですが,いずれも,以下のような規定になっています。

基準日が属する年の「翌年」から起算して,「X年を経過するまでの間」(著作権が)存続する。

そして,基準日が属する年の翌年の年末に1年経過,さらにその翌年の年末に2年経過…と続いていくことになり,X年が経過した年の年末に,著作権の保護期間が満了する,ということになるのです。

通常の著作物の場合,「著作者の死後50年を経過するまでの間」著作権が存続する,とされていますから,今年の大晦日には,「1958年中に著作者が死去した著作物」の著作権が存続期間満了により消滅することになります。

皆様ご存知のとおり,「著作権の保護期間」に関しては,延長すべきかどうか,という観点から激しい論争が続けられています。

国際的な制度調和(米国等では著作権の保護期間が著作者の死後「70年」に延長されている)や著作権者(及びその相続人)の利益保護を掲げる保護期間延長賛成派と,著作権者以外の人々による著作物の利用・流通の機会が減少することを懸念材料として挙げる延長反対派。

政府の審議会から公開シンポジウムのような場外戦まで,華やかな,だが先の見えない議論(アピール合戦?)が展開されているわけですが,その陰で,「保護期間」のルールを前に,日頃頭を悩ませている実務者やユーザーが多い,ということには,あまり注目が向けられていないようにも思えます。

そこで,今回は,「保護期間」に関するルールが,実務にどのような影響を与えているのかを「使う側」の視点から見ていきたいと思います。

ネット上の世論などを見ると,保護期間延長に反対する声が目立ちますし,産業界でも一部の業界を除けば延長反対に親和的な雰囲気が感じられますが,この問題は著作権法の目的はどこにあるか,という点にもかかわってくるものでもあり,いずれの立場が優れているか,という判断を客観的に行うのはなかなか難しいものがあります。

著者プロフィール

企業法務戦士F-JEY(きぎょうほうむせんし・えふじぇい)

199×年,都内某企業入社。以来,法務部署で禄を食む日々を送る。ここ数年はもっぱら知的財産絡みの仕事に従事。最近,周りから「そろそろ飽きただろう」と言われることも多いが,技術もビジネススキームも日々進化するこの世界,当分お腹いっぱいにはなりそうもない。

2005年以降,ブログ「企業法務戦士の雑感」をささやかに更新中。

コメント

  • コメント御礼

    >とおりがかり様

    貴重なご意見ありがとうございました。

    確かに説明不足だったところもございますので、
    疑問をお持ちになられるのも当然のことかと思いますが、
    ご指摘いただいた2点につき、私自身は次のように
    考えております。

    1)写真の著作権について

    ご指摘いただいたとおり、写真の著作物の旧法下での
    保護期間のルールは現在とは異なっているのですが、
    1950年代後半に発行・創作された写真の中には、
    1971年の著作権法改正に合わせて、保護期間が暫定的に
    延長されていたものもありますので、事例(1)に全く意味
    がないとはいえないのではないかと思います。

    参考:「コピライトQ&A」より
    http://www.cric.or.jp/qa/sodan/sodan1_qa.html

    ・旧法(発行又は創作後10年→13年)
    ・新法1(公表後50年)
    ・新法2(著作者の死後50年)


    2)現在の議論状況について

    ご指摘いただいた「中間まとめ」は法制問題小委員会でのものだと思いますが、保護期間に関する議論がなされていたのは、「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」の方で、こちらでの議論については、「中間整理」として両論が併記されるにとどまっているのが実情です。

    参考:「中間整理」に対するパブリックコメント募集
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=185000344

    保護期間延長論と平行して、利用の円滑化に関する方策や、フェアユースに関する議論が最近出てきているのは重々承知しておりますが、公的な場で「延長しない」という方向で議論がまとまったなどということは、私は寡聞にして存じ上げておりません。

    確かに、一時に比べれば「盛りを過ぎた」感はありますが、
    過ぎ去った問題、とまでは言えないのではないかと思います。


    以上、不正確なところもあるかもしれませんが、
    取り急ぎの回答とさせていただければ幸いです。

    Commented : #2  F-JEY (2008/12/19, 01:42)

  • 内容に対する疑問

    一番最初の事例ですが、1950年代の後半ということなので旧著作権法が適用されると思います。旧著作権法では、写真の保護期間に関して、「発行(公表)後10年、未公表の場合は製作(創作)後10年」と定められていますから、たとえ1959年に撮影された写真であっても1970年には著作権の保護が切れていることになります。この事例で50年規定を持ち出したこと自体が間違いだと考えます。また、著作権保護期間の延長に関しては文化庁の文化審議会で中間まとめとして、早急な延長はせずに、諸々の問題をクリアすることを優先する旨の方向が提示されていますから、導入部での議論が盛というのは全く古い認識です。現在は日本でのフェアユースをどのように定義するかといった問題について、検討の焦点が移っております。以上、老婆心ながら。

    Commented : #1  とおりがかり (2008/12/18, 11:16)

コメントの記入